冬桃ブログ

ホームズ像の終活

 鎌倉の英国アンティーク博物館へ取材で
伺わせていただいたのは1月の半ばだった。
 この館にある英国アンティークは、すべて
館長である土橋正臣さんの個人コレクション。
 ビクトリア朝時代の栄華を示す銀食器や楽器、
インテリアの数々、綿密に再現されたシャーロック・
ホームズの部屋など、目のくらむような空間である。
 仕事を忘れて楽しませていただいたが、さらに
楽しいのが土橋さんのお話。リラックスして
聴き入るうちに「私もホームズ像を持ってますよ」
と、生意気にも言ってしまった。
 「え? それはどんなもの?」と土橋さんが
身を乗り出す。
 江戸川乱歩賞の賞品です、と答えると
さっそくスマホで検索。
 ネットにはなんでもあるのだ。
「へえ、これですか! いいですねえ。
これ、うちに寄贈してくれませんか?」
 あっさりとおっしゃった。
「本気ですか!?」と、のけぞる私。

 後期高齢者となった私、じつは終活に際して
最も悩んだのがこの像だった。私には大きなエポックを
もたらしてくれた象徴だが、私以外の人にとっては
何の意味もない。身寄りのない身だから、身内の
記念にとっておこうという者もいない。
 放っておいたらいずれゴミ捨て場に行く運命。

 驚きながらも「よろしければそうさせてください」
 と答えていた。ほどなく土橋さんとマネージャー
M氏が取りに来てくださって、「展示しましたよ」と
連絡をいただいた。
 で、昨日、土橋さんとは以前から友達だという
元町「ビューティープロ」の経営者、寺田美香さん
に付き合っていただき、鎌倉へ出かけた。

 早咲きの桜。


 平日だというのに凄い人出。
 その中を、鎌倉八幡宮の鳥居にほど近い
「英国アンティーク博物館 ブリティッシュ・アンティーク・ミュージアム」へ。
 設計は日本が世界に誇る建築家・隈研吾氏。


 見学者でいっぱい! 老いも若きも!
 ここにはビクトリア朝期に活躍した名探偵
シャーロック・ホームズの「部屋」を、当時の
アンティーク(すべて本物!)で再現した階がある。
 大ヒット漫画「名探偵コナン」の影響もあって、
シャーロック・ホームズは子供や若者にも知られている。
 熱心に質問する若きシャーロキアン(ホームズ・マニア)
にも、大人に対するのと同様、真剣に向き合う
土橋さんの姿は素敵だった。


 作者のコナン・ドイルをはるかに超える
架空の有名人、シャーロック・ホームズ。


 その部屋がある階のキャビネットに、
私のホームズ像が安置されていた。
 写真では小さく見えるが、けっこう大きくて重い。
 わざわざこのためにキャビネットをこしらえて
くださったとのこと。
 

 同じキャビネットの上段にはホームズ本の
初版が並ぶ。


 秘密の場所にある秘密の部屋で、土橋さん、
寺田美香さんと歓談。


 私の終活はまだ少し終わらないのだが、ホームズ像が
このような場所に引き取っていただけたのは、奇跡の
ようにありがたいことだった。
 なにより、当のホームズ像が安心してくれたと思う。
 もしかすると将来、どこかの誰かが「彼」の「友達」を
ここへ連れてきてくれるかもしれない。
 土橋さん、ありがとうございました!
 

 


 
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