日本振興銀行が、中堅の貸金業者から、利息制限法による金利引きなおし計算前のグレーゾーン金利適用の貸金債権の譲渡を受けたという。債務者に譲渡通知があったということで、一部に消費者の間で混乱があり、債務整理の法律実務家の間で、大きな話題になっている。関心を呼んだ混乱の原因は、一部に残高の割増通知があったことや保証能力のない経済実質の薄い保証会社に保証委託を準備して、保証委託の申込みを依頼したことだ。
保証会社ゴールデン商事など取引概要については、以下ブログ参照。
http://yuuki.air-nifty.com/go/2008/04/post_5dc6.html
http://yuuki.air-nifty.com/go/2008/04/post_07b2.html
本件では、みなし弁済無効を主張されたら元本が消滅し、譲渡後に金利を下げる必要のあるグレーゾーン金利適用の貸金債権が譲渡されたことについて、考察する。一般の債権は、債務の存在についてなんら疑義がなく確定しており、譲渡後の金利など条件変更を伴うような性質ではないことから、貸金業債権は、そうした一般の債権の譲渡のケースとは、著しい違いがある。そこで、そうしたグレーゾーン金利の貸金債権の譲渡について、今回の振興銀行の取引を例に、違法性があるか否か、考察してみる。
裁判評価が不要な程度の明らかな違法性ある具体的要件事実が問えれば、果たして違法性があるのか。そのためには、具体的事実を明確にした上で、法的評価を与える分析を要する。
1. 債権譲渡、通知と異議なき承諾
債権が譲渡されることについては、特に問題ない。譲渡者と譲受人の合意により、譲渡が有効に成立する。譲渡原因については、法は求めていない。売買か贈与か、担保権あるいは質権の行使かは、別の議論となる。
債務者に対する対抗は、譲渡者による譲渡通知により要件が満たされる。債務者の承諾は不要だ。他の情報では、債務者が承諾書を出すことにふれられているうようだが、対抗要件具備の点から、承諾を得る目的が不明だ。譲渡通知にはに、譲渡契約についての確認書を返送するようにとの依頼があるが、対抗要件具備だけなら、なぜ確認を求めるか、疑問が生じる。それを承諾と考えることになるだろう。ただ異議なく承諾します文言が入っていた場合に、金利ひきなおし計算前の残高を承認したことになるのではないかという点について、不安があるとみられる。果たして異議なき承諾とは、残高まで含む債務存在確認を意味するか、譲渡が転々となされるのを承諾するだけか。
債務が存在すれば、それについての第三者である債務者が承諾したに過ぎず、承諾行為自体は法律行為とみなされないと位置づけられる。そうした承諾が、債務不存在を争うことができない結果となるような、第三者である債務者の権利を意図的に放棄させ、奪取するための意思表示となるとか、あるいは債務者の譲受人に対する抗弁権の意図的な切断を目的とした意思表示とまでは考えられない。467条の債務者への通知・承諾が、そうした契約的義務設定を伴う規定とはいえない。
2. はがきによる債権譲渡通知と第三者対抗問題
債権譲渡の債務者対抗要件は、通知で具備される。しかし第三者対抗要件が具備されるか。譲受人が、譲渡者には他に債権者がいないと確証があれば、特に気にするには及ばない。しかしながら、企業生活を営んでいる以上、租税債権もあり、またどのような隠れた債権者がいるともしれない。すでに他に譲渡がなされ、二重譲渡になっているかもしれない。さらに最も重要な点として、譲渡者が倒産処理申し立てをしたら、どうなるかを視野にいれて、第三者対抗要件を考えることになる。
そこで、内容証明による確定日付け譲渡通知を送付するのが通常となる。事務手続きを簡便にするため、債権譲渡特例法にしたがい、登記をする。この場合、すでに譲渡がなされ、二重譲渡だった場合の争いも起こりうる。
今回は、登記がなされたかは不明である。貸金業法にもとづき、自己の債権について、貸し手に対して、譲渡に関する帳簿閲覧請求をされれば、明らかになる。業者が嘘の報告をする場合があるような場合には、登記を確認すればよい。
いずれにしろ、はがきでする譲渡通知だけでは、債務者に対する対抗要件具備でしかなく、譲渡者に債権者が現れたとき、その優劣について確定するものではない。
譲渡者の代表者実印のないはがきであるので、通知を受けた債務者は、それが真に譲渡者本人からのものか、確認しようがない。債権の存在を知った第三者の偽装通知の恐れがないわけではない。また譲渡通知の債務者が受領したことについて、譲渡者は確認できない。支払いについては、譲渡者にしたとしても、その支払いについて債務者は免責される。
