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イエメンプロジェクト(2) プラント起工式

   

プラント起工式 住民の踊り

 

11月のある晴れた日、プラント建設地のアムランの会場は近くの村の住民達で溢れていた。起工式の日だ。起工式とは工事着工前に行うセレモニーのことだ。式場中央にはイエメンと日本の国旗が掲揚され、その両側に大型建設機械が並んでムードを盛り上げている。

輪になった人だかりの中から突然太鼓が鳴り始めた。そのリズミックな響きに合わせ、中の二人の男が踊りだした。なかなか軽快なステップだ。腰に差しているのはザンビアといって、刀の装飾品。男のステータスだ。ふと近くを見ると子牛が一頭。その傍らで2、3人の男が牛の頭を撫でている。今日の「いけにえ」 か・・とピンときた。子牛は今日限りの命とも知らずじっとしている。

出席の要人たちが全員集まった頃、もうもうと砂塵をあげ7、8台の車の列がこちらに向かってやって来た。副大統領の到着だ。降り立ったその風貌はいかにも歴戦の強者といった精悍な感じ。式場の黒山の人だかりの周辺では銃を肩にした兵士がものものしく警備にあたっている。

セレモニーが始まった。まずコーランの朗読。朗々とした声が空に響き渡る。続いて副大統領のスピーチ。そしてイエメンの経済省次官、我が社の副社長、日本大使、アムランの村長などの要人達と続く。最後は小学生の男の子だ。元気に溢れ澄んだ声が心地よい。何と言ったのかとそばにいたアラビア語に堪能な現地商社員に聞くと 「アムランの地がこのセメントプラント中心に発展していくこと、そして政府関係者や今日の出席者に感謝する」とのことだった。

テープカット、鍬入れなどが続き一連の行事は無事終了した。式が終わると同時に副大統領の車の隊列は来た時と同じように、砂塵を上げて一瞬のうちに消えていった。身辺護衛のためだろうがその素早さは見事というしかない。

式が終わってみると、いけにえの牛は既に解体されていた。コーランの朗読中に殺されたらしい。耳をピンと後ろにし、うつろな目を開いて首から上だけが残り、あとはきれいに食用として分割されていた。アムランの住人たちに分け与えられ食用に供されるという。そばの地面血痕の跡。それにしてもイスラムのいけにえの考えは残酷としかいいようがない。ちなみにこのいけにえの代金は日本円にして10万円(当時)位とのことで現地の人達にとっては相当な額だ。(イエメンプロジェクト(3)に続く

 

過去のイエメンプロジェクトのブログはこちらより

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