----------
毎日新聞 2005.11.28朝刊から
◆記者ノート「生きる足かせ」【記者・中村 一成】
「名前をすべて漢字にして、日本人になろうとする子が多い。
横文字の名前を漢字にしてと頼まれたり、『帰化』手続きを相談
されたこともあります」。
先日訪問した中部地方の自治体。地元教委の職員が表情を曇らせ
た。日系ブラジル人の子どもたちのことだ。
政府は90年、「日系」に特化した外国人労働者の受け入れを
始めた。家族で来日する人も多く、現在、学齢期に達した南米出
身の子どもは3万人を超えている。
一方で、教育体制は整わない。言葉の壁、文化の違い。義務教
育中退も後を絶たない。国の施策の方針は「適応」だ。順応した
子どもの中には日本語の上達につれ母語を忘れ、肉親との会話が
成立しなくなったり、肉親や同郷者の慣習や言葉を克服すべき対
象として忌避する子どももいる。いずれも私が見聞きした例だ。
90年代、香川県の食品会社を取材した経験を思い出す。この会
社は労働者の子どもを終日、郊外のプレハブに囲い込み、地元教
委は学校に「他者」が来ないことを歓迎すらしている。多数者に
近づくや排除されるか。「違い」は生きる足かせと、小学生に確
信させる現実が教育の場に存在している。
----------記事はここまで------
毎日新聞 2005.11.28朝刊から
◆記者ノート「生きる足かせ」【記者・中村 一成】
「名前をすべて漢字にして、日本人になろうとする子が多い。
横文字の名前を漢字にしてと頼まれたり、『帰化』手続きを相談
されたこともあります」。
先日訪問した中部地方の自治体。地元教委の職員が表情を曇らせ
た。日系ブラジル人の子どもたちのことだ。
政府は90年、「日系」に特化した外国人労働者の受け入れを
始めた。家族で来日する人も多く、現在、学齢期に達した南米出
身の子どもは3万人を超えている。
一方で、教育体制は整わない。言葉の壁、文化の違い。義務教
育中退も後を絶たない。国の施策の方針は「適応」だ。順応した
子どもの中には日本語の上達につれ母語を忘れ、肉親との会話が
成立しなくなったり、肉親や同郷者の慣習や言葉を克服すべき対
象として忌避する子どももいる。いずれも私が見聞きした例だ。
90年代、香川県の食品会社を取材した経験を思い出す。この会
社は労働者の子どもを終日、郊外のプレハブに囲い込み、地元教
委は学校に「他者」が来ないことを歓迎すらしている。多数者に
近づくや排除されるか。「違い」は生きる足かせと、小学生に確
信させる現実が教育の場に存在している。
----------記事はここまで------