NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ (Wiron)

新潟で生じている野生鳥獣の問題を解決し、野生動物と人間が共存できる社会を目指して活動します。

10月14日南魚沼第二回研修会報告

2012-11-14 12:14:16 | イベント・研修報告
平成24 年度サル、クマ等と共存できる地域づくりモデル事業

「サル捕獲技術研修会」と「集落環境診断予備調査研修会」

主催:新潟県南魚沼地域振興局、南魚沼市 企画:新潟ワイルドライフリサーチ


を平成24年10月14日(日)10:00~

船ヶ沢新田高齢者婦人活動施設「かけはし」

にて開催致しました。

本研修会は平成24 年度サル、クマ等と共存できる地域づくりモデル事業の第二回目の研修会です。

捕獲研修会趣旨

サルは無計画に捕獲すると群が分裂する危険性があるため、捕獲した個体の性別を識別し、計画的な群の管理を行っていく必要がありますが、この場合の捕獲手段として箱罠が多く用いられています。また、サルの個体管理には、VHF発信器を用いた行動調査のデータが欠かせませんが、発信器を装着するにはサルを箱罠で捕獲する必要があります。そこで、南魚沼市におけるサルの捕獲技術の向上を目的として、サルの捕獲の経験が豊富な猟友会新発田支部の荒井俊明氏を講師としてお招きし、新発田におけるサルの捕獲体制や箱罠による捕獲技術を学ぶ研修を企画しました。

集落環境診断予備調査研修会趣旨

野生動物が集落に出没するのは、集落内に動物を誘引する餌があるからです。したがって、野生鳥獣被害対策には、集落の環境整備が欠かせません。集落の環境整備を地元住民が主体となって実施するための合意形成手法として集落環境診断という技術が確立されています。
 11月3日に船ヶ沢新田地区において実施する予定の集落環境診断の前に、行政担当者、集落のリーダーなどの関係者で事前の予備調査を行うことを企画しました。

日 程
10:00~   受付開始(於:かけはし)
10:15~  新発田市におけるサル捕獲体制について
10:45~   現地指導
 13:15~   集落環境診断の進め方について
 14:00~   集落環境調査
 15:30~   集落環境診断ワークショップ
 17:30~   まとめ     


まずサルの捕獲研修会です。
新発田でサルの学術捕獲とテレメトリー調査を担当されてる猟友会新発田支部の荒井様を講師としてお迎えしました。



荒井様より新発田市におけるサルの捕獲体制について講義をいただいたあと、
実際に新発田市で荒井様がお使いになっている捕獲檻を持参頂き、
捕獲の仕方、捕獲後の保定の仕方など、細かな技術について御説明頂きました。



参加者からは熱心な質問が飛び、経験の豊富な荒井様が一つ一つ丁寧に答えて下さり、
非常に有意義な研修会となりました。


午後からは、集落環境診断予備調査研修会を行いました。

山本の方から、集落環境診断とは何か?どのように進めるのかについて
説明をし、その後、南魚沼市船ヶ沢新田の現地をまわって集落環境調査
を実施しました。



その後、再びかけはしに戻り、集落環境調査で作成した情報から集落の地図を
作成し、その地図を見ながら、この集落で最も効果の高い鳥獣被害対策について
4つほど選んで対策を考える集落環境診断を実施しました。



現地研修の様子。


船ヶ沢新田は、市と県の事業で、H23年に山際のクルミ、桑などの果樹の伐採、
見通しの悪い杉林の強度間伐を実施し、サルの出没件数が激減した実績をお持ちです。



伐採した見通しの良い林縁にたつ高橋会長(船ヶ沢新田自然融和会)。



杉林も強度間伐をいれたため、見通しがよく、サルやクマが隠れる隙がない。

林縁の畑には電気柵が設置されている。



電気柵の下草による漏電を防ぐために長岡技術科学大学とファームエイジ株式会社、港屋株式会社が共同開発中の導電性のある防草シートの実施試験を行っている。



戻ってきて地図作製をしている様子。



最後に、集落環境診断の結果を発表して頂きました。




今回は、11月3日に行われる本調査の前に
関係者や行政担当者の方が行った予備調査でしたが、
みなさんとても熱心に取り組まれ、非常に良い研修会でした。

南魚沼地域振興局の県のHPにも研修会の報告がありますので、
併せて御覧下さい。

http://www.pref.niigata.lg.jp/minamiuonuma_kenkou/1350856930029.html


文責 山本麻希












7月16日南魚沼第1回研修会

2012-11-14 11:32:13 | イベント・研修報告
平成24 年度サル、クマ等と共存できる地域づくりモデル事業

「集落で取り組むサル、クマ被害対策 研修会」

主催:新潟県南魚沼地域振興局、南魚沼市 企画:新潟ワイルドライフリサーチ

を平成24 年7月16日(月) 祝日

に八海山麓サイクリングターミナル (http://www.yo.rim.or.jp/~sanroku/)

