【米大統領選】
クリントン、カーソン、トランプ…民主、共和両党の主要6候補の戦略と手法を分析した
2015.11.5 産経ニュース
2016年米大統領選挙に名乗りを上げた民主、共和両党の主要候補者たちは「オバマ後」の米国をどこへ導こうとしているのか。それぞれの候補が唱える主な政策公約や、勝利に向けた選挙戦略を概観する。(ワシントン 青木伸行、加納宏幸、小雲規生)
民主1位 ヒラリー・クリントン氏「『タカ派』の外交 前面に」
オバマ政権の1期目に国務長官を務めた民主党のクリントン氏にとり、外交・安全保障分野で「弱腰」と批判されるオバマ大統領との距離をどう取るかが大きな課題となっている。
「シリアではとりわけ、ロシアのプーチン大統領の『いじめ』に対して立ち上がらなければならない」。10月の討論会ではシリアへの軍事介入を強めるプーチン氏を強く批判した。
大統領夫人、上院議員を経て2008年大統領選の民主党指名争いでオバマ氏に敗れた。1期目のオバマ外交の中核を担い、アジア重視、イランとの対話、対露関係の改善を目指す「リセット」路線を進めた。
しかし、プーチン氏が12年、大統領に再登板すると米露関係は悪化。14年3月のウクライナ南部クリミア半島併合で、クリントン氏の責任も問われることに。
クリントン氏は、オバマ政権が否定するシリア上空への飛行禁止空域の設定を主張。女性の権利向上に関する会合を国連と共催した中国の習近平国家主席を「恥知らず」と批判するなど、オバマ氏に比べ強硬姿勢を前面に出している。
共和1位 ベン・カーソン氏「信仰を重視 中絶は否定」
「結婚は男女によるものだと信じている。だからといって同性愛者を差別するわけではない」。元神経外科医のカーソン氏はキリスト教徒として信教の自由を守ることや、人工妊娠中絶に否定的な立場を重視した主張で支持を広げる。
貧しい母子家庭に育ちながら、脳外科手術の権威として米文民最高の栄誉とされる「大統領自由勲章」を受章した。選挙戦では政府の規模縮小や税制の簡素化による「個人の努力が報われる社会」の実現を訴える。医療保険制度改革に関しては、個人への保険加入義務づけなどが米国の理念に反すると批判している。
知名度向上のきっかけは2013年2月の政治イベント。近くに座る元弁護士のオバマ大統領に対し、「弁護士になるために学ぶのはどんな手段を使ってでも勝つこと。でも必要なのは問題を解決することですよ」と痛烈な皮肉を飛ばし、保守系のテレビ番組に出演するようになった。
政治経験のなさを指摘され、討論会でも存在感が薄いことが多いが、ソフトな語り口の好感度は高い。
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民主2位 バーニー・サンダース氏「格差是正『人々を幸せに』」
「欲望まみれのウォール街が経済を破綻させた。全ての人々が幸せに生活できる社会を」。民主党から候補者指名を目指すサンダース上院議員は「民主社会主義者」を自称し、格差是正を最大の争点に掲げる。
主な政策では、最低賃金の時給15ドルへの引き上げや公立大学の授業料無料化、社会保障の拡充、富裕層への課税強化などリベラル色を前面に打ち出す。また北米自由貿易協定(NAFTA)が製造業の海外流出につながったとの見方から、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)にも「反対」の立場を取る。
下院議員時代から無所属としてキャリアを積み、時代の流れに左右されない政策判断を売り物にする。後に同性婚への差別的な扱いが違憲だと判断された1996年の結婚防衛法や、2003年のイラク戦争開戦に対して当初から反対を貫いたことをアピールし、日和見主義を揶揄(やゆ)されるクリントン前国務長官との違いを強調する。
74歳という高齢がネックだが、白髪を振り乱して熱弁を振るう姿は若者からも支持を集めている。
バーニー・サンダース
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共和2位 ドナルド・トランプ氏「『雇用奪われた』不満吸収」
不動産王のトランプ氏は「米国を再び偉大にする」と繰り返し唱え、オバマ大統領や議会指導者を「間抜け」と見なしている。
「中国の指導者は米国の指導者に比べ利口だ。(米プロフットボールNFLの)ペイトリオッツの選手を連れてきて高校生と試合をさせる程の違いがある」
トランプ氏が貿易問題で中国や日本、メキシコをやり玉に挙げたのも、オバマ政権の約7年間でこうした国々に米国の雇用が奪われたと印象づけ、「不公平さ」への怒りや不満をかき立てる狙いがある。
