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萌えドメインなのに……ICANNが「anime.moe」の登録を禁じる理由とは

2014-08-12 19:18:31 | グルメ

 「.moe」や「.tokyo」など、日本でのニーズが比較的多そうな新gTLDの一般登録受付が7月下旬に相次いでスタートした。空いているドメイン名(文字列)を先願制(早い者順)で登録できるようになったわけだが、先に誰かに登録されてしまったわけでもないのに、登録できないドメイン名が新gTLDにはかなりの数存在しているという。

 これまで一般にはあまり大きな話題とはなっていなかったが、実はこの状況は「DNS名前衝突ブロックリスト」に起因するもので、「.moe」や「.tokyo」に限らず、他の新gTLDでも同様にありうることだ。そこで、以前から新gTLDの状況について継続的な情報提供を実施している一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)技術部の小山祐司氏、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)技術広報担当の森下泰宏氏に情報提供いただき、「DNS名前衝突ブロックリスト」の“実際のところ”を整理した。

 

「.moe」で使いたいドメイン名が登録できない!?

 今回の件が改めて注目されたのは、ある人が「.moe」のランドラッシュ(事前登録申請)時に欲しいドメイン名を申し込んだところ、拒否されたという事例が出たことによる。当初、「.moe」を管理するレジストリ事業者である株式会社インターリンクが何らかの意図を持って登録をブロックしたのではないかという疑いがかけられることとなったが、それに対する説明のために、インターリンク自身が公式ブログ上で『なぜ私が欲しい「.moe」ドメイン名を取れないの?』という記事を6月末に公開した。

株式会社インターリンクの公式ブログ記事『なぜ私が欲しい「.moe」ドメイン名を取れないの?』

 このブログ記事は、欲しいドメイン名を登録できない理由として、新gTLDにはレジストリの意思とは関係なくそれぞれ定められた「ブロックリスト」なるものが存在し、そこにリストされている文字列は登録できないようにブロックしなければいけないとされていることを説明したものだ。これから分かることは、前述の人が使いたいドメイン名を登録できなかったのはインターリンクの意思によるものではないということである。

 それによると、登録できないドメイン名には以下の3つのパターンがあるという。

  • そのドメイン名が「標準予約リスト」に載っている
  • そのドメイン名が「プレミアム予約リスト」に載っている
  • そのドメイン名が「DNS名前衝突ブロックリスト」に載っている

 まず「標準予約リスト」は、インターネットのドメイン名とIPアドレスを管理する組織であるICANNが、インターネットにおける混乱を避けるために、国名やその他の重要だと考えられる名称や略称、そして1文字と2文字のドメイン名を登録できない文字列として定めたもので、すべての新gTLDで共通のものとなっている。

 次に「プレミアム予約リスト」は、レジストリとなる組織が新gTLDの新設をICANNに申請した時点で予約したドメイン名の一覧である。このリストの内容は公開されていないが、例えば「dns」「whois」といったレジストリの機能を果たす上で重要な文字列や、商品価値が高くなる(=後で高額で販売できる)と考えられる文字列が入っているものと思われる。

 「標準予約リスト」および「プレミアム予約リスト」に含まれるドメイン名が登録をブロックされるのは納得できるし、妥当性もある。しかしながら、最後の「DNS名前衝突ブロックリスト」は、新gTLDプログラムが始まった当初は存在しなかったものなのだ。実は、今回のポイントはここにある。

 インターリンクのブログ記事中では、「.moeの名前衝突ブロックリストには約38,000件が掲載されています」「DNS名前衝突ブロックリストに掲載されているドメイン名はICANNが2006年から2013年にかけて行ったリサーチに基づいて作成され、残念ながら新gTLDレジストリが掲載されているドメイン名に関して変更を行うことはできません。ICANNにより、すべての新gTLDレジストリはリストに掲載されているドメイン名の登録をブロックすることが課せられております」といったことが書かれている(後述するが、今回の調査期間は2006年から2012年までが正しい)。

 

ブロックの背景――“名前衝突”とは

 「DNS名前衝突ブロックリスト」の説明に入る前に、まずは“名前衝突”という問題があることを理解してほしい。この問題を簡単に言ってしまうと、組織内ネットワークやキャリアサービス用の閉域網などで使われている“名前”と、インターネット上の“ドメイン名(名前)”が“衝突”することによる不具合を防ぐために出された注意喚起である(だから“名前衝突”と呼ぶ)。2013年10月以降、1300を超える新gTLDの運用が開始されることで、この問題が顕在化した。

