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遙かなる絆-ランナー第2回●カイロ郊外超能力者研究所が、死の天使により襲撃。一方「ロード・ランナー」走り屋、ヘルムがサイボーグ公社により誕生する。

2021年03月19日 | 遙かなる絆-ランナー
RUN遙かなる絆-ランナー●話は地球と月を結ぶ「ムーンウェイ」から始まる。ヘルムは、連邦軍「サイボーグ公社」ロードランナー。マコトは超能力者。2人は月で人類外の野望を砕く、新世界の人類の出現が始まる。
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遙かなる絆-ランナー第2回●カイロ郊外超能力者研究所が、死の天使により襲撃。一方「ロード・ランナー」走り屋、ヘルムがサイボーグ公社により誕生する。
 

遙かなる絆-ランナー第2回●

(1986年作品)地球防衛機構(EDO)シリーズ

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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第2回

 

 エジプト、カイロ郊外にある、超能力研究所が、内発爆弾によって襲撃されたのは、2027年5月のことであった。

 

 この攻撃は、超テロ集団死の天使フイダイの仕業と思われたが、詳細は不明である。

 

 現場に到着した警官達は、あたりの惨状に我が目をうたがった。

 

内発爆弾は、その爆発が内部に向かい収斂するのである。

 

爆弾が投げ込まれたのは超能力がまだ充分に発揮されていない子供達の訓練センターである。

 

 肉片が凝縮されて、ころがっている。肉片と超能力研究所内部の機械が奇妙な具合に絡み合っているのだ。

 

体育館の広さ程ある部屋に、ボーリングのボール大の肉片が数十個ころがっていた。おまけに焼けこげだ肉の匂いがした。

 

 警官の一人は、嘔吐した。その時、その警官はある.一条の光線が建物の中を照らしているのに気づいた。

 

光線のあたっている所にうごめきがあった。生き残っている子供がいたのだ。

 

 子供はまるで嬰児のように体をまるめていた。

 

 警官は急いで、その子供をだきあげ、救急車に乗せた。

 

その時、光は消えていた。

 

彼は「光は、世界最古の建築といわれるギゼーのピラミッドの方から来ていたに違いない。

 

これは大いなる神の守護である」と報告書に書かかれた。

 

 そのたった一人、助かったエスパーは、カイロ病院の特別病棟の中で、十年間眠り続けた。

 

 彼は全く成長せず、幼ない姿のままで十年間すごした。

 

意識は戻ってこなかったが、生体活動はそのまま続いていた。

 

名前は、「マコト」という。

 

彼は血液検査等の生体検査によって、日系の孤児であると判断されていた。

 

 ケロン戦役時、戦闘巡航艇が、月近くをまわっている外航植民船の残骸の中で彼マコトは発見されたのだ。

 

彼以外に生存者はなかった。

 

不思議なことに、外航植民船は、植民省のビッグコンコンピューターにはフアイルされていなかった。

 

それは2056年のことであった。そのマコトは、このエスパー研究所で育成中、事故にあったのだ。

 

 

「訃報配達人」が、リッカート家を訪れたのは、2062年8月のことであった。

 

黒い礼服を着た訃報配達人、正式名称、宇宙連邦軍軍員訃報連絡人である。

 

 モニターテレビで芝生の上を歩いて来る訃報配達人を見ていたヘルムの両親は、ひどく衝撃を受けた。

 

 「まさか、私の息子が」ヘルムの母親はその場でくずれ落ちた。父親は気丈にまだ立っていたが、その足はふるえていた。

 

 無表情な訃報配達人は、玄関に出迎えたヘルムの父親に、静かに告げた。

 

 「あなたの息子さん、地球連邦軍、『第62装甲機団装甲機兵、「ヘルム=リッカート曹長」は、2022年6月30日、土星環戦役でおなくなりになりました」

 

 ここまで聞いて、気丈だった父親は膝をくずし床にへたりこんだ。

 

「ヘルムが  」                                      ’

 

非常にも訃報配達人は、言葉を続けた。

 

「リッカートさん、しっかりして下さい。まだ話の続きがあるのです。軍団付属の医療船が、リッカート曹長の肉体の「一部」を収集したのです。我々のライフサイエンスを使って、彼を蘇生させることはできます」

 

 「お願いします。どうかヘルムを生き返らして」

 

 母親が、部屋から飛びだしてきて、訃報配達人の前にひざまずいた。

 

 「が、奥さん、元通りの人間体にはできないのです」

「人間ではない」

「サイボーグにならざるをえないのです」

 「え、サイボーグ」

 

 両親はお互いの顔を見合った。サイボーグ。この時代では、サイボーグは数多く存在している。が、

 

これまではリッカート家にとっては、サイボーグなど縁のない話であった。外の嵐が急にリッカート家に襲いかかってきたのだ。

 

 ロボットのような冷たい肌。母親は生理的嫌悪感から身ぶるいをした。私の子供あのヘルムが、鋼鉄の体になるなんて!

 

 訃報配達人は母親の心を読んだようにいった。

 

「大丈夫です。奥さん、最近のライフサイエンスは進んでいます。

 

合成皮膚も、人の皮膚と比較してわからない程進んでいます。近づいてもほとんど人間と変わりありませんよ」

 

 ヘルムの両親は相談し、サイボーグ手術をヘルムに受けさせることにした。

 

「幸運だったのは、ヘルム曹長の脳漿が、無事に回収されたことです。もしそうでなければ、我々はこういう提供をしなかったでしょう。

 

 残酷なようですが、この提案に付け加えておかなければならない事があります。

 

サイボーグの手術には、莫大な金を必要とします,この金額は失礼ながら、一家の財産ではあがなえません」

 

「と、いいますと、ヘルムの体は」

 

「そうです。お分かりかもしれませんが、ヘルム曹長の体は、連邦軍「サイボーグ公社」の所有物となります。

 

彼がサイボーグとして仕事。ミッションを遂行する毎にそれに相応する金額が支払われ、それが手術料金に相当した時、晴れて自由の身になれるのです。

 

どんなタイプのサイボーグになるかによって、後々の給与が異なり、それだけ自由の身になるのも早くなるのです。

 

サイボーグのタイプは数千種類あります。このメニューから選んで下さい」

 

 両親はしぶしぶながら、その差し出されたデイスプレイ「メニュー」表から、タイプを選び、サイボーグ公社への契約書にサインをした。

 

この時に、「ロード・ランナー」走り屋、ヘルムは誕生した。 

 

(続く)20200227改定

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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