世界一の国内総生産(GDP)を誇り、最強の軍を擁する米国だが、2008年のリーマン・ショック後、国民は自信を完全には取り戻せないでいる。共和党支持層は、不動産開発を成功させて富豪になったトランプ氏の「偉大な米国」という単純なメッセージに引き付けられている。
トランプ氏を主に支持しているのは、景気回復の実感を持てない白人のブルーカラーだ。中間層や企業への減税で景気を刺激することで、6%の経済成長率を目指すと主張している。
ドナルド・トランプ
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共和3位 マルコ・ルビオ氏「移民の子 巧みな討論」
「父はバーテンダーで、母はメイドだった。私たちによりよい生活を送る機会を与えるため一生懸命に働いてくれた」。ルビオ上院議員はキューバ移民の両親の苦労を語ることが多い。
学生ローンを使って法科大学院に通い、弁護士資格を取ったルビオ氏は、フロリダ州下院議員などを経て、2010年中間選挙で39歳の若さで上院議員になった。当時は保守系草の根運動「ティーパーティー」(茶会)ブームの最中。現職の州知事を破り、当初から「将来の大統領候補」と目されていた。
民主党に偏る中南米系の支持を得ようとした共和党指導部は13年、オバマ大統領の一般教書演説への反論演説に抜擢(ばってき)。だが、オバマ氏が目指した約1100万人の不法移民に市民権取得の道を開く移民制度改革法案を支持し、保守強硬派の反発を買ったこともある。
その後、移民問題では国境警備の強化に重点を置き、議会でも優れた討論の手腕を見せ、保守層の信頼も戻りつつある。早くも本選を視野に「クリントン氏にオバマ氏の政策を続けさせない」と訴えている。
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共和5位 ジェブ・ブッシュ氏「穏健な保守 支持広がらず」
ブッシュ元フロリダ州知事のブレーンにはベーカー元国務長官やウォルフォウィッツ元国防副長官、ゼーリック元国務副長官、ネグロポンテ元国家情報長官らが顔をそろえる。元大統領の父と前大統領の兄、そしてレーガン政権で要職を務めた保守派の面々だ。中でもウォルフォウィッツ氏は兄の政権下でイラク戦争の「設計者」と呼ばれた。
こうしたブレーンを反映し、ブッシュ氏は「米国は戦力を投射し、世界の遠隔地を平和的に安定させることができる」とし、「強い軍事力に裏付けられた米国の復活」を標榜(ひょうぼう)している。
シリアやイラク、アフガニスタン情勢に関する主張は、オバマ政権の戦略より保守的だ。シリア情勢では反体制派とクルド人部隊に「確固たる軍事力」を供与し、安全地帯などを設定するよう主張している。
ただ、本人の保守色はそれほど強くない。自身が穏健派であることに加え、「ブッシュ王朝」のイメージを薄めて「ジェブらしさ」を打ち出しているためだが、それ故に支持が広がっていない側面もある。
http://www.sankei.com/premium/news/151105/prm1511050006-n1.html
2015年10月27日 Newsweekjapan
この事件に関しては、発生直後から当時国務長官として外交の責任者だったヒラリーの責任追及が野党・共和党によって執拗に続いていました。例えば、2013年1月には有名な「上下両院合同の調査委員会」が開催され、ジョン・マケイン上院議員(共和)などの大物政治家が代わる代わるヒラリーを攻撃したのです。
その13年の証人喚問では、ヒラリーは感情的になって声を荒げるなど失点を重ねてしまい、疑惑を完全に払拭することはできませんでした。さらに15年になって、ヒラリーは国務長官在任当時に、自宅に設置した私用のメールサーバを使って公務をこなしていたという疑惑が発覚しています。
下院共和党としては「13年の喚問で疑問が残った」こと、そして「メールサーバ疑惑に伴ってヒラリーの膨大な電子メールの記録に関して国政調査権を発動できるようになった」ことから、あらためて調査委員会を組織してヒラリー本人の喚問を実施したのです。
先週の喚問は、朝10時に質疑が始まり、途中2回の休憩をはさんで夜9時まで連続して行われました。述べ11時間におよぶ長丁場となったのですが、その結果はヒラリーの「完勝」でした。彼女は、基本的にすべての質問に答えて疑念の払拭に成功したばかりか、自身のカリスマ性を誇示する場として証人喚問を利用しきったと言えるでしょう。
では、11時間にわたってそのような追及を受けたにも関わらず、どうしてヒラリーは「勝利」できたのでしょうか?