3. 保証委託契約申込みのお知らせと契約成立以前の勧誘の説明義務違反
債権譲渡に伴い、連帯保証人をつけるため、債務者に保証委託を依頼することに、違法性がない。譲渡通知には、
「株式会社ゴールデン商事が、今後、貴殿の債務を連帯保証することになりましたので、ご確認下さい。本譲渡契約についての確認書、および保証委託契約書を別送させていただきますので、その際にはご返送をお願いいたします。」
とある。
明らかに誤導的表現を含んでいる。保証委託は、そもそも債務者が債務の弁済について保証人に委託し、保証人により事務受託するという性格であり、債権者と保証人の合意で成立するものではないと考える。債務者の委託を受けない保証が理論上ありえても、連帯保証ゆえ、債務者の知らない債権者と保証人との間の保証がありうるかは、疑問点が残る。
債務者に、申込みの依頼を債務弁済に関連して必要な作業と誤解させ、保証委託申込み誘導することが、申込みを無効、取り消すほど悪質な勧誘といえるか。その評価規範として、消費者契約法による保護規定に照らして、あるいは民法の説明義務につき、違法性があるとして、また契約締結にかかる意思形成過程の瑕疵により、無効を主張しうるか。
本件のような勧誘のケースが、消費者契約法に明確に定めがあるかどうかは定かではないので、根拠規定として十分ではなく、具体的要件が定まらないだろう。
一般法の契約の付随義務としての説明義務を求めるとき、義務違反となる主要事実は何か。ゴールデン商事が何者で、支払能力がどの程度なのかを説明する義務があるといえるか。保証委託の法の効果を説明する義務があるのか。
説明義務に関連して、証券取引法の適合性の原則を持ち出す法に疎いものがおられるが、これは証券取引ではなく、個別の契約であり、法理の適用、参考にすべき裁判例をあげられても、評価、裁判規範とはならないことは言うまでない。
そうすると、勧誘行為に結果としての債務者の表示意思の瑕疵、場合によっては、錯誤による申込みを招いた(あるいはそれを目的とした勧誘だった)と主張して、無効を主張することになるだろう。しかし意思形成に、重大な誤解を与えるような説明があったわけでも、強制があったわけでもなく、債務者が自由な意思で申し込んだと主張されるだろう。
ここで、罠に導く違法な勧誘、説明義務違反があったとして、誰の義務違反を問うのか。この場合、契約についての説明義務ではなく、契約にいたる以前の勧誘行為における説明義務という状況である。
譲渡通知は、譲渡人が債務者に対して効力が生じるが、本件では、譲受人と連名して出されている。譲渡通知では、譲渡者は譲渡の事実の通知にすぎず、それ以外の保証委託のお願いは、譲渡の内容とは関係がなく、譲渡者がかかわった取引ではないと譲渡者によって主張されるだろう。他方で、譲渡の通知以外の契約の申込み依頼については、連名でなされている以上、効果意思について、譲渡者も説明義務を負うことになるといって、説得力があるか。なぜなら譲渡者にとっては、譲渡して、権利が自らの帰属から離れた債権が、どのように弁済されようが無関係だからだ。他方、保証委託があるからこそ、譲渡が可能になったという事実があるのであれば、譲渡者は、その恩典に与っているのだり、共通利益の享受者ともいえる。しかしながら、譲受人は、保証委託申込みの結果がわかる前に、すでに帳簿上譲渡を受けており、3月21日時点で、会計上資産認識し、債務者保証委託申込みを条件にした譲渡ではないことから、譲渡者にとって、保証委託が便益をもたらしたともいえない。
保証委託が、譲渡後の債権の信用補完のための条件変更であると考えれば、譲渡者は与りしらぬこととなる。ここで、本件の譲渡通知の性質が、譲受人が、債権譲渡の通知で、別の件についてお知らせとお願いを含んだ通知書を兼ね備えたものと決定されうる。説明義務は、債権譲渡にかかる利益に関する両当事者の事実関係を調査できないかぎり、形式上、一義的には、譲受人にあるといえるだろう。したがって、債務者からの保証委託申込み問い合わせにおいて、必須でないと説明しておれば、紛争の原因は譲渡人に生じない。説明で、保証してもらうことになったと説明していれば、悪意をもって債務者の効果意思に瑕疵を与える違法ある説明をしたことになると評価されてしかるべきだろう。
4. 連帯保証
