yokkieの気になること

障害者・児童福祉のことが多くなるかな

『ご近所富士山の「謎」』を読んで

2014-12-15 23:30:49 | 本(一般)
ご近所富士山の「謎」 有坂蓉子:著 2008年

 富士塚とは、富士山を模した小さな山「塚」である。この本は富士塚マニアを自認する現代アート作家が、好きが高じて記した東京近郊の富士塚散策ガイドだ。富士塚の簡単な成り立ち、基本的な作り、富士塚を祭る富士講の話などの基本知識と、36基の登拝ガイドからなっている。

 私は富士山に登ったことがない。だけれど富士山が見えるとなぜか嬉しい。坂上にあった幼稚園からは富士山が見えたのはよく覚えているし、今のマンションから富士山が見えるのも家族で喜んだものだ。職場のある武蔵野市では、武蔵境駅南口から近い「杵築大社」には結構立派な富士塚があって、登ってみたことがある。そんな記憶からこの本を手に取った。

 富士塚は江戸時代、富士山に詣でる富士講のメンバーの一人が、身近な神社に富士の写しとして作った塚である。富士まで行くのも登るのも現在より格段に大変な時代、代わりに気軽に詣でることができる富士塚の人気はみるみる上がり、各地に富士塚が作られていった。民衆の信心深さが弱まり、富士登山も身近になった現在では、すたれてしまった富士講も多いが、現在でもかなりの数の富士塚が残っているのが本書からわかる。ただ登るとあっという間に登り切ってしまうサイズに過ぎないが、限られた空間の中で、山の形、登山道や石のレイアウト、様々な富士山のアイテムを配置を工夫することでそれぞれに個性ある富士塚が作られている。富士マニアでなくても、単純に図鑑のような楽しさがあるのだ。図鑑の楽しさは、作者の情熱の深さが重要であり、それはこの本では十分に味わうことができる。

 もちろんハード面だけでなく、立地や成り立ち、そこで行われる山開きなどのイベントについても書かれており、地域の中で富士塚が愛されている様子を感じることができる。この本を冬に手に取ってしまったが、暖かくなったら近くの富士塚に詣でてみて、さらに夏には山開きの祭りを覗いてみたいと思う。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