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源義経黄金伝説■第57回★1189年 文治5年平泉王国の焼け跡を馬で見回る二人の姿があった。 源頼朝と大江広元である。西行に渡した銀作りの猫の像を発見する。

2022年02月25日 | 源義経黄金伝説(2022年版)
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと
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源義経黄金伝説■第57回★1189年 文治5年平泉王国の焼け跡を馬で見回る二人の姿があった。 源頼朝と大江広元である。西行に渡した銀作りの猫の像を発見する。
 

●前説ー

太陽の光を受けて、頼朝の眼をいる輝きが焼け跡にあった。

これは…。

頼朝は、その土を触ってみた。何かが土中から姿を現す。

それは、猛火にも拘わらず、溶け掛けた銀作りの猫の像だった。見覚えがあった。

「大殿様、その像は…」

 広元が不審な顔をしている頼朝に尋ねた。頼朝は3年前の、鎌倉での西行法師の顔と話を思い起こしていた。

「西行め、こんなところに…、やはり」

 頼朝は悔しげに呟いている。

●前説ー

源義経黄金伝説■第57回★

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■ 1189年文治5年 平泉王国 

 

 平泉王国の焼け跡を馬で見回る二人の姿があった。

源頼朝と大江広元である。

 

 文治五年(一一九六)八月二二日、頼朝の「奥州成敗」で、実質上日本統一がなったといえる。大和朝廷の成立後も奥州は異国であり、異国であり続けた。

 

 二人は、中尊寺のところに来ていた。この寺跡は焼け残っている。見上げる頼朝は、感動していた。

「おお、広元、この平泉王国の富、さすがというべきか」

「ははっ、聞きしに勝る都城でございます」

 

 西行がいった通りだと頼朝は考えていた。

平泉は仏教王国だった。

 

なにしろ、源頼朝は、伊豆に流されて以来、毎日毎日読経ばかりだったのである。心根に仏教教典が染み付いている。空で経文がいくらでもいえるのだ。

 奥州藤原氏に対するやっかみの心が、頼朝に擡げてきた。

 

(こやつら奥州藤原氏にだけは、負けたくない。私が日本の統一者だからだ。

私が日本一の武者の大将なのだ。それならば、私の町鎌倉にもこのような寺が必要だ。)

 

「このような寺を鎌倉に作るのじゃ。鎌倉が、都や平泉に劣ることあれば、われらが坂東武者、源氏の恥じぞ。この平泉におる職人共をすべて鎌倉に連れ帰り、寺を建てるのじゃ」

「心得ました。この平泉にある寺の縁起、すべて書き出し、我が手に提出致しますよう命じてございます」

 

 頼朝の願いどおり『鎌倉には、平泉の寺院を模倣した寺が建てられた』が、

それは平泉には及ばない。所詮は、平泉の寺院のコピーでしかないのだ。コピーは本物をこえることはできない。

 

 やがて、頼朝は、目下気になっていることを聞いた。

「泰衡が弟、忠衡、発見できぬか」

「いまだ発見できませぬ」広元は残念そうに答えた。

「ええい、忠衡がおらねば、黄金の秘密一切わからぬとは」

 

 古代東北の地、中でも気仙地方は、世界でも最大級の豊かな金鉱を有していた。今出山金山、氷上山の玉山金山、雪沢金山、馬越金山、世田米の蛭子館金山などである』

 

頼朝はいらついている。

(この国を攻めたは、実は奥州黄金を手に入れることぞ。この国の王には黄金が必要なのだ、あの京都を凋落するのは黄金が一番なのだ)

「国衡も見つからぬのか」

「いまだに姿が見えませぬ」

「ええい、国衡もいないとならば、奥州の金を手に入れたことにはならぬ。されば何のための奥州征伐ぞ」

 

怒りの目で、頼朝はあちこちを見回している。その時、何かがキラリと光り頼朝の目をいた。

「あれは…」

 頼朝が、小高い台地にある焼け跡に目を移した。あきらかに何ヵ月か前の焼け跡である。

 

二人は高館の跡まで馬を走らす。

 

「この場所が、義経殿が最期を遂げた場所でございます」

 

