浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

米国がTPP批准を前に揺れている

2015-11-14 22:07:58 | 資料

TPP、大筋合意でも実効されない可能性大 大国・米国の自己都合

2015.10.27   小倉正行  Business Journal

 10月5日まで会期を延長したTPP閣僚会合(米国アトランタ)は、難題のバイオ医薬品のデータ保護期間や乳製品、自動車の原産地規則について合意が得られたとして、大筋合意の記者会見を行って終了した。
 今回の大筋合意によりTPP交渉は基本的には終了し、舞台は米国政府による米国議会への通告3カ月後の、早くても1月20日以降に予定される加盟12カ国による正式調印と、各国の議会承認手続きに移ることになる。
 TPPは条約なので、基本的には、加盟国のすべての議会で承認されて初めて発効することになる。ただし、議会承認国の合計GDPが加盟国全体の85%を上回った場合は、その時点で発効するとの規定が盛り込まれており、日米含めて6カ国で承認されれば成立するという異例の条約となっている。逆にいえば、GDPが1国のみで15%を超えている米国と日本のどちらかで承認がなされなければ、TPPは発効しないことになる。

米国議会

 なかでももっとも注視されているのが、米国議会で承認されるかどうかという点である。
 10月20日現在、米国政府から米国議会に対してTPP合意の通知はなく、TPP協定調印は前述のとおり来年1月20日以降となる。そのため、米国議会での審議開始は、協定調印から2カ月後の3月20日以降になる。

 米国議会は来年1月から始まるが、2月1日からは大統領選挙の予備選挙(アイオワ州党員集会)が始まり、3月1日がスーパーチューズデー、3月15日がオハイオ州、フロリダ州予備選挙と大統領予備選挙が最高潮に達し、その後も予備選挙は6月まで続き、7月18日〜21日の共和党全国党大会、7月25日からの民主党全国党大会での正副大統領候補決定と続くのである。

 また、大統領選挙と同時に、米国議会下院議員選挙(全員)と米国議会上院議員選挙(定数の3分の1改選)も同時に行われる。米国議会では、選挙期間中は休会となり、それは「レームダック会期」(Lame Duck Sessions of Congress)と呼ばれ、1980年代から現在に至るまで続いている。そのため、2月から始まる予備選挙から11月までの大統領選出まで、議会は開会されていても事実上の休会状態になるのが通例である。

 つまり、TPPは調印をしても米国議会での承認手続きが進行しない可能性が高い。仮に大統領選挙を無視して無理やり議会承認手続きに入ったとしても、今回のバイオ医薬品のデータ保護期間の問題については、米国医薬品多国籍企業は当初から保護期間12年を要求しており、今回の「実質8年」という合意内容に不満を持っている。これらの企業は議会に対して強い影響力を持っているだけに、議会の承認手続きが難航することが予想されている。

カナダでは早くも批准難航

 また、米国議会は今回のTPP交渉について、議会の一括承認手続きを定めているTPA法案を6月の上下両院で可決したが、それも賛否ギリギリで可決しただけでなく、議会が内容上問題があると判断したときは否認することができるという規定が盛り込まれたのである。それだけに、議会で否認されたならば、TPPは最大の推進国である米国が条約承認できないことになる。TPP承認が大統領選挙後になるか、否認されるか、いずれにせよTPPは発効できないまま推移する可能性があるのである。

 民主党の大統領候補を争っているクリントン元国務長官は、TPP反対を表明した。また、対する共和党も自由貿易推進政党であり、いずれの政党の大統領が選出されても、大筋合意のTPPをそのまま受け入れるかどうかも疑問である。
 
 10月19日投票のカナダ総選挙も、その結果はTPP大筋合意を受け入れたハーパー首相率いる与党保守党が敗北し、自由党との政権交代という事態になった。これで、カナダにおけるTPP批准も難航することが想定されている。
 TPPの前途には、暗雲が垂れ込めているのである。
(文=小倉正行/ライター)

http://biz-journal.jp/2015/10/post_12114.html

◆TPP、WTO、NAFTA: 大企業による、アメリカ史上、最も恥知らずな権力奪取

2015年11月12日   マスコミに載らない海外記事

Chris Hedges
Truth Dig
2015年11月6日

2014年、東京での環太平洋戦略的経済連携協定反対抗議(神林静雄 / AP)