まず13年の公聴会とは、そのスタイルに雲泥の差がありました。当時ヒラリーは、洗練されていないウールのスーツに黒縁のメガネ、そしてポニーテールの髪型で登場し、しかも執拗な共和党の攻撃に対して感情的になる場面が見られました。そうしたシーンは何度となくニュース番組で取り上げられ、イメージダウンにつながったのです。
一方、先週の公聴会では、フォーマルな印象の黒のスーツで決めると同時に、髪は短く切ってメガネを外し、ナチュラルなメイクにしています。さらに威風堂々とした威厳のある振る舞いが印象的でした。
何よりも成功していたのは、感情のコントロールを完璧に行ったことでしょう。相手が怒りを見せて追及をしてくると、反対に微笑みを浮かべて相手の怒りを受け止める一方で、答弁に関してはひたすら慎重かつ低姿勢で一切スキを見せなかったのです。
もちろん、共和党の中にはまだまだ「アンチ・ヒラリー」は多いわけですが、これで民主党支持層と中道層の相当な部分については、「メールサーバ疑惑」以来、彼女に抱かれていた疑念は解消されたと見ていいでしょう。ヒラリーの支持率は、今月13日のテレビ討論の成功を受けて上昇に転じており、最悪の時期には40%前後だった支持率が48%程度にまで上昇していました。先週の公聴会を受けておそらく60%近いところまで上がったのではないかと思われます。
一方で、この公聴会の前日21日にジョー・バイデン副大統領は「大統領選に出馬しない」と表明、また大統領選に名乗りを上げていた中道や党内右派の「泡沫候補」たちも続々撤退を表明しています。
結果として、現時点では民主党の大統領候補選びは、事実上ヒラリーとバーニー・サンダース上院議員の一騎打ちになっています。順風満帆になってきたヒラリー陣営ですが、ここに少し問題があるように思われます。
というのは、サンダース候補は「自称社会主義者」だけあって、究極の大きな政府論、そして非常に強めの再分配による格差是正論を掲げています。そのサンダースの「左派政策」が民主党の党内世論に影響を与えているのです。アメリカの景気は好調ですが、好調の中に雇用への不安はあるし、好調なゆえに再分配を強化せよという空気も一方ではある中、どうしても党内世論は左へ傾いてしまうのです。
このスローガンは、共和党のトランプがいつも言っている「自分はアメリカをもっと偉大にする」というスローガンへのアンチという形を取りながら、自分の左派ポジションを明確にするものと言えます。そして、党内には中道的な立場からヒラリーを止める存在は残っていないのです。このままですと、相当の確率でヒラリーは民主党の統一候補に指名されるでしょう。ですが必要以上に左に寄ってしまうと、本選で中道票の離反に遭う危険性もあります。そこがヒラリーの死角になっていると思います。
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2015/10/post-781.php
2015.11.10 産経ニュース