連帯保証についても、保証である以上、保証委託による形式で成立すると考えてよいだろう。しかしながら、保証委託が債務者の単なる事務の委託にとどまり、連帯的債務を負担しないのに対して、連帯保証は、連帯して債務を支払う義務を伴う。連帯債務であれば、債務者がふたりなので、債権者は、債務を証する証書に、連名して署名させ、契約当事者にするのが、通常である。
本件は、そうではない。主債務は、変質することなく、ただ譲渡されるにすぎない。その上に、第三者に委託して連帯保証をつけるというものだ。事務受託であれば、保証義務履行前に、事前求償されるか、求償権の保全が確認されない限り、保証義務履行を拒むこともないわけではない。債務者破産において、保証委託事務を一方的に終了した場合の義務解除については、無効とされる恐れがあるだろう。
連帯保証となると、保証人は事務受託を理由に逃れることは許されない。連帯保証において、債務者が数日の履行遅滞でも、保証人が支払ってしまえば、それにより主たる債務は消滅する。その結果として、保証人による(金利引きなおし前債務の)弁済による代位で、保証人には債務者に対する求償権が発生する。保証人は、金利引きなおし計算前債務の弁済しており、それについて、みなし弁済であったことを認めている(だろう)。弁済代位の求償額の範囲は、引きなおし前残高を主張される。
保証人の履行は、本来、主債務者の履行遅滞のときなど、補充的であるべきだが、連帯保証では、主債務者の信用状況の確認なしに、保証義務が履行されうる。債務者が債務整理による金利引きなおし計算して、元本の消滅を検討しているときに、保証義務履行は、引きなおし前の債務が全額消滅されてしまう効果を伴う。本来、みなし弁済無効の主張で、支払う必要のない債務を、保証人の支払いで、求償権となって、復元させることを可能にする。
このような連帯保証の履行が、債務者のみなし弁済無効と一部あるいは全部の債権の消滅を主張する権利を害意する目的でなされたと主張しても、保証人の内心の意思の証明は債務者にとって困難である。契約の定めの通りの事務の履行の結果が、そうなったに過ぎないと主張されるだろうことは予想される。
主債務が連帯保証人の弁済により消滅してしまったとき、みなし弁済の無効は誰に対して主張しうるのか。結果的に、請求権を失ってしまったのか。ここで、連帯保証人のみなし弁済についての意思を覆えさせる必要がある。しかし期待できないだろう。連帯保証人は、譲受人がどこからか「連れてきて」債務者に一方的に紹介したものであり、「知り合い」だからだ。引きなおし前債務弁済されるのを期待のうえ、弁済を代位ただろうから。しかし、ふたりが共謀であったことの証明責任の負担は、債務者にあり、相手は、共謀の事実は、どこにもない反証を繰り返すだろう。
債務者による保証委託がなく、債務者の知らないところで、譲受人と保証人とが保証料の合意をし、受領した事実が見つけられた場合に、共同して害意する意思は推認しうるか。この場合に、債権者の企てにより、保証会社が用意され代位弁済された場合であれば、考量すべき利益状況が異なる。債務者の意思に反して代位弁済された場合も同様であるが、こうした場合は、債務者が保証により受けた利益の範囲で、求償権の行使が認められうる。利益の範囲が、主債務においてみなし弁済無効を認めるのを前提にすれば、保証会社は、譲受人に対して、みなし弁済無効請求により、主たる債務の消滅を主張して、不当利得返還を求めることになるだろう。
もっとも実務的には、みなし弁済を有効として、引きなおし前債権額を弁済した保証人が、その金額に損害金と費用を加えて求償してきたとき、債務者は、引きなおし後金額とその損害金と費用だけを弁済して、それを超える金額には、支払い拒絶することになる。、それで保証人から納得が得られない場合には、債務者は、提訴されることを選択するだろうから、紛争は、保証人によって負担されることになる。
債務者のみなし弁済無効を主張する権利を切断する効果となる保証を、しかも連帯保証とすることで、求償権行使に対して保証人に対抗できなくしてしまうことができれば、そうした効果を確定的にできる法技法を悪意をもって利用することは、社会的に非難されるべき悪質な営業行為とは見られるだろうが、法的違法性を問えるほどかどうかは、疑問が残る。債務者にとって、譲渡の目的、悪意の立証は容易でない。
そうすると、疑念がもたれるのは、全体のスキームから浮び上がる法的性格は、連帯保証により、それがうまくいったら、金利引きなおし計算による債務整理の障害事由をつくるための工作ではないかということだ。保証申込みは、引きなおし計算前の債務存在確認する結果をもたらし、みなし弁済を是認する意思表示の効果を及ぼす。