木曜、世界の生産高の約40パーセントを占める12か国が参加する貿易・投資協定、環太平洋連携協定の5,544ページの文章公開で、最も終末論的な批判者たちが恐れていたことまで確認された。
http://www.international.gc.ca/trade-agreements-accords-commerciaux/agr-acc/tpp-ptp/index.aspx?lang=eng

“TPPは、WTO [世界貿易機関]やNAFTA [北米自由貿易協定]同様、アメリカ史上最も恥知らずな、大企業による権力奪取です”私がワシントンD.C.に電話をした際、ラルフ・ネーダーは言った。

“これは、大企業が、法的強制力のある秘密裁決機関による経済制裁を押しつけ、アメリカ政府の三権を無視することを可能にします。この裁決機関が、アメリ カの労働者、消費者や環境保護は違法だと判決を出し、非関税障壁は違反のかどで罰金を科されることになります。TPPは、アメリカ国内法を無視した、国境 を越えた、法的強制力のある支配という独裁体制を樹立するのです。”

TPPは、環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)と、新サービス貿易協定(TiSA)を含む三つ組みの貿易協定の一つだ。あらゆる公共サービスの民営化を要求するTiSAは、アメリカ郵政公社、公教育や、他の政府が運用する企業や公益事業の存続にとって致命的脅威だ。こうした事業の総計は、アメリカ経済の80パーセントを占める。TTIPとTiSAは、いまだ交渉段階にある。両者は、TPPに続いて、2017年に議会に提出される可能性が高い。

この三つの協定は、最終的な国家主権の全摘とともに、しのびよる大企業クーデターを強化するものだ。国民は自らの運命を思い通りにするのをあきらめるよう強いられ、大企業という捕食者連中から、自らを守り、生態系を保護し、今や無力で機能不全のことが多い、アメリカの民主的機関に、救済策や公正を求める能力を剥奪されてしまう。専門用語、複雑な技術、貿易、金融用語、法律用語、細かな文字や曖昧な言い回しだらけの協定は、二つの言葉に要約できる。大企業への隷属だ。

TPPは議会やホワイト・ハウスから様々な問題に対する立法権限を剥奪する。司法権は 大企業だけが訴えるのを認められる、三人で構成される貿易裁決機関に服従させられる。労働者や環境保護団体や権利擁護団体や労働組合は提案されている裁決機関に救済を求めるのを阻止される。大企業の権利は侵さざるべきものとなる。国民の権利は廃絶される。

シエラ・クラブは、TPP文章の公開後にこういう声明を発表した。“公害を引き起こす巨大な組織が協定をまとめるのを手伝ったのだから、協定は、何十年もの環境保護の進展を台無しにし、気候を脅かし、野生生物を十分に保護しそこねる内容の、公害を引き起こす組織に対する景品でみちあふれている。”

もし来春、議会でのTPP成立を阻止するための持続的大衆蜂起がなければ、我々は大企業権力によって束縛されてしまう。賃金は低下する。労働条件は劣化する。失業は増大する。我々のわずかに残された権利は無効にされる。生態系への攻撃は加速する。銀行や世界的投機が監督や管理されなくなってしまう。食品安全基準や規制は破棄される。メディケアやメディケイドから郵便局や公教育にわたる公共サービスは廃止されるか、劇的に削減され、営利目的の大企業によって乗っ取られる。医薬品を含め、基本的必需品の価格急騰する。社会的支援プログラムは劇的に規模が縮小されるか、終了してしまう。また協定に加盟している、カナダやオーストラリア等の公共医療制度がある国々では、恐らく大企業による攻撃の下、各国の公的医療制度は崩壊するだろう。大企業は、植物や動物を巡るものを含む非常に広範な特許を保有する権限を得て、基本的必需品や自然界を、商品に変えてしまうのだ。しかも、大企業が最後の一滴まで搾り取れるようにするべく、計画された利益を妨げると大企業により解釈されたあらゆる法律、環境や消費者を保護するために作られた法律でさえも、投資家-国家紛争調停(ISDS)と呼ばれるものによって、異議を唱えられることになる。ISDSは、TPPのもとで強化され、拡張され、連中の銀行口座を更に増大させる彼らの“権利”を侵害したかどで、大企業は、違反している政府から、補償として莫大な金額を受け取れる。大企業利益が事実上、公共の利益に置き換わるのだ。

