金沢八景から野毛へ

　仕事で以前お世話になったＯ氏と、
あるところでばったり再会した。
　氏は退職後、大学院へ入って
神道を勉強しておられるとのこと。
　ご先祖は江戸時代を通じて、
駿河の国で神主を務めておられたそうだ。
　神社は曽祖父の代で幕を閉じたが、
Ｏ氏も神主の資格をとり、随時、
その職務を果たされている。

　後日、横浜にある特徴的な神社について
友人と二人、Ｏ氏にレクチャーしていただいた。

　で、今度は実際に神社に出かけましょうということで
金沢区の瀬戸神社と枇杷島神社へ。

　Ｏ氏、友人のＹさん、Ｓさんの四人で金沢八景へ。　
　小雨がぱらついていたが、炎天下よりずっといい。



　瀬戸神社は鎌倉幕府を開いた源頼朝が
伊豆三島明神（三島大社）の分霊をここに祀ったのが始まりとか。
　主神は大山祇（オオヤマツミ）。海神であり軍神でもある。



　そういえば何年か前、大山祇神社の総本社と言われる
愛媛県今治市大三島の大山祇神社へ行ったが、
そこには歴史に名を遺す武将たちの
武具を陳列した博物館があった。

　その博物館で、疲れ果てた私と友人Ｈは
他の客がいないのをさいわい、展示室のベンチで昼寝
という愚挙をやってしまったっけねえ……。



　（さて、気をとりなおし）
　金沢区の瀬戸神社には大山祇と並んで、
素戔嗚（スサノオ）、菅原道真などが祀られている。　

　昔は鳥居のすぐ前まで海が迫っていたそうだ。
　いまは車の行き交う広い道路。
　写真は１９７２年のものだが、神社の正面は
いまとほとんど変わらない。

　

　社の裏は波蝕台と呼ばれる崖。
　波に削られ、岩盤の面が現れたもの。
　ここからは、原始の信仰を忍ばせる祭器が
たくさん発掘されたそうだ。
　そして境内にはたくさんのヤマアジサイが！



　海に突き出た枇杷島神社へ。
　参道の両側には、ちょうど引き潮で干潟が現れ、
小さな蟹が無数に走り回っていた。



　神社の向こうにはシーサイドラインが。



　ああもう、ここに住みたいなあ……と心を残しながら
シーサイドラインに乗り、野島海岸で降りる。
　そこで煮魚のランチ。

　野島海岸へはアマモの再生活動に参加していたころ
よく来たものだ。その頃、海をつくる会の人たちと
一緒につくったアマモの絵本。



　さて、いったん帰宅し、夜は野毛のにぎわい座へ。



　革命、落語、ジャズ、野毛……もちろん山口百恵と、
評論家・平岡正明の世界はほんとうに広かった。
　野毛大道芝居でご一緒させていただいた私にとっては
やさしく頼もしい兄貴分でもあった。
　彼を忍んで、落語二席。
　そして圧巻は、世界的に有名な刺青師、三代目彫よしさん
によるライブペインティング。
　彫よしさんは刺青を彫るとき、それがどんなに大きなものでも
下絵を描かず、いきなり肌を彫ることで知られる。
　素晴らしい画家でもあるのだ。
　この日は百円ショップで買ったというスポンジでこの大作を！




　なんとも濃い一日の終わりは、野毛の「村田屋」。
　昔、平岡さん、彫よしさんと一緒に、「水滸伝研究会」
という中国文化を学ぶ会に通っていた。
　講座が終わった後の食事と一杯はいつもこの店だった。
　もう２０年近い昔。
　あの頃、知り合ったばかりの横浜の人々が
まだ空っぽ同然だった私の頭に、いろんな知識を
怒涛の如く流し込んでくれた。
　人生のエポックに感謝しながら、平岡さんはじめ
亡くなった野毛の仲間たちに献杯！