 広元が冷静に告げていた。

「義経が死に場所か……よし、少しばかり見て行くとするか」

 その頼朝の目には、涙がにじんでいる。頼朝は馬を、その台地に乗り上げ、ゆっくりと馬から降りた。その場所から崖が北上川へと急に落ち込んでいて、東稲山も間近に見える。頼朝はその風景を見ながら思った。

 

「目の前のあの山が東稲山でございます。西行殿が愛でた桜山です」

 

(義経、なぜ私の言うことを聞かなんだ。俺は武士の世を作ろうとしたのだ。それを後白河法皇などという京都の天狗に操られよって…。我が兄の心根、わからなんだか。やはり母親の血は争えぬか)

頼朝は母常盤の血を引いていた、やさしい、さびしげな義経の顔を思い浮かべていた。

(あのばか者めが…)

 

太陽の光を受けて、頼朝の眼をいる輝きが焼け跡にあった。

 

これは…。

 

頼朝は、その土を触ってみた。何かが土中から姿を現す。

 

それは、猛火にも拘わらず、溶け掛けた銀作りの猫の像だった。見覚えがあった。

 

「大殿様、その像は…」

 広元が不審な顔をしている頼朝に尋ねた。頼朝は3年前の、鎌倉での西行法師の顔と話を思い起こしていた。

 

「西行め、こんなところに…、やはり」

 頼朝は悔しげに呟いている。

「では、その猫の像は、あのおり西行にお渡しなされたものではございますか」

「そうだ」

「やはり、西行は後白河法皇様のために…」

 

「いや、違うだろう。西行は義経を愛していたのであろう。まるで自分の子供

のようにな…」

 頼朝は遠くを思いやるようにぽつり述べた。広元はその答えに首をかしげて

いた。

 

思い出したように源頼朝が告げた。

「平泉中尊寺の寺領を安堵せよ」源頼朝は急に大江広元に命令を下していた。

 

源頼朝は信心深い性格だった。三二歳で伊豆で旗を揚げるまで、行っていたことと言えば、源氏の祖先を祭り、お経を唱えることだけだった。

まさに、日々、お経しか許されていなかった。毎日十時間の勤行は、頼朝の心に清冷な一瞬を与えていた。神、仏が見えたと思う一瞬があるのだった。この一瞬、頼朝は思索家と思えるものになっていた。

 

頼朝は、自らの行っている幕府作りが日本の歴史上、大きな転換点になるとは考えてもいる。

板東の新王、ついに平将門以上の存在になった。

 

源氏の長者が、何世紀にもわたって成敗できなかった奥州も我が手にした。

彼の考えていたのは、武家が住みやすい世の中を作ることのみであった。

 

 

■7 1189年文治5年京都

 

 京都の後白河法皇御殿にも平泉落城の知らせが届く。

 

「頼朝、ついに平泉へ入りました」

関白,藤原(九条)兼実が後白河法皇に悲しげに報告した。

 

「そうか、しかたがないのう。平泉を第二の京都にする計画潰えたか。残念だのう」

「せっかく夢を西行に託しましたが、無駄に終わりました」

「が、兼実、まだ方法はあろう」

後白河は、また、にやりとする。

 

「と、おっしゃいますと…」

 不思議そうに、兼実は問い返す。

 

(いやはや、この殿には…、裏には裏が、天下一の策謀家よのう。平泉を第二の京都にできなかったは残念だが、次なる方策は)

 

「鎌倉を第二の京都にすることだ。源氏の血が絶えさえすれば、京に願いをすることは必定。まずは頼朝を籠絡させよう。さらに頼朝が言うことを聞かぬ場合は…」

後白河法皇の目は野望に潤んでいる。

 

「いかがなさいます」

「義経が子、生きていると聞くが、誠か」

「は、どうやら、西行が手筈整えましたような」

 

「その子を使い、頼朝を握り潰せ。また、北条の方が操りやすいやもしれぬ。兼実、よいか鬼一法眼に、朕が意を伝えるのだ」

笑いながら、後白河は部屋に引き込んだ。兼実は後に残って呟く。

 

「恐ろしいお方だ」

兼実は背筋がぞくっとした。

 

20131016改訂(続く)

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