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冬桃ブログ

バルセロナ、ランブラス通りの記憶

 もう20年以上も前になるが、
某女性誌の仕事でスペインへ行った。
 マドリード、バルセロナ、トレド、
アルハンブラ宮殿といった行程だったと思う。
 一行は、編集者、カメラマン、スタイリスト、そして私。
 
 スタイリストの用意した服を着て、
詩のような文章と合わせ(私が書くのだが)
私をドラマのヒロイン風に仕立てたグラビアである。
 まだ、いまよりは絵になる外見だったのだろう。

 真夏だった。
 でも、雑誌は秋の号。
 何着か着るのは、すべて秋冬物。
 もう、暑いのなんのって!

 暑さと食事のオリーブ油にやられたのか
スタイリストと編集者が倒れた。
 二人とも女性だ。
 男性カメラマンはさすがに頑張っていた。
 私も、帰国するなり十日間あまりも寝込んだが
スペインにいる間は必死にもたせた。
 ここまで来て被写体とカメラマンが倒れたら
仕事が成り立たない。

 そのきつい行程の中で印象深かったのが
バルセロナのランブラス通りだ。
 賑やかな通りの中央分離帯に
背中合わせの椅子がぎっしりと並べられ、
男女入り混じった人々が隙間なく腰掛けている。
 どこまで続くのかと思うほど、長い長い列だ。

「なんのイベントですか?」
 と、通訳に尋ねると、驚きの答えが返ってきた。
「イベントじゃないですよ。毎日の光景です。
仕事を退職した人たちが、ここで日がな一日
過ごしているのです」
 
 よく見れば、男女ともに高齢者だ。
 しかし、目の前をおびただしい車が通過していく。
 排気ガスの真っ只中である。
 それを、ただ眺めているだけ。
 こんなところで退職後の人生を過ごすのかと
気の毒に思ったが、そこは価値観が違うらしい。
「この国の人は、日本人みたいにいつまでも
働いていたくはないのです。早く退職して
のんびり、こんなふうに過ごしたいのです」

 なるほどねえ。
 スペインもポルトガルも大航海時代の覇者だった。
 が、ある時期から国民性が変わったらしく
欲が無くなり、ヨーロッパの田舎と言われようと
かまわず、穏やかに暮らすようになった。

 そしてバルセロナは、今年に入ってから、
観光客の制限を打ち出した。
 経済大国日本でさえ、もっともっと観光客がほしいと
あの手この手で励んでいるというのに、
ガウディのサグラダ・ファミリアを擁するバルセロナが
「街が荒れるから、もう観光客はいらない!」と宣言したのだ。

 なのにそのバルセロナで、あのランブラス通りで
大きなテロが起きた。
 高齢者がずらりと並ぶあの光景が、
いまもあったのかどうか、私は知らない。
 が、なぜここが狙われたのかという理由に
「世界中のいろんな人種が観光で集まる。
インパクトが大きいから」というのを
挙げているニュースもあった。

 バルセロナの人々は、ひょっとすると
こんなことが起きることを、なんとなく
予感していたのかもしれない。
 日本はどうなのだろう。
 横浜にカジノができるとかできないとかいう
話があるだけに、このニュースがとても気になった。

 
 

コメント一覧(10/1 コメント投稿終了予定)

冬桃
え~~!
酔華さん

 そうだったのですか!
 一階のお店と経営者は一緒なのでしょうか。
 なぜにバルセロナ? 気になります。
醉華
バルセロナ
パワーストーンの「龍起」の2階にあった「龍起茶房Aqui」はバルセロナ料理の店でした。
その閉店とテロが重なって、なんだか、涙…
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