向かい側の扉がゆっくりと開き始める。
同時に、わたしは其れ迄の不動立ちから半身立ちの組手構えに切り替えた。
背筋を伸ばしたまま、
左足を前に、
右足を後ろに、
体重配分は其々に半分ずつ。
軽快な歩法フットワークや、蹴り技を出し易くする為に両足の幅スタンスは狭くする。
左手のガードは牽制の為に離し、
右手のガードは顔面を守る為に顎の横に置く、
息を丹田まで深く吸っては吐き、
眼は真っ直ぐに前を見据えて、
気を静める。
戦闘準備完了!
「殺(シャアッ)!」
扉が完全に開いた。
見ると其処には大きな狼がいた。
わたしの身長は156cmである。
奴はわたしの腰と同じ位の背丈があるのでかなり大きい。
だが、わたしが負ける事は無い。
何故ならば…
わたしは知っているからだ…
此の世界が…何なのかを。
「おい。」
閻王がわたしに呼び掛ける。
「何だ?」
「死合の準備は良いのか?」
何だ、そんな事か。
「応(オウ)!始めてくれ!」
早く闘りたい。
否、早く殺りたい。
「開始(はじ)めいっ!」
ジィヤァァァーーーン!
銅鑼の音が鳴り響く。
そして、
狼が此方に走って来る。
クアトロッチで狼の目を見据える。
こうして威圧すると同時に、敵の目を中心に全体(更には其の周辺)を捉える事が出来る。
此れがシチリア式短剣術(シチリアン・スタイル)基本の目付けであるクアトロッチだ。
速い!
逃げられない!
ならば、向かうまでだ。
無論、最初から逃げる気は無い。
迎撃する!
彼我の間合いが詰まる。
わたしも大きく前に出る。
そして、
更に接近し、
両者の間合いが5m余りになった時、
狼が喉元目掛けて飛び込んで来る。
ならば、
「止(シッ)!」
口を開ける前に踏み込み、
狼の鼻に左肘を、
打ち込む!
めじっ!
左肘が鼻に食い込む感じがした。
同時に、互いの衝撃の反動で僅かに間合いが開く。
だが、わたしは攻撃の手を緩めない。
狼は未だに宙を浮いている。
ならば、
「上(サン)!」
右の中足前蹴上を放ち、
ゴッ!
見事に顎を粉砕する。
狼の顔が上を向いたかと思うと、ぐるんと回り始める。
間も無くして、目の前に大狼の腹が見えた時。
蹴り足を静かに下ろして、
更に一歩踏み込み。
「哈(ハッ)!」
右掌底突きをねじり込む。
ぐにゅ
掌撃(ショウげき)で内部破壊を起こしたものか、
狼は血を吐きながら前方に吹き飛んだ。
わたしは止めを刺す為に接近する。
そして、
ガッ!
右踵で肋骨を踏み砕くと、
左手で口を握り閉ざし
(最も、先程顎を砕いたので、噛み付かれても大した事は無い。)、
ぐりっ!
右手親指で大狼の左の眼球を抉(えぐ)り出した。
そして、取り出した眼球を無造作に投げ捨て、
右手を下顎に、
左手を上顎に宛がうと、
がりっ!
力任せに顎を引き裂く。
止めにとばかりに腹面へと回り込み、
右手を首の後ろに回して、
左手を顎の前に掛ける。
そして、
右手で首を絞めつつ、
左手に力を込めて、
「死(セイッ)!」
ゴッ!
首の骨を折る。
こうして一匹目は斃した。
わたしは立ち上がる。
「もっと綺麗に殺れよ。」
閻王は文句を付けて来た。
「だったら、犬の急所や経絡・経穴を教えて貰いたい。」
敢えて狼を「犬」と言ったのには訳が在る。
「お前はあれをして「犬」と言うのか?」
「当然だ!全然物足りん。
次はもっと手応えのある奴を出してくれ!」
「分かった。
所で、お前の拳法の流派(スタイル)はフルコンタクト空手と蟷螂拳(とうろうけん)の折衷だろ?」
正解。
微塵も驚かずに答える。
「何故分かった?」
確かに構えや技は空手の其れだ。
だが蟷螂拳を使った覚えは無い。
…何故だ?