大統領選挙戦ではTPPを非難していても、大企業資本主義への揺るぎない奉仕実績からして、大企業支援者に忠誠を誓うのは確実なヒラリー・クリントンのような道徳心のない政治家連中を含む、アメリカの政治家連中の破綻を考えれば、貿易協定は法律になる可能性が高い。しかも、オバマ政権は、民主的論議を妨げるために、ニクソン政権が編み出した戦術であるファスト-トラック権限を勝ち取っているので、オバマ大統領は、議会に提出される前に署名することができるだろう。

ファスト・トラックのおかげで、TPPは公の議論や議会各委員会による検討という通常の立法過程を回避できる。送られてから90日間以内に、TPP法案に投票しなければならない議会下院も上院も、ファスト・トラック条項によって、議会による修正案を追加したり、20時間以上の討論をしたりすることを禁じられている。議会は環境に対するTPPの影響に関する懸念を提起できないのだ。議会は賛成か否かの投票しかできない。議会には、一語たりとも、改変したり、変更したりする権限がないのだ。

ワシントンで、11月14日から18日までの間、TPP阻止推進を開始する大規模動員が予定されている。TPPを止めるべく立ち上がることの方が、大統領選挙戦という空虚な政治茶番にかかわるより、我々の時間とエネルギーの遥かに有意義な投資だ。

“TPPは、世界経済を支配する大企業による法律の蜘蛛の巣を生み出します”弁護士で、貿易協定に対して長い戦いを続けている、ボルティモアの団体ポピュラー・レジスタンスのケヴィン・ズィースは電話でこう話してくれた。“これは世界的な大企業クーデターだ。大企業が国より強力になります。民主的制度を、大企業が自分たちの権益に役立つよう強いるのです。世界中の民事裁判所が、大企業裁判所、いわゆる貿易裁決機関に置き換えられることになります。これは、NAFTAの最悪部分を無くすというバラク・オバマの約束とは違い、NAFTAの最悪部分を足場にした大幅拡張です。”

協定は、銀行、保険会社、ゴールドマン・サックス、モンサントや、他の大企業等の世界的資本家による六年間にわたる作業の産物だ。

“協定は連中[大企業]によって作られた、彼らのためのもので、彼らに役立つものです”とズィースはTPPについて語っている。“国内企業や中小企業を駄目にします。バイ・アメリカン条項は消滅します。地域社会は地方産品購入運動が許されなくなります。協定の主眼は、民営化とあらゆるものの商品化なのです。協定は国家が支援する企業や国有企業への深い反感を組み込んでいます。僅かに残された我々の民主主義を、世界的貿易機構にあたえるのです。”
https://www.wto.org/

エコノミストのディヴィッド・ロスニックは、経済・政策研究センター(CEPR)のTPPに関する報告書で、貿易協定のもとで、上位10パーセントのアメリカ労働者だけが給料が増えるだろうと予想している。平均的収入のアメリカ労働者(35番パーセンタイルから、80番パーセンタイル)の実質賃金は、TPPのもとで低下するとロスニックは書いている。製造業雇用の減少に貢献した(今や経済のわずか9パーセントだ)NAFTAは、労働者を、より賃金の低いサービス雇用に強いて、実質賃金が、12から17パーセント低減する結果となった。TPPは、この過程を促進するだけです、とロスニックは結論付けている。
http://www.cepr.net/

“これは、世界規模における底辺への競争の継続です”ボルティモアの、やはりポピュラー・レジスタンス所属で、アメリカ上院議員候補のマーガレット・フラワー医師は、私との電話会話で言った。“大企業は、労働基準が一番低い国々に自由に移動できます。これはアメリカの高い労働基準を押し下げます。これは企業と労働組合の大量破壊です。これは底辺への競争の加速で、我々はそれを止めるために立ち上がらなければなりません。”
http://www.flowersforsenate.org/

“マレーシアでは、技術労働者の三分の一は、本質的に奴隷です。”ズィースは述べた。“ベトナムでは、最低賃金は時給35セントです。こうした国々が貿易協定に参加してしまえば、アメリカ労働者は非常に困難な立場におかれます。”

社会保障庁による新たな調査によれば、現在働いているアメリカ人の51パーセントの収入は、年間30,000ドル以下だ。40パーセントは年間収入20,000ドル以下だ。連邦政府は、24,250ドル以下の収入で暮らしている4人家族を貧困と見なしている。

