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古今東西のアートのお話をしよう

小説 夏物語 川上未映子



2019年7月 発刊

あらすじは、文庫版ブックカバー
より

『大阪の下町で生まれ小説家を目指 し上京した夏子。 38歳の頃、 自分 の子どもに会いたいと思い始め る。子どもを産むこと、 持つこと への周囲の様々な声。 そんな中、 精子提供で生まれ、 本当の父を探 す逢沢と出会い心を寄せていく。 生命の意味をめぐる真摯な問いを 切ない詩情と泣き笑いの筆致で描 く、全世界が認める至高の物語。』

「ヘブン」2009年「すべて真夜中の恋人たち」2011年「夏物語」2019年と話題作を読んでみた。

川上未映子の小説は、詩人が書く小説のイメージだったが、「夏物語」はそのイメージを大きく裏切り、関西弁を入れた文体は、谷崎潤一郎の「細雪」下巻を思わせ、先に先に進ませるリズムがあり、ラディカルなテーマにも関わらず、読むことに快感を覚えた。

男と女、親と子、人間の生殖に切り込む物語は、カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」にも通じる。

舞台は、第一部(2008年夏)と第二部(2016年夏〜2019夏)で構成される。
第一部は、作者の芥川賞作品「乳と卵」を下敷きにして、大阪の下町で姉巻子とその娘緑子を中心に妹夏子が絡み、第二部は小説家を目指して上京し、小説を一冊発刊した30代半ばになった夏子の物語。

38歳になった夏子は、子どもを持つことにとり憑かれる。
しかし、夏子は長くセカンドバージンであり、セックスには昔から嫌悪感を持っていた。
精子提供で子どもを産む(AID)という方法に行きついた。

AIDへの興味から、精子提供で生まれた逢沢と出会い、デートするようになる。


逢沢と一緒に見た「ナビ派」の展覧会で、二人が一番気に入った作品がヴァロットンの「ボール」だった。

フェリックス・ヴァロットン
“ボール” 1899年 

明るい広場にボールで遊ぶ少女、奥の暗い森では男女が何やら話している…


逢沢と同じく、精子提供で生まれた女性が、夏子に語る。

『子どもを生む人はさ、みんなほんとに自分のことしか考えないの。 生まれてく る子どものことを考えないの。子どものことを考えて、子どもを生んだ親なんて、この世界にひとりもいないんだよ。ねえ、すごいことだと思わない? それで、たいていの 親は、自分の子どもにだけは苦しい思いをさせないように、どんな不幸からも逃れられ るように願うわけでしょう。でも、自分の子どもがぜったいに苦しまずにすむ唯一の方法 っていうのは、その子を存在させないことなんじゃないの。』
衝撃的文章です…


★★★★★

大げさではなく、傑作です
しかも、歴史的








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