【ワシントン=青木伸行】来年の米大統領選挙の共和党候補者指名争いで、元神経外科医のベン・カーソン氏(64)がアピールしている自身の「美談」に、米メディアから疑惑の目が向けられている。有権者の離反と支持率の低下を招く可能性もありそうだ。
やり玉に挙がっているのは、カーソン氏が自伝や講演、メディアとのインタビューで語ってきた逸話だ。
ミシガン州デトロイト生まれのカーソン氏が高校生だった1968年4月4日、公民権運動家のキング牧師が暗殺され、カーソン氏の高校では翌日、黒人生徒が怒りを爆発させ、白人生徒を標的にしたという。
事件の際、カーソン氏は「数人の白人学生を生物学研究室にかくまい守った」と米紙ウォールストリート・ジャーナルに語った。だが、同紙が当時の教師や同級生に取材したところ、かくまったという事実は確認できず、カーソン氏自身も白人学生の名前を誰一人思い出すことができなかったとしている。
「奨学金疑惑」も追及の的だ。事件の翌69年、カーソン氏は陸軍士官学校から奨学金提供の申し出を受けたものの、「軍事のキャリアは望んでいない」と断ったと書いている。
進学したのは名門エール大学。複数の米メディアは「陸軍士官学校には奨学金制度がなく、全士官候補生に対し無料であり、奨学金の申し出があるはずがない」と疑問を呈している。
また、カーソン氏は貧しい家庭で育った少年時代のエピソードとして、とある少年の腹を刺そうとするなど「不安定でキレやすい性格だった。幸いなことに、私の人生は変わった」とアピールしている。
だが、CNNテレビは「子供のころのカーソン氏を知る人で、問題がある少年だったという記憶をもっている人は誰もいなかった。今と同じように穏やかな語り口で、勉強熱心なカーソン氏を覚えている」と疑問を投げかけている。
一方、カーソン氏は「メディアや他の候補者は自分のあら探しをしている。目的は国民と私の気を散らすことだ」と反論している。
http://www.sankei.com/world/news/151110/wor1511100025-n1.html
2015年11月10日 Newsweekjapan
1位がトランプ候補で24.8%、2位はカーソン候補の24.4%と、トップの「政界の素人」2人がほぼ拮抗。これに3位のルビオ候補(11.8%)、4位のクルーズ候補(9.6%)が続いています。ジェブはその下で、現在の党内での支持率は6.0%と完全に低迷しています。
全国平均だけでなく、年明け2月に予備選と党員集会のあるアイオワ州とニューハンプシャー州でも同様に「ヒト桁の5位」となっています。このままの数字であれば、かなりの確率で撤退に追い込まれる、そんな状況となってきました。
ジェブがここまで苦戦するのは、もちろん「トランプ旋風+カーソン人気」をもたらした「既成の政治家への不信感」というトレンドが、もろに逆風になったということがあります。
ですが、それ以上に足を引っ張ったのは「ブッシュ」という名前でした。そのためにジェブは、選挙運動のキャンペーン・ロゴとして「Bush」の4文字のない「Jeb!」という表現で押し通しているのです。ではジェブ候補は、どうして「Bush」の4文字を「隠さなくては」ならなかったのでしょうか?