にて開催しました。

開催要領のチラシは以下の通り(クリックすると画像が拡大します。)




こちらの事業は、本年度、南魚沼市と南魚沼地域振興局からワイロンが委託を受け
実施するモデル事業の記念すべき第一回目の研修会となります。

本研修会の趣旨

南魚沼市は豊かな森林とその水の恵みで日本一のコシヒカリを生産す
る地域ですが、一方で、野生鳥獣による農業被害という深刻な問題を
抱えています。新潟県における農業被害額がNo.1 のサル、そして、ブナ
等の堅果類が凶作になると大量出没するクマ。どちらも日本の在来種
であるため、彼らと共存しながらも、そこで生活する住民の安全を守り、
農業被害をなくさなくてはなりません。近年、中山間地の過疎、高齢化
が進み、野生動物の対策を実施する労働力の確保が困難となっていま
す。また、猟友会の会員数の減少、高齢化もあり、捕獲だけで被害を減
少させることは不可能です。荒廃する里山を目の前に、今後、野生動物
とどのように共存していくべきか、専門家による講演とサルによる農業被
害を減らすことに集落で取り組んでいる船ヶ沢新田地区の事例を交えな
がら、みなさんでこの問題について考えてみたいと思っています。

研修会の日程

12:30~ 受付開始

13:00~ 開会挨拶

13:10~14:10
   長野県北信地方におけるツキノワグマの保護管理と被害防除の現状
   後藤 光章 (BSCN代表)

14:15~15:15
   集落で取り組むサルの被害対策
   山本 麻希 (長岡技術科学大学助教・ワイロン会長)

15:15~15:30 質疑応答

15:30~15:40 休憩

15:40~16:10
   船ヶ沢新田におけるサル対策の取り組み
   高橋 富美男 (船ヶ沢新田自然融和会代表)

16:10~17:00
   総合討議「南魚沼市における効果的な野生鳥獣対策に向けて」


研修会報告

当日は、参加人数が多く、当初サイクリングターミナルの研修会で実施する予定が、
急遽、隣に併設している体育館での実施となりました。
当日は、大変な猛暑日で、体育館内は38℃近い気温であったにもかかわらず、
95名の参加者がありました。



まずは、北長野クマ専門対策員であり、自らBear Smart Community Naganoを主宰されている後藤光章様より、長野県の北信地方におけるツキノワグマの保護管理と被害防除の現状についてお話し頂きました。



クマの被害を防ぐには、クマが好きなトウモロコシや果樹などの誘因物をきちんと防除することが大切であることなど、現地での豊富な御経験に基づきお話し頂きました。

続いて山本から、サルを中心として集落で取り組む被害対策として
鳥獣の被害対策の単位である集落のみなさんの合意に基づき被害対策を行うために導入されている集落環境診断の手法についてお話しさせて頂きました。



また、南魚沼市の鳥獣被害対策のモデル地区となっている船ヶ沢新田地区で船ヶ沢自然融和会という鳥獣被害対策のための地元住民団体を設立された地域リーダーでいらっしゃる高橋富美男氏から、これまでの船ヶ沢新田における鳥獣被害対策のとり組みについてお話し頂きました。




総合討議の前に、全国山羊ネットワーク代表の今井明夫氏から里山と里の間に設置すると効果の高い緩衝帯整備にヤギを導入する事例についても急遽御紹介頂きました。



総合討論では、野生鳥獣被害対策を進める上で問題となっている狩猟者の高齢化、人口減、
そして銃刀法の規制が厳しくなったことや若者のレジャーの多様化により、若い猟友会員が増えないことなどの問題がとりあげられました。



第一回目の研修会として非常に中身の濃いものとなりました。
何より、本来のクーラーの効いた研修室では人が入りきらず、
クーラーのない体育館での実施にもかかわらず最後まで熱心に聴講いただき、
総合討論では熱心な御発言をいただいた参加者の皆様に心より御礼を申し上げます。

なお、当日の研修会については県のHPにも報告がアップされております。
こちらも是非御覧下さい。

http://www.pref.niigata.lg.jp/minamiuonuma_kenkou/1346101253971.html



文責 会長 山本 麻希