初めて会ったころの彼女は、自身の周りに鋭い棘を纏っているようだった。
その棘はしかし周りのものを傷つけるためではなく
彼女自身を守るためにあり、
そして彼女はその棘で周りが傷つくことを嫌い
棘の周りにさらに半透明の薄い、けれど頑丈な膜を張り巡らせて
その膜の内側に誰かが入り込んでくることを拒んでいた
彼女と初めて会ったころの私は、周りの色々が信じられなくなりかけていて
すべてのものから常に一歩引いたところで過ごしていた
すりガラスを通したような世界の中で、彼女だけは不思議とよく見えていた
似たもの同士だと思った とか
同じ匂いを感じた とか
そして彼女と親しくなって、しばらく
私の周りのすりガラスはかなり透明に近づいていって
彼女の周りの膜もかなり柔らかくなっていって 棘もだんだん鈍くなり
けれどそれらが完全に失われる日は来ないまま
私と彼女は別れて
それぞれの道を進み始めた
それからだいぶ時間が経って
周りのすりガラスがほとんど透明に変わった私が
久しぶりに出会った彼女の周りには棘も膜も無くなっていて
それは喜ぶべきことなのだけれど、
あの分かれ道にはもう戻れない というその事実が
私をひどく苦しめるのです。
その棘はしかし周りのものを傷つけるためではなく
彼女自身を守るためにあり、
そして彼女はその棘で周りが傷つくことを嫌い
棘の周りにさらに半透明の薄い、けれど頑丈な膜を張り巡らせて
その膜の内側に誰かが入り込んでくることを拒んでいた
彼女と初めて会ったころの私は、周りの色々が信じられなくなりかけていて
すべてのものから常に一歩引いたところで過ごしていた
すりガラスを通したような世界の中で、彼女だけは不思議とよく見えていた
似たもの同士だと思った とか
同じ匂いを感じた とか
そして彼女と親しくなって、しばらく
私の周りのすりガラスはかなり透明に近づいていって
彼女の周りの膜もかなり柔らかくなっていって 棘もだんだん鈍くなり
けれどそれらが完全に失われる日は来ないまま
私と彼女は別れて
それぞれの道を進み始めた
それからだいぶ時間が経って
周りのすりガラスがほとんど透明に変わった私が
久しぶりに出会った彼女の周りには棘も膜も無くなっていて
それは喜ぶべきことなのだけれど、
あの分かれ道にはもう戻れない というその事実が
私をひどく苦しめるのです。
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