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イエメンプロジェクト(5)パリ出張・打合せ②

     

         粉砕機の外筒を三分割して輸送

 

パリ出張での楽しみは苦みのきいた濃いコーヒーだ。ホテルの朝食後の一杯は打合せに出かける前の気持ちを引き締めてくれる。モンパルナスにあるコンサルタントの会議室では、打合せ前全員揃うまで雑談で過ごす。こんな時いつものことながらスイス人のMr.M(サイトマネージャ、土建担当)はジョークを飛ばし、和やかな雰囲気にしてくれる。私もたまには言うこともある。

設計各部門の技術打ち合わせは順調に進んだが、中にはコストや工程に影響を及ぼす重要課題も幾つかあった。

一つ目は原料やセメントを細かく砕く粉砕機の輸送の問題だ。粉砕機の外筒は直径4m、長さ12mもある。当初はこれを一体で海抜2500mの山岳道路を運ぶ予定だった。しかしその後の道路調査で、このような大きくて長いものは山岳道路を曲がり切れず運べないことが判明。打開策として外筒を三分割にして運び、プラントサイトで組み立てる方法に変更することにした。この変更案にコンサルタントは疑念を持った。なぜならば粉砕機は外筒内に重い鉄の玉を充填し高速で回転するので、三分割し現地で一体にする方法は組み立ての信頼性と長期運転に耐えられるかが問題視された。このため、安全を裏付ける技術資料をコンサルタントに提示し、なんとか了解を得た。但し、保証期間は1年から3年に延長させられた。

二つ目は発電設備の冷却システムの設計変更だ。プラントの電力は4基のディーゼル発電機から供給される。発電設備にはプラントに使用する工業用水とほぼ同等の水量(一日760トン)の冷却水が必要だ。住民用井戸ポンプの水脈は10m。この水脈に影響が出ないよう200mの水脈からプラント用の水を汲み上げる計画になっていた。しかし水資源にとぼしい現地事情から発電設備のために多量の水を使用することは避けるべしとイエメン政府/コンサルタントから要求が出た。このため水冷式から空気で強制的に冷やす空冷式に設計変更することになった。

ステージの中盤から後半にかけては予備品、客先エンジニアの教育・訓練、プラント引き渡し手順、引き渡し後の客先のプラント組織などの打合せを行った。プロジェクトの遂行上、コストと工程の管理はプロジェクトマネージャー(PM)の重要な役割だ。打ち合わせの過程でこれらにかかわる問題が発生した場合はPMの私がコンサルタントと折衝し、併せて社内調整を図った。

コンサルタントとの打ち合わせも10回を重ね終盤になってきた。プロジェクト開始当初に紛糾した原料山の開鉱工事の問題(「イエメンプロジェクト(4)七・三の勝負」参照)もすでに解決した。プラントサイトでは機器の据え付けも着々と進んでいる。(イエメンプロジェクト(5ー3)パリ出張③パリ雑感に続く

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