サブプライム・モーゲージ貸付に関する株主代表訴訟で、提訴請求免除が初めて認められた連邦地区裁判所の決定
In re Countrywide Financial Corp. Deriv. Litig., No. CV-07-06923, 2008 WL 2064977 (C.D. Cal. May 14, 2008).
2008年5月14日、ロスアンジェルス連邦地区裁判所、Mariana Pfaelzer判事は、サブプライム関連の訴えを初めて深く審理し、被告によるCountrywide Financial(以下「CFC」)に対する株主代表訴訟やクラスアクション却下の申立てを退けた。訴えは、CFCの11人の現在及び旧の役員、取締役に対してなされた。
被告は、原告が同社に対して事前に提訴請求しなかったこと、提訴請求免除の要件が十分に訴答されていなかったことを理由として、本代表訴訟を却下するよう申し立てたが、その申立ては、5月14日、裁判所命令をもって、退けられた。
株主代表訴訟は、CFCにかわって、アーカンソー州教職員退職金基金、コロラド州消防警察組合、ミシシッピー州公職員退職者基金、ルイジアナ州地方警察退職者年金基金により、CFCの利益のため、上級役職者及び取締役会構成員に対して申立てられた。
裁判所は、証券取引所法10(b)違反を主張する原告の訴えを認めた。判事は、被告である個々の取締役が、CFCが自身の定めた貸付承認手続きを放棄していたことの実際のところ認識がありながらも、その貸付業務プロセスの厳格さ、ローンの質、同社財務状況について、公衆を誤解させたことの原告の主張には、説得力があり、真実と信じる足る有力な推論(cogent and compelling inference) となると判決を下した。
本件は、裁判所が特定の被告のscienter(違法であることの悪意ある欺罔の意図)に関連する事実の認識を、彼らが特定の取締役委員会に参加していたことに帰責をみいだそうとしたことに関心を集めた。特定の被告が、未収金利を立ててその代わりに元本が増加する調整金利モーゲージ(pay optionARM )が急拡大していたが、かつそのほとんど大半のローンが債務者の所得証明なく承認されたという状況から、それらローンの影響について認識がなかったというのは信じようがないと裁判所は説明した。
裁判所は、さまざまな取締役委員会の個々の構成員に警告を与えたはずの危険信号(red flag)を審理し、原告の主張が、増大する延滞、未収利息をたてる代わりに元本を増加させるローン、それ以外の不稼動ローンの兆候から、監査及び倫理委員会構成員は危険信号の重大性についての認識があったとの主張(そうでなければ、故意ある無謀さdeliberate recklessness をもって対処したかということなるが)に説得力あり、真に迫る有力な推論を立てることを認めた。裁判所はまた、貸付委員会の構成員が、質の悪化の兆候をわかっていたことにも、有力な推論を与えることも認めた。さらに、財務委員会構成員は、返済不能な借り手に対するローンが、当初は実入りがいいが、結局は負の財産となる事実を認識していたか、それとも故意の無謀さをもって対処したことを見出した。
原告は、業務及び公序委員会構成員が、scienterを持って行動したことを強く推論するのを裏付ける事実の主張を認めた。他方、報酬委員会構成員についてのscienterには証拠力を認めなかった。
サブプライム信用市場の混乱は別にして、申立てが全体的としてscienterの推論を裏付けることを決定するにあたり、裁判所は、貸付承認基準の幅広な違反が、ローン債務不履行リスクを著しく増大させ、それが原告の答弁するCFCローンの質について不正虚偽表示と結びついて、貸付の態様が、CFCモーゲージの流通市場の信頼を究極的に土台から崩すことになると意見する。
本訴訟が注目を浴びるのは、証拠に関する事実認定の方法で、CFCが全米の支店で与信方針基準を劇的に緩めたことを真に迫る描写をするために、原告がCFCのさまざまな業務部門における下位の職位の職員や営業店を含む匿名証人が使い、それに裁判所が大きく依拠した点にある。そうした匿名証人の証言は、貸付承認基準を逸脱していようとも、組織のあらゆるレベルで貸付の増大が強調されてていたCFCの企業文化を強く推定する裏づけとなった。
匿名証人の証言を証拠として利用することは許されるが、名前を名乗らない証人は腹に一物あるので、証言は証拠としては大きく割いて考えなければならないとする2007年最高裁判決Tellabs以降、秘匿証人に依存した陳述には、scienterの十分な証拠力が認められなくなった。
不適正なローンを顧客に無理強いしようとする貸付業者の方針が、会社が不正な貸付に関与していることの悪意を裏付けるという一般的な答弁は、個別具体的十分さを欠くとされた。多くのサブプライム訴訟は、そうした判例のあと、進行を阻まれていた。Tripp v. IndyMac Financial Inc., No. CV07-1635, 2007 WL 4591930 (C.D. Cal. Nov. 29, 2007),
