札幌へ二泊三日の取材旅行。
受けていただけるかな、大丈夫かな……と、
まあ、半分方、あきらめかけていた相手だった。
そこが所属している組織の上部から
けんもほろろに断られていたからだ。
ところが、あっさりと了解してくださった。
編集者さんの交渉も上手だったのだろう。
なのに、出発を5日後に控えた土曜日、
いきなり体調が悪くなった。
歩くと、一足ごとに背中に響いて痛い。
追いかけて、頭痛とだるさ、
その夜の予定をドタキャンし、寝込んだ。
風邪なのか、そうでないのかよくわからない。
でもなんであれ、治したい。札幌へ行かねば!
しかし、いっこうに良くならない。
出発の前日になって、羽田で前泊することに決めた。
午前便だったので、ラッシュの電車に乗らなければならない。
それに耐える自信がなかったので。
急遽、確保したホテルのそばに、穴守稲荷があった。
荷物を置き、定まらない足取りでお参りに行った。
なんとしても体調を良くしてくださいと、必死で祈った。
胃が食べものを受けつけてくれないのだが
食べなきゃ回復も遅れると思い、夕食はバナナを一本、
むりやり食べた。
翌朝もバナナ一本。
空港で編集者さん(男性)と落ち合う。
私の様子がいかにもひどかったらしく
「ここに診療所があるはずです。とにかく
診てもらいましょう」
と、連れていってくれた。
しかし、こういうところの診療所は、
「出発時間」という制限があるせいか、
そんなにじっくり診てくれないようだ。
実際、私も時間がない。
症状を聞いただけで、医者は「風邪でしょう」
と診断を下し、薬はビタミン剤他4種類。
走るようにして薬局へ。ぎりぎりに機内へ滑り込んだ。
新千歳空港から電車で北広島というところへ。
それまで、肩で息をしながらの道中だったのに、
目的の場所へ着いたとたん、ぱっと気が張り、
だるさも消えた(と、自分に思い込ませた)。
相手はいろいろと資料など用意して待っていてくださった。
良い取材ができたと思う。
そこから電車で、雪の残る札幌へ。
夕食は、寿司好きの私のために、編集者さんが
人気店を探して、予約しておいてくれた。
取材先を出たとたん、また体調が悪くなっていたので
食べられるかどうか心配だった。
しかし「札幌のお寿司を食べるんだ!」という
凄まじい執念がこれに打ち勝ち、握りの前に
6種類も小皿が出るという「おまかせコース」を
ほぼ完食。
握りが普通の寿司の半分くらいの大きさ、
というのがありがたかった。
お酒はまったく飲めなかったが、
寿司は素晴らしくおいしかった。
翌日は、飛行機がちゃんと到着しなかった場合の
予備日。朝はお粥定食を半分ほど。
昼はバナナ一本。
夜は「なにか北海道らしいものを食べましょう」
と、編集者さんが提案してくださってたのだが
「ごめんなさい。一人で行ってくれる? 私は
ホテルで軽いものを探して済ませるから」。
「じゃあ、またお寿司にしましょう」
普段はわりと無口で、あまりかまってくれないタイプの
編集者さんだが、必要だと思われた時は、素早く
対処してくれる。
歩かなくても済むよう、ホテルからすぐの店を
ネットで見つけて連れていってくれた。
札幌はほんとうに寿司屋が多い。
この夜も、ホテルに近い店優先とはいえ、
グルメな編集者さんが厳選してくれたので、
昨日と同様、小振りの握りがとてもおいしかった。
買い物も見物も一切しなかったが、ともかく、
大事な取材と「札幌の寿司を食べる」は完遂したのである。
「そんな状態で、なんで寿司だったら入るんですか?」
と、編集者さんが呆れていた。
翌日は夕方の便だったが、吹雪の予想が出ていたので、
帰れるかどうかがまず心配だった。
体調は相変わらず。
お粥すら駄目。
チェックアウト後、まだ札幌ですることがある
という編集者さんといったん分かれ、一人で空港へ。
朝は雪が降っていたが、この時間には晴れた。
どうか夕方までこのままでありますように……。
バスの車窓から。
数年前、プライベートで札幌へ来たことがあった。
着いて数時間で体調が悪くなり、翌日は完全にダウン。
チェックアウトの時間までベッドに籠もり、その時も
夕方の便だったが、まっすぐ空港へ。
5時間余りも、空港で一人、ぽけっと座って過ごした。
なんだろう。住みたいと思うほど憧れの街なのに、
札幌は私にとって鬼門なのだろうか。
飛行機は定刻通り飛び、定刻通り羽田へ。
帰宅二日目のいまも、体調は相変わらず。
今年は年明けの1月も長い体調不良だった。
真ん中あたりは足首の骨折。
そして年末もまたこんな状況。
最初は風邪かと思ったが、どうやらそうではない
ように思えてきた。咳、鼻水、鼻づまり、寒気など
風邪特有の症状がない。
一方、だるさ、頭痛、食欲不振、歩くと背中に響く……
などがいっこうに改善されない。
いろんな予定や約束を、その都度、ドタキャン
しなければならないのが、なにより心苦しい。
いったんどこかが悪くなると治りが遅くなったのは
やはり年をとったせいだろう。
この一冊だけ、満足がいく内容で書けたら、
もう、欲などなにひとつないのだが……。
受けていただけるかな、大丈夫かな……と、
まあ、半分方、あきらめかけていた相手だった。
そこが所属している組織の上部から
けんもほろろに断られていたからだ。
ところが、あっさりと了解してくださった。
編集者さんの交渉も上手だったのだろう。
なのに、出発を5日後に控えた土曜日、
いきなり体調が悪くなった。
歩くと、一足ごとに背中に響いて痛い。
追いかけて、頭痛とだるさ、
その夜の予定をドタキャンし、寝込んだ。
風邪なのか、そうでないのかよくわからない。
でもなんであれ、治したい。札幌へ行かねば!
