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思いつくままに

ゆく河の流れの淀みに浮かぶ「うたかた」としての生命体、
その1つに映り込んだ世界の断片を思いつくままに書きたい。

やっぱり天下っていた。

2012-06-24 00:08:54 | 随想


 前回のブログで、責任を取って退いたかに見える官吏が、実際には、別の形で既存の仕組みの中で甘い汁を吸い続けるのがこの世界だという意味のことを述べたが、6月21日付けの朝日新聞に、引責辞任したはずの東京電力の元役員たち(会長、社長、副社長、常務、取締役、監査役)が、ちゃっかりと別の会社の社長や社外取締役、監査役などに天下って収入を得ていることが暴露されていた。東京電力の役員は官吏ではないが、完全な独占企業であり、責任を取る動機付けとなるような圧力(彼らにとって国民の怒りは気にならないようだ)をもたないという意味で官吏と同じようなものである。

 また、同じ日の別の記事によれば、東京電力の社内に設けた事故調査委員会の最終報告が公表され、今回の事故の主な原因は想定を超える津波に襲われたことだったと結論付けているとのこと。まさに「想定内」の結果報告であり驚くに当たらない。彼らはそういう種類の人間、どんなに大変なことをしでかしても、あくまでも責任逃れをし、責任を他に転嫁する種類の人間であるということだ。だからこそ、その地位に付けたのかもしれない。

 海水注入(そうすれば廃炉にせざるを得なくなる)で炉心を冷やすことの判断が遅れたため、重大事故につながったという見方に関しては、「現場実体からかけ離れた具体的な要求が官邸の政府首脳らから直接・関節に」入り、「指揮命令系統に混乱が生じた」として、国の対応を批判し、自分たちに責任はないとしている。また、事故への対応は最善を尽くしたとも言っているとのこと。

 事故時の発電所と本店のテレビ会議のやりとりについても「社内資料で、映っている人のプライバシーが侵害される」として公開しなかったとのこと。実際にどんなやりとりをしていたかを見せることが、「事故への対応は最善を尽くした」という主張についての最も強力な証拠になるはずであるにもかかわらず、それを見せないといことは、見せると、その主張が崩れてしまうからとしか考えられない。

 さらに、同日の読者の「声」欄で、弁護士が、東京電力の歴代役員に対して起こされている株主代表訴訟に、東京電力という会社が、補助参加を申し立てていることを批判していた。補助参加というのは、民事訴訟法第42条に「訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる」と規定されているもので、訴訟の結果により、自己の権利または法律上の地位が害されるおそれがある場合に許される。この訴訟では、東京電力の歴代役員が被告であり、株主が原告である。今回の事故で東京電力の歴代役員は会社に対して多大の損害を与えたので、その損害の賠償をせよと、株主が起こしたものである。賠償額は約5兆5千億円となっている。仮に、原告が勝訴した場合、賠償金は原告が受け取るのではなく、東京電力という会社が受け取る。会社は、事故の被害者に賠償金を支払うことを約束しているが、原告が勝訴すれば、歴代役員から受け取った賠償金を、被害者への賠償金に充てることができる。原告が敗訴すれば、被害者への賠償金をまるまる会社が支払わなければならない。つまり、原告勝訴が会社にとっての利益となるのである。ここがポイントだ。

 ところが、東京電力という会社は、歴代役員の側に立って訴訟に参加したいと申し出ているのである。つまり、原告を敗訴させるために補助参加を申し出ているのである。補助参加は先に述べたように、訴訟の結果により、自己の権利または法律上の地位が害されるおそれがある場合に許される。会社が被告の側に立って補助参加をし、原告を敗訴させた場合、会社は歴代役員から損害を賠償してもらえなくなる、つまり、「自己の権利または法律上の地位が害される」わけだ。そうなるように、会社は補助参加をするわけだ。これは、明らかに補助参加の要件を満たしていない。だから、申し立てられている補助参加は認められないと思う。

 また、このような行為は、会社に対する背任行為ではないか。歴代役員には現役員も含まれる。だから、現役員は自分たちを守るために、会社の費用を使って、会社を自分たちの側に立つものとして訴訟に参加させ、会社に損害を与えようとしていることになる。これは、会社の役員による犯罪なので、加重犯としての特別背任罪(注)に相当するのではないか。

(注)特別背任罪(会社法第960条):次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
* 「次に掲げる者」に取締役や監査役などの役員が含まれる。


 いったい、東京電力の経営者たちの頭はどうなっているのだろう。ひたすら責任を回避し、自分たちの利益を守るため、なりふり構わずもがいているように見える。こういう人たちのことを日本語では下司、下郎と呼ぶのではないか。まあ、そんなことを言っても犬の遠吠えであって、下司は、下司なりにやるべきことをやっているわけで、原子力発電再稼働の決定もしたし、現実は彼らの思う方向に進んでいる。哀しいけれど、これが現在の日本という国である。国を愛するとは、こういう人たちを刑務所に入れたりして無力にすることではないのか。私はもうそれほど先は長くないが、若い人たちは何とかしないと大変なことになると思う。これもずいぶん無責任な言い方だけれど。彼らを刑務所に入れたいとがんばっている小出裕章さんには頭が下がる。

 今回は少し感情的になり過ぎたようだ。でも、普通の人間だったら、彼らのやり口を見れば腹が立つと思うのだがどうだろうか。もちろん、彼らと同じ村に住み、彼らが甘い汁を吸っているのと同じ木から、同じように甘い汁を吸っている人たちは腹など立たないとは思うが。



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