「速いからだよ。」
意味が分からない。
「何が?」
「歩法がだよ。
あの歩法、確か猿猴歩(えんこうほ)とか言ったな。」
流石は閻王、一瞬で見抜く。
「ああ、正解だ。2回戦は?」
同時に、わたしは其れ迄の不動立ちから半身立ちの組手構えに切り替えた。
背筋を伸ばしたまま、
左足を前に、
右足を後ろに、
体重配分は其々に半分ずつ。
軽快な歩法フットワークや、蹴り技を出し易くする為に両足の幅スタンスは狭くする。
左手のガードは牽制の為に離し、
右手のガードは顔面を守る為に顎の横に置く、
息を丹田まで深く吸っては吐き、
眼は真っ直ぐに前を見据えて、
気を静める。
戦闘準備完了!
「殺(シャアッ)!」
扉が完全に開いた。
見ると其処には大きな狼がいた。
わたしの身長は156cmである。
奴はわたしの腰と同じ位の背丈があるのでかなり大きい。
だが、わたしが負ける事は無い。
何故ならば…
わたしは知っているからだ…
此の世界が…何なのかを。
「おい。」
閻王がわたしに呼び掛ける。
「何だ?」
「死合の準備は良いのか?」
何だ、そんな事か。
「応(オウ)!始めてくれ!」
早く闘りたい。
否、早く殺りたい。
「開始(はじ)めいっ!」
ジィヤァァァーーーン!
銅鑼の音が鳴り響く。
そして、
狼が此方に走って来る。
クアトロッチで狼の目を見据える。
こうして威圧すると同時に、敵の目を中心に全体(更には其の周辺)を捉える事が出来る。
此れがシチリア式短剣術(シチリアン・スタイル)基本の目付けであるクアトロッチだ。
速い!
逃げられない!
ならば、向かうまでだ。
無論、最初から逃げる気は無い。
迎撃する!
彼我の間合いが詰まる。
わたしも大きく前に出る。
そして、
更に接近し、
両者の間合いが5m余りになった時、
狼が喉元目掛けて飛び込んで来る。
ならば、
「止(シッ)!」
口を開ける前に踏み込み、
狼の鼻に左肘を、
打ち込む!
めじっ!
左肘が鼻に食い込む感じがした。
同時に、互いの衝撃の反動で僅かに間合いが開く。
だが、わたしは攻撃の手を緩めない。
狼は未だに宙を浮いている。
ならば、
「上(サン)!」
右の中足前蹴上を放ち、
ゴッ!
見事に顎を粉砕する。
狼の顔が上を向いたかと思うと、ぐるんと回り始める。
間も無くして、目の前に大狼の腹が見えた時。
蹴り足を静かに下ろして、
更に一歩踏み込み。
「哈(ハッ)!」
右掌底突きをねじり込む。
ぐにゅ
掌撃(ショウげき)で内部破壊を起こしたものか、
狼は血を吐きながら前方に吹き飛んだ。
わたしは止めを刺す為に接近する。
そして、
ガッ!
右踵で肋骨を踏み砕くと、
左手で口を握り閉ざし
(最も、先程顎を砕いたので、噛み付かれても大した事は無い。)、
ぐりっ!
右手親指で大狼の左の眼球を抉(えぐ)り出した。
そして、取り出した眼球を無造作に投げ捨て、
右手を下顎に、
左手を上顎に宛がうと、
がりっ!
力任せに顎を引き裂く。
止めにとばかりに腹面へと回り込み、
右手を首の後ろに回して、
左手を顎の前に掛ける。
そして、
右手で首を絞めつつ、
左手に力を込めて、
「死(セイッ)!」
ゴッ!
首の骨を折る。
こうして一匹目は斃した。
わたしは立ち上がる。
「もっと綺麗に殺れよ。」
閻王は文句を付けて来た。
「だったら、犬の急所や経絡・経穴を教えて貰いたい。」
敢えて狼を「犬」と言ったのには訳が在る。
「お前はあれをして「犬」と言うのか?」
「当然だ!全然物足りん。
次はもっと手応えのある奴を出してくれ!」
「分かった。
所で、お前の拳法の流派(スタイル)はフルコンタクト空手と蟷螂拳(とうろうけん)の折衷だろ?」
正解。
微塵も驚かずに答える。
「何故分かった?」
確かに構えや技は空手の其れだ。
だが蟷螂拳を使った覚えは無い。
…何故だ?
「速いからだよ。」
意味が分からない。
「何が?」
「歩法がだよ。
あの歩法、確か猿猴歩(えんこうほ)とか言ったな。」
流石は閻王、一瞬で見抜く。
「ああ、正解だ。2回戦は?」