一つには、父と兄が大統領であったことで「ブッシュ・ダイナスティ(王朝)」になるという批判をおそれたことがあると思われます。ですが、これは隠してもどうしようもないことですし、場合によっては保守中道のグループには安心感や信頼感を与えるという効果もゼロではないでしょう。
問題は「ブッシュ(父)」ではなく、「ジョージ(兄)」です。要するに9・11のテロを受けてアフガニスタン戦争、そしてイラク戦争へと自身の判断で2つの大きな戦争を起こした兄の存在が問題なのです。「Bush」の4文字を見ると、兄ジョージの8年間、そして2つの戦争に疲弊した時代のことを思い起こす人が多いからです。
仮にそうした路線で行くのであれば、「Jeb!」のロゴを使いながら、イラク戦争を遂行した兄とは全く異なる政策、キャラクターであることを売り込んでいけば良かったはずです。ですが、その主張が強すぎると、今度は「兄のジョージのレガシー(遺産)を軽んじた」として、共和党の中の根強い「草の根保守」の離反を受けることになります。
この点に関して、ジェブは結局その態度が定まっていない印象を与えてしまいました。一度は「兄のように自分もイラクに侵攻したかもしれない」という言い方で、兄と兄の支持層を「立てて」おきながら、別の機会には「イラク戦争には問題がある」というようなことを言って「どっちつかず」という評価がされたのです。
そのように腰が定まらないことで、ジェブは「本当は相当に中道なのに、兄に遠慮して保守にも気を遣っている」という「スッキリしない」イメージを与えてしまうことになったのです。
そこへさらに妙な事件が起きました。「ブッシュ(父)」について、本人が公式に認めた評伝が出版されるのですが、その中で父は「ジョージ(兄)の2人の側近」すなわち、ディック・チェイニー前副大統領と、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官をハッキリ批判していることが分かったのです。
これには、まず保守派が怒っています。イラク戦争の口実となった「大量破壊兵器」は「存在しなかった」かもしれないし、その点でジョージ(兄)も反省していることは知られています。ですが、それでもチェイニーとラムズフェルドの遂行した戦争は、9・11直後の危険な状況の中では「仕方がなかった」という考え方が今でも保守派の中にはあります。そして、当時のブッシュ(父)はそれを黙認していたのに、今になって批判するのはどういうことか、というわけです。
もっともブッシュ(父)の支持者からすれば、2006年の中間選挙で世論から最終的に「イラク戦争へのノー」が突きつけられた際、ブッシュ(父)とベイカー元国務長官の人脈に連なるロバート・ゲーツ国防長官が登板してラムズフェルド路線を否定したのは既に歴史的事実であるし、そのブッシュ(父)がチェイニー=ラムズフェルド路線を批判するのは自然という受け止め方が可能でしょう。
そして、ご本人のブッシュ(父)とすれば、1991年の第一次湾岸戦争の当時、シュワルツコフ司令官、コリン・パウエル統合参謀本部議長の助言により、バグダット侵攻を行わずにサダム・フセイン政権の継続を黙認した判断を、自身の人生の総決算期となる現在、やはり正当な判断だったとしたいというのは理解出来るわけです。
そうだとしても、結果的にこの「父の評伝」によって、ブッシュ家のイメージはあらためて分裂してしまいました。もっとも、ジョージ(兄)自身はイラク戦争については反省姿勢を見せているので、一家で別に不一致があるわけではありません。ですが、それでも保守層には「ブッシュ(父)のチェイニー、ラムズフェルド批判」というのは腹の立つエピソードなのです。
この「父の評伝」は、ジェブにさらにマイナスの一撃を与えつつあります。ブッシュ一家の憂鬱は深まるばかりです。
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2015/11/post-785.php
ドナルドに目はなく、強敵はヒスパニック票を持つマルコ
2015.10.16 高濱 賛 JB PRESS
ところがヒラリー、大統領になり得る要素をすべて備えているにもかかわらず、「好感度」では「好き」が36%、「嫌い」が55%。
「ヒラリーはなぜ好かれないのか」「なぜ嫌われているのか」――。
9月末に出た本書「Unlikeable: The Problem with Hillary」(「ヒラリーが好かれない、これだけの理由」)はそれにずばり答えたセンセーショナルな1冊だ。