しかし、そうした効果意思でありますよ、それでよければ、申込みをしてくださいとする説明義務があるのか。それが譲渡通知で、譲渡者に課される義務とは、通知の目的を超えている。譲受人におおいても、通知においては、説明義務がないと判断され、別途不明な点について、問い合わせがあれば、説明すれば足りると考える。本件では、譲渡の確認書、保証委託申込みが別送されるのだから、必要があるというのであれば、そこで説明されるべきものだろう。
5. make up 本件専ら保証事業体
保証委託の問題も連帯保証にかかる問題も、いずれも保証会社が経済実質を伴わない会社が利用されることに由来する。本来、保証能力がない団体から保証を受けても、経済的意味がないので、債務者がそうした保証人を指名する場合に、法は債権者がそれを拒むことを認める。しかし本件では、債権者である銀行が、保証会社の支払能力如何にかかわらず、保証会社を準備し、申込み委託させようとする。そこで、債務者は、債権者の見知らぬ保証会社を組み込んだ企ての目的が何か、自分の利益を害することがないか、慎重さをもって、懐疑的みることになる。
債権者が保証委託を準備し、融資の条件にすることは、金融の営業としては通常のことだ。住宅ローンでは、多くのケースで、銀行は子会社か関係会社に保証をさせ、融資の申込み条件とするので、そうした保証委託は、一般的といえる。違いは、債務者にとっては、保証会社が社会的に知られ、認知された存在であるので、不安を取引に抱かないことだ。そうした場合に、保証能力もあり、経済実質があるが、本件では、会社の財務状況についての開示はないし、外部監査法人による監査を受けているか、そうした会社情報に信頼が置けるかどうかも不安をいだかせる。
債権者がどのようにして、保証会社に経済実質を備えさせることができるかは、本ブログ別稿に譲る。
「貸金債権の譲渡価格の決定と保証会社のつくり方 追加訂正版2」
結果として、保証会社は、十分な保証料や求償権の売却処分代金で、信用リスクを保証人として引き受けるに十分な資本的基盤を備えることができる。
こうした性質の過小資本の保証会社は、2006年の貸金業懇談会において議論され、利用の禁止された保証会社の機能に類似する。貸金業債権の保証会社に対して、債務者は、自らが貸金業者から調達したグレーゾーン適用金利の借入れ金の一部を保証委託料として前払いしていたという。保証会社の経済的独立性がン否認され、保証料が金利とみなされれば、出資法を超える金利を請求していると解されることになるとして、制度利用について悪用との非難を受け、禁止されるにいたる。
保証料は、経済的に、法律的に、支配関係のない第三者保証会社に支払われており、違法性を問えないとしても、一定率の発生が予期される貸倒債権を代位弁済することで、貸金業者に還流することが当初から予定されることから、保証料を利息と解せるのではないかと疑いが生じる。しかしその件について、一部日掛け金融事案を除き、独立経済実態を有した保証会社であれば、29.2%金利営業業者では、裁判上および金融監督規制上、違法性の評価をうけたことはなかった。
そうした禁止された貸金業の保証会社に対して、本件では、受領した金利から銀行が支払うので、利息制限法金利の範囲であり、その点では同様な問題が生ぜず、制度悪用の非難を受けることはない。
他方、貸金業の保証会社との類似点は、経済的資本がない過小資本のため、保証料に依存すること。そのため、保証料を上回る貸倒損失が発生すれば、代位弁済ができないで債務超過に陥るため、貸金業債権の保証会社では、代位弁済限額を設け、受け取った保証料から所定の事務費用を差し引いた範囲に制限されたようだ。
本件が、どのような仕組みかは不明だ。保証料が足りなくて、債務者A,B,C,Dには、代位弁済がなされたが、E,Fには、資力不足で、代位弁済が履行されないというケースもありえるのか。
貸金業の保証会社は、保証会社としての経済実態がなく、審査能力を有しておらず、実際の融資保証のための審査をしておらず、そうした審査体勢を備えようともする意思がなかったという。というよりむしろ実態は貸金業者の指図で保証料を決定し、無審査のまま保証を引き受けていたと言われる。貸金業の保証会社が、本来の保証を目的というのではなく、グレーゾーンを越えて保証料を請求するための組織的特徴を持っていたので、弁護士会より強い非難を受けて、法改正に組み込まれた。