“アメリカ労働者の半数の収入は、本質的に法廷貧困レベルです”とズィースは言う。“協定は、この傾向を促進するだけです。アメリカ労働者が、一体どのように対処するのか想像がつきません。”

1994年、クリントン政権下で成立し、当時アメリカ合州国で、年間正味200,000件の雇用を生み出すと約束されたNAFTAによる、アメリカ労働人口に対する攻撃は壊滅的だった。パブリック・シチズン報告によれば、NAFTAは、メキシコとカナダとの1810億ドルの貿易赤字と、少なくとも100万件のアメリカ雇用喪失をもたらした。メキシコ市場は、アメリカのアグリビジネスによる安いトウモロコシで溢れ、メキシコ・トウモロコシ価格を低下させ、100万から300万の貧しいメキシコ農民が破産し、小農園を失うことになった。彼らの多くは職を探そうという必死の努力で国境を越えアメリカ合州国に入国した。
http://www.citizen.org/documents/NAFTA-at-20.pdf

“オバマは、この過程で、ずっと国民を欺いてきました”フラワーズ医師は言う。“環境を保護するので、環境保護団体は協定を支持していると彼は主張しますが、これも間違いであることが証明済みです。彼は、650,000の雇用を生み出すと言いますが、これも間違いであることが証明済みです。彼は、これを21世紀の貿易協定と呼びますが、実際は、ブッシュ時代の貿易協定で行われた進歩の押し戻しです。21世紀の貿易協定で最近のモデルは米韓自由貿易協定です。これは、140,000件のアメリカ雇用を生み出すものと想定されていた。ところが我々が目にしているのは、数年のうちの約70,000件の雇用喪失と、韓国との巨大な貿易赤字です。この協定[TPP]は、NAFTAや他の貿易協定を売り込むのに利用したのと同じ欺まんを用いて、我々に売り込まれているのです”

協定は、要するに世界法になるのだ。国連で作成される、二酸化炭素排出を巡る諸国間のあらゆる協定は、TPPによって、事実上無効にされてしまう。

“貿易協定は拘束力があります”フラワーズ医師は言う。“貿易協定は、パリで出されるだろう国連気候変動会議による、あらゆる法的拘束力を持たない協定に優先します。”
http://unfccc.int/meetings/paris_nov_2015/meeting/8926.php

しばしば“強化版NAFTA”と呼ばれるTPPが、一体どういうことをもたらすのかを示す十分過ぎる証拠が過去の貿易協定から得られている。国民を守り、公共の利益を推進するような社会的、政治的組織を構築するのに、政府を利用する能力を、我々から奪い取る、大企業による情け容赦ない行進の一環なのだ。アメリカの大企業ご主人連中は、自然界と人類を、枯渇、あるいは崩壊するまで利用、搾取できる、思い通りにできる商品に変えようとしている。貿易協定は、この服従を実現するために利用される手段なのだ。唯一残された反撃は、開かれ、持続可能で、挑戦的な民衆反乱だ。

記事原文のurl:http://www.truthdig.com/report/item/the_most_brazen_corporate_power_grab_in_american_history_2015110

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/tppwtonafta-42c.html

◆機能不全に陥った米国の労働市場
働き盛りが家族を養えない? 問題は労働参加率の長期低下傾向

2015.11.5 Financial Times JB PRESS
(2015年11月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

米国では、働き盛りの成人の労働参加率が長年低下し続けている (c) Can Stock Photo

 米国では2014年、25~54歳の男性の12%(ほぼ8人に1人)が職に就いておらず、求職活動もしていなかった。これはイタリアの水準に非常に近く、主要7カ国(G7)に名を連ねるほかの高所得国をはるかに上回る値だ。英国のそれは8%で、ドイツとフランスは7%、日本に至っては4%にすぎなかった。

同じ2014年、米国に住む働き盛りの世代の女性の26%は職に就いておらず、求職活動もしていなかった。この値は日本のそれと全く同じで、両国を上回るのはイタリアだけだ。

 つまり、十分な所得を稼ぐことが必要不可欠になっているはずの責任ある世代の男女について言えば、米国労働市場のパフォーマンスは際だってお粗末だったことになる。

 一体何が起こっているのだろうか。

大きく変容する労働市場

 米国では以前から、16歳以上の人々の労働参加率が世界金融危機後に低下していることが議論の焦点になっている。確かに、この比率は2009年年初の65.7%から2015年7月の62.8%へと低下している。