しかし、いっこうに良くならない。
出発の前日になって、羽田で前泊することに決めた。
午前便だったので、ラッシュの電車に乗らなければならない。
それに耐える自信がなかったので。
急遽、確保したホテルのそばに、穴守稲荷があった。
荷物を置き、定まらない足取りでお参りに行った。
なんとしても体調を良くしてくださいと、必死で祈った。
胃が食べものを受けつけてくれないのだが
食べなきゃ回復も遅れると思い、夕食はバナナを一本、
むりやり食べた。
翌朝もバナナ一本。
空港で編集者さん(男性)と落ち合う。
私の様子がいかにもひどかったらしく
「ここに診療所があるはずです。とにかく
診てもらいましょう」
と、連れていってくれた。
しかし、こういうところの診療所は、
「出発時間」という制限があるせいか、
そんなにじっくり診てくれないようだ。
実際、私も時間がない。
症状を聞いただけで、医者は「風邪でしょう」
と診断を下し、薬はビタミン剤他4種類。
走るようにして薬局へ。ぎりぎりに機内へ滑り込んだ。
新千歳空港から電車で北広島というところへ。
それまで、肩で息をしながらの道中だったのに、
目的の場所へ着いたとたん、ぱっと気が張り、
だるさも消えた(と、自分に思い込ませた)。
相手はいろいろと資料など用意して待っていてくださった。
良い取材ができたと思う。
そこから電車で、雪の残る札幌へ。
夕食は、寿司好きの私のために、編集者さんが
人気店を探して、予約しておいてくれた。
取材先を出たとたん、また体調が悪くなっていたので
食べられるかどうか心配だった。
しかし「札幌のお寿司を食べるんだ!」という
凄まじい執念がこれに打ち勝ち、握りの前に
6種類も小皿が出るという「おまかせコース」を
ほぼ完食。
握りが普通の寿司の半分くらいの大きさ、
というのがありがたかった。
お酒はまったく飲めなかったが、
寿司は素晴らしくおいしかった。
翌日は、飛行機がちゃんと到着しなかった場合の
予備日。朝はお粥定食を半分ほど。
昼はバナナ一本。
夜は「なにか北海道らしいものを食べましょう」
と、編集者さんが提案してくださってたのだが
「ごめんなさい。一人で行ってくれる? 私は
ホテルで軽いものを探して済ませるから」。
「じゃあ、またお寿司にしましょう」
普段はわりと無口で、あまりかまってくれないタイプの
編集者さんだが、必要だと思われた時は、素早く
対処してくれる。
歩かなくても済むよう、ホテルからすぐの店を
ネットで見つけて連れていってくれた。
札幌はほんとうに寿司屋が多い。
この夜も、ホテルに近い店優先とはいえ、
グルメな編集者さんが厳選してくれたので、
昨日と同様、小振りの握りがとてもおいしかった。
買い物も見物も一切しなかったが、ともかく、
大事な取材と「札幌の寿司を食べる」は完遂したのである。
「そんな状態で、なんで寿司だったら入るんですか?」
と、編集者さんが呆れていた。
翌日は夕方の便だったが、吹雪の予想が出ていたので、
帰れるかどうかがまず心配だった。
体調は相変わらず。
お粥すら駄目。
チェックアウト後、まだ札幌ですることがある
という編集者さんといったん分かれ、一人で空港へ。
朝は雪が降っていたが、この時間には晴れた。
どうか夕方までこのままでありますように……。
バスの車窓から。
数年前、プライベートで札幌へ来たことがあった。
着いて数時間で体調が悪くなり、翌日は完全にダウン。
チェックアウトの時間までベッドに籠もり、その時も
夕方の便だったが、まっすぐ空港へ。
5時間余りも、空港で一人、ぽけっと座って過ごした。
なんだろう。住みたいと思うほど憧れの街なのに、
札幌は私にとって鬼門なのだろうか。
飛行機は定刻通り飛び、定刻通り羽田へ。
帰宅二日目のいまも、体調は相変わらず。
今年は年明けの1月も長い体調不良だった。
真ん中あたりは足首の骨折。
そして年末もまたこんな状況。
最初は風邪かと思ったが、どうやらそうではない
ように思えてきた。咳、鼻水、鼻づまり、寒気など
風邪特有の症状がない。
一方、だるさ、頭痛、食欲不振、歩くと背中に響く……
などがいっこうに改善されない。
いろんな予定や約束を、その都度、ドタキャン
しなければならないのが、なにより心苦しい。
いったんどこかが悪くなると治りが遅くなったのは
やはり年をとったせいだろう。
この一冊だけ、満足がいく内容で書けたら、
もう、欲などなにひとつないのだが……。