かわいい装丁は、イラストレーターの寺田順三
二人の少女は小さいほうが小6のミーナ、となりが中1の朋子
小川洋子は1989年8月、長男を出産
1991年1月『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞
2002年3月、夫の転勤のために兵庫県芦屋市に転居
2004年『博士の愛した数式』で家政婦の母子と老博士を描く
2006年『ミーナの行進』
『ミーナの行進』は岡山の母子家庭に育った”朋子“が、母の姉妹が嫁いだ芦屋の洋館に寄寓した1年を、大人になった“朋子”が回想する物語
「美しくて、 かよわくて、本を愛したミーナ。 あなたとの思い出は、損なわれることがない ミュンヘンオリンピックの年に芦屋の洋館で育まれた、ふたりの少女と、家族の物語。 あたたかなイラストとともに小川洋子が贈る新たなる傑作長編小説。」文庫本背表紙より
小説には、当時の芦屋の様子が描かれている
ミーナが暮らす洋館は、ヴォーリズ建築の旧小寺敬一邸がモデル(現存しない)
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本好きのミーナ(本好きの小川洋子を代弁)を語る好きな文章
米田さんはミーナのしつけもするお手伝いさん以上の存在
『ただ一つの例外は本だった。 ミーナが読みかけの本を、サンルームのテーブルに開いた まま伏せて置いてあったとしても、 米田さんは決して勝手に片付けたりしなかった。ベージの反対側にはまだ見ぬ世界が隠されており、本はその伏せられた形によって、残りの世界に戻るための入り口を示しているのだから、無闇に触れてはならない。 ミーナが迷子にならないために。そう、米田さんは心得ていた。』
病弱のミーナに頼まれて『本』を借りた芦屋市立図書館打出分室↓
朋子が恋心を抱く図書館の受付係の青年に、川端康成の『眠れる美女』を勧められ(中1の少女が読む小説ではないが…) 感想を聞かれる
『もちろんです。確かにちょっと奇妙な本だなとは思いました。 老人の他には、眠ってい て一言も口をきかない女の人が出てくるだけですから。でも、分かりました。この老人は 死ぬ練習をしているんです。 薬で眠らされて、半分死んだも同然になっている若い娘さんのそばで一晩過ごすことは、布団の中で死と一緒に眠るのと同じです。そうやって老人は、 死ぬことになじもうとしているのです。いざその時になって、怖くて逃げ出したりしない ために・・・・・・』と朋子が感想を述べる(感想はミーナの受け売り)
訊ねた図書館の青年“とっくりさん”は、『死を恐れる老人に感情移入できる中学生がいるとは、驚いたなあ』と感心する
小川洋子の解釈なんだろうが、「なるほど!」と感じ入った次第
クリスマスには、六甲山ホテルの料理人が出張して家で作ってくれる
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ミーナが入院した甲南病院
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もう一人?重要な登場者は”ポチ子“
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見てお分かりの通り“カバ”ですが、”コビトカバ“です
『体長150〜175センチメートル。肩高75〜100センチメートル。体重180〜275キログラム。背面の体色は黒灰色で、腹面の体色は灰がかった淡黄色。』
ミーナのお父さん(伯父さん)は、地場大手清涼飲料水『フレッシィー』製造販売会社の社長
伯父さんの愛車メルセデス・ベンツの10台分の値段でアフリカのリベリアから買い入れたコビトカバ
病弱な“ミーナ”は、”ポチ子“に椅子型の鞍を付けて“ポチ子”の背に乗って、先導する”小林さん“と3人で毎日小学校に通学した
それは、象に乗るインドの姫君のようで、朋子は『ミーナの行進』と呼んだ
朋子とミーナには、それぞれに幼い恋心を向ける青年がいる…
芦屋の家族は、ミーナとスイスに留学中の兄の龍一、母親の伯母さんと父親の伯父さん、伯父さんの母親でユダヤ系ドイツ人のローザおばあさん、ローザおばあさんと双子のように仲が良い米田さん、ポチ子の世話をする小林さん、そして伯母さんの姪っ子の朋子
伯父さんはある日突然、洋館に戻ってこない日が続く、伯母さんは毎夜、アラビア風の喫煙室にこもり、趣味の誤植探しをしながら、一人で酒を飲んでいる
なぜか、家族の誰もが消えた伯父さんの事に触れない…
ミュンヘンオリンピック
男子バレー、ジャコビニ流星群と
幼い恋の行方と伯父さんの謎が
交差する…
★★★★★
小川洋子のちょっぴり毒のある
ユーモアとストーリーテラー
ぶりが味わえる、かわいい小説
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