 余談めくが、“ドメイン名”はインターネットのみに存在するとされる。組織内ネットワークやキャリアサービス用の閉域網などで使われている“名前”を“ドメイン名”と呼んでしまうと、単に“ドメイン名”と言った時にそれがインターネットにおける名前であると特定できずに混乱する人が現れるかもしれないからだ。しかし、その使い分けを厳密に行うと分かりづらいと感じるかもしれない。そのため、本記事中では以降、インターネットにおけるドメイン名と、こうした内部用で使われる名前(ドメイン名)を総称して単に“名前”と表記することにする。

 名前衝突という問題は、次のように考えると分かりやすい。

 現在では、インターネットではない内部ネットワークにおいてもDNSを使用し、インターネットと同じような名前解決サービスを利用した運用が行われていることが多い。その際、例えば「.home」「.corp」といったインターネットで使われていない名前であれば、内部ネットワークの外、すなわちインターネットにその名前解決要求が漏れても、従来であれば直接的な問題にはつながりにくかった。しかし、内部ネットワークで使っていた名前が新gTLDと重なると、インターネット上に実在する名前と内部ネットワークでの利用を前提にしている名前が衝突してしまうことになる。

 この場合、名前解決要求はどちらに届くのだろうか?

 これは、他人事ではない。ICANNの調査によれば、ルートサーバーに到達する名前解決要求の件数の上位には、「.com」や「.net」といった正規のトップレベルドメイン(TLD)に続いて、「.local」「.home」「.corp」などといったインターネット上には存在しないはずの名前がランクされていることが分かっている。

 こうした内部利用向けと考えられる名前に対する名前解決要求が外部に漏れるのは、さまざまな原因が考えられる。

 すぐに思いつく原因の1つとしては、ネットワーク機器における不適切な設定が挙げられる。通常、内部ネットワークで専用の名前を使う場合には、その名前を内部に閉じた形で解決できるようにするための設定を適切に行う必要がある。しかし、その設定が十分ではない場合に、このような問題が発生する可能性がある。

 あるいは、サーチリストの不備も考えられる。サーチリストは、例えば「info」と入力すると「info.example.jp」という形に補うというように、名前を適切に補完するためのものだ。この設定が不十分であった場合、内部向けの名前を不適切に補完した形でインターネット側に名前検索をしてしまうケースがあり、これも内部の名前が外部に漏れ出す原因の1つとなりうる。

 いずれにせよ、内部ネットワークから漏れてはならないはずのやり取りが意外と外に漏れ出しているということは事実なのである。ざっと考えても、名前衝突の問題が予期しないウェブサイトへの接続や、意図しない受取人へのメール配信など、セキュリティ上の重大な問題につながる恐れがあることに対しては注意が必要だ。

“名前衝突”の仕組み(JPNICの「名前衝突(Name Collision)問題に関するサイト」より画像転載)

 名前衝突の問題は、もともとが「.home」や「.corp」などのTLDの部分に関する衝突に注目した形で注意喚起が出されているため、それを見た側もトップレベルの部分を中心として考えがちだが、実際にはそれだけではない。

 「DNS名前衝突ブロックリスト」を理解するためのポイントは、このような名前衝突はセカンドレベルにおいても起こりうるという点である。多くのgTLDでは、セカンドレベル(例えば「anime.moe」であれば「anime」の部分)に対してドメイン名登録サービスが提供されている。そのため、名前衝突を起こしている、もしくは名前衝突を起こす可能性のあるドメイン名がセカンドレベルに登録されてしまうことが登録者および利用者の不利益につながることになりうるのだ。そのために、衝突の可能性がある名前は十分な対策が取られるまでブロックする必要が出てくる。

 「DNS名前衝突ブロックリスト」は、この問題の緩和策として考え出されたものである。

 この名前衝突の問題はすでに弊誌でも記事にしているので読まれた方も多いと思われるが、まだの方はそちらを先に読むことをお勧めする。また、昨年の「Internet Week 2013」における「DNS DAY」の記事でもこの問題を紹介している。できれば、下記の記事3本もあわせて読んでいただきたい。


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