本件は、利息制限法を越える保証料の請求を目的とはしない点で、機能的性格が異なるが、保証会社といっても、ゲームセンターの関連の会社には、貸金債権についての審査能力がなく、また審査実態がないとすれば、いったい保証という装った外観の目的は何なのか。こうした保証会社の実態と目的が、債務者の利益を害することがないことは、完全に保証されなければならない。
そのように考えることが妥当であれば、規制監督に服すべき機能体と判断されることになる。こうした金融専門の保証会社は、数千、数万という多数の債務者の利益に重大な関係を有するので、銀行取引として、営業が適正であるかどうか、金融庁の監督に服すべきか疑問が残る。少なくとも、社会的混乱を事前に防止するという点からは、住宅ローン保証と同じ程度の報告、監督に従うべきという主張があっても、不思議はないだろう。
6. 裁判外債務整理の効力
以下については、詳細は不明だが、裁判外で、債務整理を行い、引きなおし計算に合意して和解の契約書を作成する場合に、延滞した場合には、引きなおし計算前の残高が復活する旨の合意の定めがあるように聞く。和解では、債務者はみなし弁済を無効を主張し、貸し手はそれを争わず、引きなおし計算で一部債務は消滅し、引きなおし計算後残高を現在存在する債務として両者互いに確認しますとまでは、説明をしないだろう。
理由はともあれ、条件交渉により、減額和解したに過ぎないとすれば、延滞が発生し、引きなおし前債務が復元する同意は、当事者の自由な意思による限り、違法ではなかろう。引きなおし後の債務の返済は、金利ゼロにより、36月分割払いの条件を得るため、そうした復元条項が相手に与えられても、不当ともいえないだろう。
今般の債権譲渡でしばしば見られる割増請求だが、単純ミス以外に、延滞に伴う債務復活に関連して発生している場合もあるだろう。延滞をした実績があるので、元の債務が復元した債権と譲受人により判断されたと考えることができる。債務が復活しないこと、債務がすでに完全に消滅し、債務不存在を争うのであれば、譲受人が債務調整に応じるのであれば、裁判外にで、応じないのであれば、訴訟を受ける権利を主張すると解することができる。
結論
本件事案の違法性を問う議論が一部メディアにもあるかに聞くが、単に勧善懲悪主義的な私こそ正しいという主張や、消費者保護運動もそれはそれでよろしかろうが、違法性を問うに十分な法的根拠、主要事実を証明できなければ、経済活動としての自由を認めざるを得ないだろう。
金融庁は、もし本件の法的違法性を問い、勧告、注意なり、場合により悪質と判断すれば処分をするのであれば、法的違法性を審理するために、事実を調査し、譲受人を聴聞し、譲渡人を参考人として調査することになるだろうう。法的違法性なく、いかがわしいというだけで、処分を課すことの権限まで議会が付託しているわけでもく、法に照らさなければ、処分はできないでしょう。自分が規則を設けることは認められていますから、事前にすればいいのでしょうけれど。
また犠牲者がでて、被害が蔓延らない状況で、行政監督機関が私的自治に介入して、予防的な措置をとることも、できないでしょう。もっとも、当事者を呼んで、事情を聞き、改めたらどうかと強制力のない方法で意見することはありえるだろう。
そういうしかるべきプロセスを踏まず処分があれば、行政に不服申し立てがなされてしまうリスクをともなう。したがって、裁判規範を考慮したうえで、法的違法性を問えるか、当事者の法律意見書、事実証明を審理することになる。
金融庁は、今回の債権譲渡をめぐる混乱について、なんらのアクションがないとき、われわれは、以下のように金融庁の態度を推測することになる。
(i) 金融庁は当該法律紛争の火種には、行政監督上の関心がないし、その必要がないと判断をしていること、
(ii) 金融庁は、銀行が関係した私的な法律紛争といえでも、個別の契約にしたがう取引にまで介入し、行政処罰に値するような違法性もなく、注意に値しないと考えること。
(iii) 保証委託については、債務者との間で将来の紛争が予期できると考えるが、行政監督上の立場から、予防的措置をとることを命ずる立場にはない。
銀行にとって、業務上、債権譲渡は日常業務だ。それが個人の債権であっても、異常な取引というわけでもないし、ニュース的価値はないだろう。金利引きなおしされないままの従来グレーゾーン金利適用債権ということに、いかなる紛争が起こるかは別としても。
銀行は、こうした取引をするにあたり、予期される法律上のリスクを勘案し、法律専門家を交えて議論し、不安があれば、法律意見書をもって考察し、あるいは金融庁による文書回答を求めるなどして、経営者は、コンプライアンス上の注意義務を問われないよう配慮していると考える。