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秩父で新技術開発(1)

                       

秩父 武甲山     

                     

開発の試験装置

武甲山のふもとにある秩父は生涯忘れることは出来ない。この地で、地元のセメント会社と私の勤務先の会社とが共同で、セメントの新しい製造技術の開発をおこなった。この技術は従来の装置に特殊な炉を組み込み、セメントの生産能力を現在の一日当たり1,000トンから2倍の2,000トンに引き上げることを目的としたものである。

試験運転は途中まで比較的順調に進んだ。しかし生産量を上げるにつれ、炉の入口がセメントの原料で閉塞し運転が出来なくなった。新しいシステムが故の未知の現象である。閉塞物質を除去しながら、原因究明のための運転が続けられた。試行錯誤を繰り返していくうち、ようやく閉塞の原因が分かってきた。

炉の入口にはキルン(セメント原料を高温加熱する回転体)からの高温ガスと、炉の燃焼用高温空気が合流して入る。キルンからの高温ガス中にはセメントの原料が、高温空気中にはクリンカ微粒子(セメントの中間生成物)が浮遊、混入しており、これらが炉の入口で合流する。この二つの物質がが混じり合い硬い生成物(コーチング)を作り炉を閉塞させるのだ。生産量を上げていくとクリンカー微粒子が増え、コーチングの生成を促進させることが分かった。対策としてはクリンカー微粒子を極力少なくすることだ。直ちに装置の改造が行われた。

運転を再開したところ改造の効果はすぐに表れ始めた。そのころ私は秩父のセメント会社と勤め先の会社とを行ったり来たりしていた。その日はたまたま勤め先の会社にいた時だった。セメント会社の責任者の一人Iさんから電話が入った。「〇〇さん、2000トン行ったよ!」目標達成の連絡、感激の瞬間だ。思わず目がうるむ。この開発成功は直ちに新聞各社(日刊工業、日本工業、日経、朝日)が取り上げ報じた。その後この新しいセメント製造技術は国内外に採用されていった。そして私の仕事の世界展開への道を与えてくれた。(秩父で新技術開発(2)に続く

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