 米大統領経済諮問委員会(CEA)によれば、この低下幅のうち1.6ポイントは高齢化によるもので、0.3ポイントは景気循環の影響によるものだ(後者は、当初に比べれば縮小しているという)。残りの約1ポイントは説明がついていない。

 現在はプリンストン大学に籍を置くアラン・クルーガー前CEA委員長は、長期失業者の多くは就職をあきらめてしまっていると論じている。循環的な失業の長期化はそうやって労働力人口の恒久的な縮小を引き起こすというのだ。

 ということは、失業率は2つの正反対の理由で低下する可能性があることになる。1つは、仕事が見つかるという歓迎すべき理由。もう1つは、失業者が就職を断念するという歓迎できない理由である。

 幸い、米国では、世界金融危機の後、前者の方が優勢だ。米国全体の失業率(国際比較が可能なベース)は2009年につけたピークの10%から5ポイント低下している。総じてみると、この5ポイントのうち、労働参加率の低下による部分はせいぜい4分の1だ。

 ほかの国々との比較でも、米国の失業率はなかなか良好だ。

 2015年9月の値は英国と同じであり、ドイツや日本よりは少し高いものの、ユーロ圏の10.8%に比べればかなり低い。

 従って、米国の景気循環による失業のパフォーマンスは、ほかの国々の基準に照らせば少なくとも「まずまず」だと言える。ただ、米国大統領経済報告2015年版で指摘されているように、英国は高齢化のトレンドが米国のそれに似ているにもかかわらず、グレートリセッション(大不況)以降に労働参加率の低下が見られなかった。

 景気循環ベースで見ても、米国の労働参加率の低下は懸念材料だ。しかし、本当に厄介であるに違いないのは長期のトレンドの方である。働き盛りの世代のそれは特にそうだ。

働き盛りの米国人の苦悩

 1991年には、米国の働き盛り*1の男性のうち、職に就いておらず求職活動もしていない人の割合は7%にすぎなかった。よって、就職をあきらめた人の割合は5ポイントも増えたことになる。同じ時期に英国では、働き盛りの男性のうち労働力にカウントされない人の割合は6%から8%にしか増えていない。フランスも5%から7%への増加にとどまっている。

つまり、働き盛りの世代の男性を労働力としてつなぎ止めておくという面では、硬直的だと一般に思われているフランスの労働市場の方が、柔軟性の高い米国の市場よりも高い成績を上げていることになる。しかも、米国では男性の労働参加率が第2次大戦後間もないころからずっと低下傾向を描いている。

*1=本稿では25~54歳の世代を指す

 働き盛りの女性の労働参加率にも、男性のそれに勝るとも劣らない興味深いことが起こっている。

米国では2000年まで女性の労働参加率が力強く上昇し、世界でも指折りの高さになった。

 ところがそれ以降はG7で唯一、働き盛りの世代の女性の労働参加率が一貫して低下している。かつて大きく出遅れていた日本にも追いつかれてしまった。

 米国の働き盛りの男女が長期にわたって、これほどの規模で労働市場から退出し続けているのはなぜなのか。働かずにいる方が楽だからという説明は成り立ち得ない。米国は、高所得国の中では福祉が最も手厚くない国だからだ。

 法定最低賃金が高いために雇用の創出が妨げられ、スキルに乏しい労働者が就職をあきらめる要因になっているというわけでもない。経済協力開発機構(OECD)によれば、2014年の米国の最低賃金は実質ベースで英国のそれより20%低く、高水準なことで知られるフランスのそれを大幅に下回る。しかも、米国の労働市場はOECD加盟国の中では最も規制が少ない。

長期トレンドを説明する理由は・・・

 では、この労働参加率のトレンドは何で説明できるのだろうか。働き盛りの女性については、手ごろな料金の保育施設・サービスがないことが有力な説明の1つに上げられそうだ。どうやら社会は、女性を労働市場にとどめておく費用を負担したくないと思っているようだ。

 また、労働市場が柔軟であるがゆえに、雇用主が働き盛りの世代の労働者に代えて若者や高齢者を雇うことができるという説明も可能だろう。実際、米国では15~24歳の労働参加率が比較的高い。

