冬桃ブログ

横浜に歌舞伎座をつくった店

 「明治37年創業という店へ連れてってあげましょう」
  というお招きを受けて、福富町の「若松 」というお寿司屋さんへ。
  
 あら、ここは前に来たことがあるような……。
 そうだ、去年だったかな。バンクーバーから来た友人とタクシーに乗り
「どこかこのあたりに、おいしいお寿司屋さんはありますか」と運転手さんに
訊いた。
 で、教えられたのがこの店だった。
 一番、奥の席に座ったのも覚えている。

 この店は当初、「若松食堂」という名で伊勢佐木町から始まったそうだ。
 間もなくいまの場所に移ったが、大震災に遭う。
 震災復興後は貸席、ダンスホール、バーを併設。和食も洋食も出し従業員は
二十人を超えたという。

 昭和7年には末吉町に横浜歌舞伎座を開業。
 収容人数は488人という立派な劇場だったらしい。
 歌舞伎の他に女剣劇、新国劇、バレエなども上演した。
 若松食堂は、食事代金一円ごとに歌舞伎座のチケットを一枚、サービスで
つけたそうだ。
 しかし昭和20年の横浜大空襲で全焼。再建はならなかった。
 
 伊勢佐木町を中心としたこの界隈は、明治、大正期、日本のブロードウェイ
と言えるほど芝居小屋が建ち並んでいた。
 横浜でも歌舞伎を観ることができたというのも素晴らしい。
 
 おいしいお寿司をいただきながら、そんな昔話を聞かせていただいた。

 「都橋に83歳の女性がやってるスナックがあるよ。その女性は昔から
このあたりで商売やってたから、大岡川沿いのディープな横浜には詳しいよ」
 という魅惑の囁きに抗しがたく、寿司屋のあと、もう一軒。

 83歳とはいえじつに若々しいママさんは、桜エビをたっぷり混ぜた
香ばしい天麩羅を揚げてくれた。
 で、「あぶら物は苦手なんです」と言いながら、掻き揚げもタマネギ天も
おいしくいただいてしまった私。
 今日も自分の食い意地にあきれた。

 もちろん、大岡川沿いのディープな横浜話を、後日、ゆっくり聴かせて
いただく……という約束は、ちゃんととりつけたが。

 写真は「若松」の店内とご主人。 




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