日本人の日序章 第13回
作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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二〇五四年 四月 アルプス要塞 JVO日本消滅組織 議室
「諸君、ごくろうだ。このド=ヴァリエ将軍は私の個人的な友人だ
が、JVOの特別顧問として来てもらった」
「ド=ヴァリエです。よろしく」
ラインハルトがつけ加えた。
「ちなみにこのアルプス要塞はド=ヴァリエ将軍のプランによって
作られたのです。この意見を具申した時、時のフランス政府とNA
TO軍は、ド=ヴァリエを気の狂った妄想者と呼び、ド=ヴァリエ
から軍籍を剥奪したのです。しかし、彼は私の協力を得て、このす
ばらしいアルプス要塞を作りあげることができました」
拍手の嵐がド=ヴァリエ将軍の耳菜に響いてきた。続いて拍手が納っ
たあと、ラインハルトが発言する。
「さて、諸君、各地における対日本人作戦の状態をきこうか」
まず上背が2m近くあるアメリカのテイラーが発表した。
「御存じの通り、我がアメリカ軍はソ連軍と合同作戦を取り、東京
エアボーン作戦を強襲した事は皆さん御存じの事だと思います」
会場に再び、拍手の嵐がおこる。テイラーは上気して続けた。
「以後。アメリカ軍占領地区では組織的な日本人の抹殺プランが順
調に進んでおります。日本人の所有していたハイテク技術工場はア
メリカ軍とソ連軍の合同部隊が接取し、地球連邦の繁栄に寄与する
予定です」
続いてソ連のマガロフが発言した。
「我々は、日本人の知力と体力をかい、希望者をニイガタからホー
バークラフト船に乗せ、シベリアへ運んでいる。彼らの同朋愛的な、
自発的な労働は、我々ソビエト連邦の国家英雄的行為として高く評
価されるであろう」
「いまだに20世紀から進歩しとらんな奴らは」
ド=ヴァリエはかたわらにいるラインハルトに小さな声で言った。
「しかたがあるまい。軍事動員数だけは偉大だからな」
次々と各国占領軍の発言が続いている。
「イスラム圈の人間の姿が見えないが」
ラインハルトがアメリカINSファーガソンに言った。
「彼らはいまだにコーランの精神にのっとりラマダンに入っており、
出席できないとのことです」フ″Iガソンが困った顔で言う。
「困った奴らだ」
「心情的に、彼らにとって昔、石油がビッグエネルギーであった時
期、日本人はいいお客さんでしたからね」
「どうもキリスト教徒でない奴らの考え方はわからん」
ライン(ルトは小さな声で言ったつもりだったが、耳ざといアジ
ア。アフリカの代表の驚きの声が拡がっていく。
異様な雰囲気になってきた。
「議長に質問する。JVOはキリスト教の新たな十字軍かね。さら
に白人の利益追求集団なのかね。我々、中国も、二千年にわたる関
係をふりきって、あなた方JVOに参加し、日本人抹殺計画に加わ
っていることを考慮していただきたい」
中国代表の陳勝であった。
韓国代表のイーユンボギが続けた。
「諸君らも御存知の通り。我が大韓民国も日本とは深い因縁があり、
在日韓国人の数が多い。我々は在日韓国人の保護を目的として出兵
しているが、他国軍隊が、我が同朋、韓国人を日本人と間違いいわ
れなく暴力行為。あ&いは殺人事件すらも発生している。私はこの
JVO本部の会議の場をかりて、この件を厳重に抗議しておきたい」
インド代表チャンギがイーユンボギの発言を制した。
「しかし、現場のうわさによると、君達韓国人は、日本人の技術者
に秘密裡に韓国国籍を与えていると聞くが」
「そんな根も葉もないうわさをどこからしいれたのかね。先刻もい
っただろう。日本には在日韓国人が多いと。そういう君達も日本に
印商が多いはずだ。インド人の友人の日本人のために亡命日本人村
を作ったと聞いたぞ。確かネパール国境近くに」
インド代表が反論する。
「そんな事はありえない。我々よりもインドネシアやフィリピンの
方が危ない。彼らは多数の無人島を所有しているので、一つの孤島
を日本人達に与えたと聞くぞ。「イテクアイランドを作りあげ、自
国の発展に役に立たせようとしている」
インドネシア代表ヒランボが続ける。
「そんな事を言いだせば、日系人の多い中南米諸国はどうなるのか
ね」
ブラジル代表ファランヘが答える。
「ゆえなき中傷だ。確かに我が国には日系人が多い。しかし6月1
日を機して、それ以降の帰化申請は却下している」
インドネシア代表が反論した。
「が、我々はアマゾン奥地に、日本人特別市ができていると聞いて
いる」
お互いが、ののしりあいを始めた。収拾がつかない状態になる。
「我々はパートナーの選択をあやまったのかもしれんな。ド=ヴ″
リエ」
ド=ヴァリエ将軍もラインハルトに耳うちする。
「やはり、頼りになるのはヨーロッパ人、アメリカ人だけかもしれん」
「ま、そんな事は百も承知だったがね。ド=ヴァリエ将軍」
日本人の日序章 第13回(1980年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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