 65歳以上の高齢者の労働参加率も、2000年の13%から2014年の19%へと大幅に上昇している。この高齢者の値は、G7では日本に次ぐ2番目の高水準だ。

 最低賃金が低いことと、市街地が延々と続く大都市圏に住む労働者では通勤の交通費の負担が重くなることも、低賃金労働を割に合わないものにしている可能性がある。

 特に男性の場合、いわゆる大量投獄によって犯罪歴を持つ人の数が増えたことも、職探しの困難さやそれを受けた労働市場からの退出を説明する要因になるかもしれない。

 最後に、働き盛りの世代の労働参加率が低下していることは重要な問題なのだろうか。答えはイエスだ。重要であるに違いない。

 もし、家族を養えるだけの収入が労働市場では得られないと思っている人が多いのであれば、労働参加率の低下は重要な問題である。子供のいる女性たちが労働市場とのつながりを失っている場合も同様だ。

 労働市場に参加する働き盛りの割合が米国で一貫して減ってきていることは、この国の市場に重大な機能不全が起きていることを示唆している。注目や分析に値することだが、それにはとどまらない。これは行動を起こすに足る問題だ。

By Martin Wolf
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45179?utm_source=editor&utm_medium=self&utm_campaign=link&utm_content=recommend

◆真実はワシントンの敵

2015年4月23日 マスコミに載らない海外記事

Paul Craig Roberts
2015年4月21日

エド・ロイス下院議員(カリフォルニア選出、共和党)は、真実がアメリカ内で語られる可能性を破壊する作業に励んでいる。4月15日、ロイスが委員長をつとめる下院外交委員会公聴会で、ワシントンのウソに異議を唱える人々全員、気の狂った親ロシア・プロパガンダ・カルトに属する“脅威”だと定義しなおすのに、ロイスは二つの二流売女マスコミを利用した。
http://www.prisonplanet.com/bloggers-compared-to-isis-during-congressional-hearing.html

ワシントンの問題は、ワシントンは、アメリカと、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、ウクライナや日本等の属国の印刷メディア、TVメディアは支配しているが、ワシントンは、ここの様なインターネット・サイトや、属国でない国のRT等のマスコミを支配してはいないことだ。結果として、ワシントンのウソは異議を申し立てられることとなり、プロパガンダ内容ゆえに、欧米の印刷媒体・TV放送を、人々が信用しなくなると、ウソに依存しているワシントンの狙いは、事を進めるのがより困難になってしまう。

真実は、ワシントンのプロパガンダを通り抜け、沸き上がる。あらゆる言説に対する制御が不能になる可能性に直面して、ヒラリー・クリントンやエド・ロイスや他の連中は、突然ワシントンが“情報戦争”に敗北しつつあると泣き言を言い出した。納税者達が大変な苦労をして手にした膨大な額の金がウソで真実と戦う為に使われようとしているのだ。

何をすべきだろう? 支配を継続するために、どうすれば真実をウソで抑圧できるのだろう? アンドリュー・ラック、ロイスその他の連中は、真実を語る人々をテロリストとして定義し直すのがその答えだと言う。そこで、RTや“異議を唱える”インターネット・ブロガーを、「イスラム国」や、指定テロ集団のボコハラムになぞらえるのだ。

公言できない狙いに役立つように、ワシントンが創り出すエセ現実に異論を唱える、クリス・ヘッジズ、ジョン・ピルガー、グレン・グリーンウォルドや私たちの様な体制と意見を異にするブロガーを含めるようテロリストの定義を、ロイスは拡張したのだ。例えば、もしワシントンが、政治献金と引き換えに、軍安保複合体に利益を注ぎ込みたくても、政治家がそれを言うわけには行かない。そこで、代わりに、戦争を始めることによって、アメリカを危険な敵や大量破壊兵器から守っているのだと連中は主張するわけだ。政治家連中が、アメリカ金融帝国主義、あるいはエネルギー帝国主義を推進したい場合には、“自由と民主主義をもたらす”というお題目のもとで、そうする必要があるのだ。政治家連中が、ロシア等、他国の勃興を防ぎたい場合には、オバマ大統領は、ロシアは、エボラ・ウイルスや、「イスラム国」にも匹敵する脅威だとするのだ。