本申立てでは、被告の不正行為に加え、誠実さの欠如と同社の過失業務の監視の欠如を含む信認義務(fiduciary duties)違反、財務報告及び内部統制違反が主張された。
特定の同社役員や取締役は、重要な内部者情報を有していながら、2004年から2008年の間、8億4800万ドルを超える同社株式を高騰した価格で売却したことが修正の訴えに含まれる。scienterの事実認定をさらに裏付けるにあたり、裁判所は、同社の株価が上昇し、内部者が自社株を放り出そうとしたときに、同社が実行し継続した積極的な株式買取プランに着目した。被告は、内部者の売却が、悪意のないことを説明したが、裁判所は、原告の買取関連の内部者取引の主張が少なくとも詐欺理論に相応し、却下の申立てに反する裏づけとなると示した。原告は、MozilloのRule 10b5-1の取引プランがその目的を逆手に利用された操作があったと主張した。裁判所は、Mozilloの取引規模の巨額さとタイミングを考慮したうえで、scienterの推論に反する要因が弱くならないとして、悪意のないとする被告の説明を退けた。
本訴訟では、CEOのMozilloとその他の役員、取締役は、CFCと同社株主が負った重度の損害に対する責任があることを求めようとする。原告の主張どおり、個々の役員・取締役は、最善の株主利益のために仕える責任を負っており、サブプライム・モーゲージ市場の崩壊から逃れられるよう最大の注意を払わなければならない立場にあった。にもかかわらず、被告は、同社のモーゲージ貸付業務と戦略の健全性と安全性について、SECへの届出を含む公式な報告において繰り返し報告し、他方で個人が保有する株式を手際よく高値で売り逃げた。Moziloと取締役会は、2006年後半、25億ドルの株式買取プランを同社に開始させ、投資家に対して、取締役会は、株式が低く評価されていると信ずるというメッセージを送っていた。この時点で、内部者は、大きな金額の保有株式を、買取プランを実行させ売却した。
scienterの要件と答弁を詳細に審理したのち、裁判所は、その他の訴答の要件に目を通し、原告の主張が、提訴請求の無益基準を満たすかどうかを検討した。その点を検討するにあたり、裁判所は、さまざまな取締役委員会が貸付業務の悪化についての認識があったにもかかわらず修正行動がとられなかったとする主張を審理する。提訴請求を検討することになったであろう取締役と同一人が、本訴に事情にかかわっていることから、裁判所は、大半の取締役が関係者であり、提訴請求免除を認めた。2人の被告について、業務上の関与の具体的説明ががないことから、申立てが却下された。
判事の命令は、貸付業務の悪化とMozilloの内部者取引に関する訴えの個別具体的陳述を熟慮しており、またさざまざな匿名証人の事実認識に基づいた主張に影響を受けている。本件命令は、本件の個別的な事情を考慮するもので、その意味でその射程は限定され、その他の係争中のサブプライム訴訟に重要な意味を持たないかもしれない。他方、本訴がサブプライム貸付に関連し詳細に審査し、CFCの表明及び内部者株式売却に反する貸付業務悪化に対して、裁判所が明白な不快感を示したことに意味があり、また裁判所が原告の主張を明白に容認した初めての訴訟として重要である。本件命令は、サブプライム貸付の行きすぎや貸付業務を悪化させながら利益を貪りとろうとする内部者に対する訴えに関連する意味をもつだろう。その他の訴訟で、被告は、原告の主張を十分でないとする障害事由を立てられるかもしれないが、本件決定によって、同様の訴訟において被告が裁判所のそうした容認的な事実認定を打ち負かなければならないと解される。従来、ルール10b5-1についての内部者の不適正取引を隠蔽するために利用される試みについての裁判所の警戒感は限定的で、あまり考慮されなかったが、本決定では、ルール10b5-1プランの概要や利用に関して、適正な利用どうかの事実認定に関して、ひとつの考えが示された。
原告の申立て書面は、208頁にも及び、だらだらと長く冗漫で、秩序だっていなくて乱雑だと判事が辛らつなことばで評したが、大概のところで、原告の主張通りの判決で、本訴訟を進めた。
判決文は60頁に及び、分析は、提訴請求免除を認めるかどうかの基準は、34年証券取引所法10(b)にもとづく請求を正当化establishするための基準と重要な点で重なり合っており、2つは、関連する要因が絡み合い、表裏一体というほど密接不可分で、Tellabs判決に照らして、いくつかの重要な点で、原告の主張は訴答要件を満たすと評価した。
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本件訴訟に関する解説は別稿に譲る。
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