冬桃ブログ

誕生日前夜のサプライズ

 仕事で、4日に鳥取へ。
 ちょうど、十年来の友人、福井功さんが鳥取県神社庁の依頼で巡回講演中。
 二泊三日する私は時間もたっぷりあったので、その講演のうち二回分を
聴かせていただいた。

 福井さんは鳥取をはじめ、各地で、まちづくりプロデューサーとして
活躍しておられる。じつに多彩で博学な方なのだが、このたびは聴衆が
神社の総代さん達とあって、講演タイトルは「ふるさとの文化と神社」。

 「神社」という字の成り立ちから始まって、中国からきた陰陽五行と
日本の伝統文化との関係、因幡の白兎や桃太郎伝説に隠された意味、
さらには「出雲の国」の成り立ちにかかわる謎まで次々と展開される話
は、どれも「目からうろこ」もののおもしろさだった。


 
 5日は仕事もつつがなく終え、夜には、今回の仕事でご一緒させて
いただいた広島在住のM氏、鳥取で「こだわりや」という海産物の店を
なさっているTさん、そして何度目かの講演を終えた福井さんと合流し
Tさんお勧めの店で食事。

 おいしい魚をいただいて……。



 おなかいっぱいになったところで、「もう一軒、予約してあるんです。カラオケの
あるところを」とTさん。

 私は、地元の横浜でも旅先でも「夜遊び」をしない。食事を終えたら、「お先に」
と帰る。じつに愛想のない、付き合いの悪い人間なのだが、なにせ虚弱体質だから、
そうしないと体力が持たない。
 でもこの夜は「せっかく予約までしたんだから、ほんの5分でも」と引き留められ、
しぶしぶスナックへ。
 
 中へ入ったとたん、5分どころか3分で帰ろうと決めた。
 カウンターには、おっさん達がずらり。大音響(普通なのだろうが、カラオケに
馴染んでない私にはそう聴こえる)で響くおっさんの演歌。
 
「ご、ごめんなさい。いつもはこんなうるさくないんだけど……」
 Tさんはおろおろ。

 しかし、おっさんの一人と、二の腕もあらわなムームー姿のおばさんがデュエット
を始めたとたん、私の目はそこへ釘付けに。
 おばさんが腰をくねらせ、足を差し込み、ムーディーに迫ること迫ること。
 おじさんもそれに応え、お尻のあたりに置いていた手を、少しずつ上げてついに
胸へ……。
 おお、やるもんだわ! 夜の世界じゃ、こういう光景もありなのね、と
夜遊びしないおばさん(私)は目を輝かせる。

 ムームーおばさんは歌い終えると、今度はカウンターの反対隣にいた
別のおっさんとデュエットを始めた。当然、彼女の腰くね、足差し攻撃は
あったのだが、今度のおっさんはその挑発にノってこない。
 直立不動で歌い終えた。
 そしてなんと、ムームーおばさんはこのおっさんと仲良く連れ立って
帰って行った。
 絡み合うようにしてデュエットしていたおっさんは、たまたまカウンターの
隣に座っていた赤の他人らしい。

 う~ん、大人の世界はようわからん。でもせっかくだからもっと見たいわ、
鳥取の夜を……と下世話な好奇心に燃える私の前に、突然、シャンペンが
運ばれてきた。
 さらには「ようこ たんじょうびおめでとう」という文字の入ったケーキが。

 あらあ、なんてこと! Tさんはこんなサプライズを用意してくれていたのだ。
 なのに私は、「スナックはいやだ、カラオケのある店はなおさらいやだ、
ホテルに帰る」と言い張ってたなんて……。



 私の誕生日は、この翌日の8月6日。
「あ、ぼくもじつは8月なんですよ」
 ケーキを前に、M氏がおっしゃった。
「あら、何日ですか?」
「8月15日です」

 広島の原爆記念日と終戦記念日が偶然、並んだ。
 M氏と一緒にケーキのキャンドルを吹き消した。
 世界が平和でありますように。

 結局、この夜は、M氏と福井さんの、日本語、英語、韓国語、中国語、
スペイン語で次々と繰り出される甘い歌声に包まれ、11時まで夜遊び
に浸ってしまった。

 Tさん、Mさん、福井さん、ありがとうございました。
 おかげで素敵な「大晦日」になりました。
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