ノーム・チョムスキーは、ワシントンのプロパガンダをおうむ返ししないいかなる情報も、許しがたいものと、ワシントンは見なしていると簡潔に要約した。

脅威としての真実に対するワシントンの攻撃を見れば、ウイリアム・ビニーやエドワード・スノーデンが暴露した、巨大な国家安全保障局スパイ制度の狙いが理解しやすくなる。スパイ網の狙いの一つは、ビッグ・ブラザーという“真実”に“異議を唱える連中”全員を特定することにある。

“異議を唱える”連中全員のあらゆる電子メール、インターネット検索、訪問したウェブ、電話会話、購買、旅行記録を集めた人物調査書が既にあるか、作られるはずだ。異議を唱える各人に関する膨大な量の文脈から好きなものを抜き出す為、くまなく調べ、もし告訴が必要とあらば告訴することもできる。既にワシントンは、罪状も無しに、アメリカ国民を無期限拘留し、拷問し、殺害するという憲法を超越する自らの権限を、まんまと行使するに至っている。

ジャネット・ナポリターノ国土安全保障長官が、国土安全保障省の対象は、テロリストから、国内過激派に変わったと述べたのは数年前のことだ。国内過激派という範疇にまとめられるのは、環境保護運動家、動物愛護運動家、幻滅した退役軍人を含む反戦活動家、州の権利、制限された政府、説明責任を負う政府を信じる人々だ。結果的に、異議を唱える、アメリカ最良国民の多くが、いくつかの理由で、国内過激派扱いされることになる。例えば、動物を愛護するクリス・ヘッジズ(http://www.opednews.com/articles/Choosing-Life-by-Chris-Hedges-Animals_Cattle_Corporate_Dairy-150420-878.html を参照)や、環境や、ワシントンの果てしない戦争を懸念する人々が。

“異議を唱える人々”に対するスパイと、来るべき弾圧が、ディック・チェイニーの企業ハリバートンの子会社が、アメリカ国内での収容所建設で、3億8500万ドルもの連邦契約を落札した説明になるかも知れない。収容所が一体誰を収容する予定なのかを懸念している人々の数はごく僅かなようだ。マスコミや議員による調査は全く行われていない。収容所が、ハリケーンや、森林火災からの避難民用のものだとは考えがたい。強制収容所は、普通は、信頼できないと見なされる人々用のものだ。そして、ラック、ロイス他が、信頼できない人々とはワシントンのウソを支持しない人々であることを明らかにしている。

ワシントンや、ワシントンが仕えている私的権力機構が、自らを真実から守る必要性を感じていることが、一般市民の中にいる“脅威”に潜入し、占拠し、一斉検挙するという様々な州における、極めて奇妙な軍事演習の理由かも知れない。(http://www.zerohedge.com/news/2015-04-16/signs-elites-are-feverishly-preparing-something-bigを参照のこと) 売女マスコミのCNNですら、ミズーリ州ファーガソンに派遣された州兵達が、一般市民の抗議行動参加者を“敵軍”や“敵対者”と見なすよう教え込まれていたことを報じており、州や地方の軍隊化した警官が、アメリカ国民を脅威として見なすように訓練されているのを我々は知っている。

民主党員であれ共和党員であれ、リベラル、保守、超愛国者、学識があろうと無かろうと、ワシントンが、売女マスコミの協力を得て、真実を脅威と規定しているのを理解しているアメリカ人は、私が認識できる限りは、ごくわずかだ。ワシントンの考えでは、真実は、エボラ、ロシア、中国、テロや「イスラム国」を全部足したより大きな脅威だ。

真実に耐えられず、真実の撲滅に頼るしかないような政府は、どの国とて望むような政府ではない。だが、そうした望ましからぬ政府こそが、クリントン-ブッシュ-チェイニー-オバマ-ヒラリー-ラック-ロイスらが、我々に与えてくれる政府だ。

皆様はそれで満足だろうか? 皆様の名において、皆様が苦労して得た、ますます少なくなりつつある所得にかけられた税金で、21世紀に、ワシントンが、8ヶ国で、何百万もの人々を殺害し、不自由にし、強制退去させ、アメリカにロシアと中国との戦争への道を歩ませ、真実は国家の敵であると宣言しているのに皆様は甘んじられるのだろうか?

Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/04/21/truth-washingtons-enemy-paul-craig-roberts/

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-5aef.html