世界中を駆け巡ったヒラリーの「TPP反対」発言
米メディアは共和党大統領候補で不動産王のドナルド・トランプばかり追いかけているが、「誰もトランプが共和党大統領候補に指名されるとは思っていない」(共和党選挙担当者の1人)。
一方米各紙が民主党サイドで書き立てているのは、彗星のごとく現れた自称民主社会主義者の上院議員、バーニー・サンダース。党内切ってのリベラル派。大学生など若者を中心に根強い人気がある。もう1人は名実ともに本命視されるヒラリー。
その1例は、10月7日には、オバマ大統領が政治生命を賭けて実現を目指し、5年の歳月を経て、やっと合意に漕ぎつけたTPP(環太平洋経済連携協定)にヒラリーが反対した発言だ。
米国の次期政権はTPPを破棄するかもしれない――といったニュースが世界中を駆け巡った。
下降気味の支持率を上げるために、TPPに反対している民主党の基盤である労働組合や中西部の民主党票田に秋波を送ったという説がもっぱらだ。が、オバマ大統領に反旗を翻すことでバイデン副大統領の大統領選出馬を牽制したとの見方も出ている。
いずれにせよ、これを見てもヒラリー・クリントンの影響力の凄さが分かるというものだ。
ヒラリーの弱点は「人柄」「秘密主義」そして「高齢」
支持率は高くても、好感度の低いヒラリー候補。その理由は3つある。
「笑っていても目は笑っていない」という冷ややかさだ。「頭は良いが、どことなくお高い、人間味に欠ける」(米主要紙編集長)
2つ目はその「秘密主義」。子供の頃からの家庭環境も影響しているのだろう。秘密主義はそうした生活環境が作り出したのだろう。人を信用しない。
そして3番目は高齢であること。今年10月26日には68歳。2017年2月に大統領に就任するときには69歳。ちょうど米大統領としては最高齢だったロナルド・レーガン第40代大統領と同い年ということになる。高齢大統領には常に健康問題がつきものだ。
民主党嫌いの著者がすっぱ抜く「極度の不眠症に悩むヒラリー」
本書の著者エドワード・クラインは、政治家にとっては「聖域」とも言うべき健康状態に言及しているのだ。
「ヒラリーは通常から激しい頭痛もち。そのため極度の不眠症にかかっている」
クラインは徹底した民主党嫌い。これまでにもヒラリーに関するネガティブな本をはじめケネディ家の内情をすっぱ抜いた本11冊がある。
2014年には「Blood Feud: The Clintons vs. the Obamas」(血の復讐:クリントン家対オバマ家)で、「ヒラリーには脳卒中を引き起こす可能性のある血栓が頭蓋骨と脳の間にある」と暴露している。今回はその続報である。
もっとも、保守派コラムニストの間には著者が次々と暴露する「真相」について、その信憑性を疑うもの出ている。情報源がすべて「信頼すべき内部通報者」だからだ。超保守派のラジオ・トークショーのラッシュ・リンボーなどもその1人だ。
ヒラリーからケネディ大使へのアドバイス
いずれにせよ、クラインが本書で明らかにしているいくつかの「事実」を以下列挙しておこう。
●ヒラリーとバレリー・ジャレット大統領上級顧問とは犬猿の仲。ヒラリーの公私混同メール事件やクリントン財団が外国政府から得ているという違法行為など一連の真相をリークしているのはジャレットだ。それをオバマは許可している。
●ヒラリーは駐日米大使に指名されたカロライン・ケネディに対し、こう助言をしている。
「オバマ政権の重要外交案件はすべてホワイトハウスが決定しているのよ。遠い東京に赴任しても、バレリーの息遣いをあなたは首筋に感じるはず。東京でアメリカという国を代表してどう働くか、訓令を出すのは国務省などではなく、あの女よ。その点に関してあの女は遠慮など一切しないわよ」
●ベンガジの米総領事館襲撃事件の隠蔽工作はヒラリーだけでなく、オバマによるものだ。ヒラリーの民主党大統領候補指名が危うくなるようになれば、ヒラリーはその全容を暴露し、オバマ政権のレガシー(遺産)を一瞬のうちに粉砕することも考えられる。
●民主党大統領候補に指名されたヒラリーが本選挙で最も恐れる共和党候補は誰か。元大統領のビル・クリントンは少人数の夕食会の席上、こう述べている。
「一番怖いのはマルコ・ルビオ(上院議員、フロリダ州)だ。若いし(44歳)、ヒスパニック票を民主党からかっさらう可能性がある」
現に各種世論調査で両者が本選挙で激突した場合、ヒラリーは45.3%、ルビオは44.0%と肉薄している。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45002
マルコ・ルビオ