若生りえ Jazz Songs & Diary

ジャズ歌手の若生りえがジャズスタンダードソングの歌詞やエピソードについて語る。
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AMAPOLA ~アマポーラ~

2010年04月25日 | 私の好きな曲 ~ジャズ訳詞一覧~
AMAPOLA ~アマポーラ~
1924年

原作曲/ ジョセフ・M・ラカーレ(ホセ・M・ラカジェ)
      
       Joseph M. Lacalle

原作詞/ ルイ・ロルダン(スペイン語)

       Luis Roldan

英詩作詞Ver.1/ アルバート・ギャムズ(アルバート・ゲイムス)
(1939年)
          Albert Games


英詩作詞Ver.2/ レジナルド・コネリー (レッグ・コネリー)
(1937年)          
          Reginald Connelly =(Reg Connelly)



《「アマポーラ」スペイン語でヒナゲシの花》


ジャズのスタンダードとしても扱われますが、
「ポップス」ナンバーとして有名な曲です。


「アマポーラー、マイ・スウィート・リトル・ポピィ~」
という出だしの歌詞で、「アマポーラ」というのは、
スペイン語で『ヒナゲシの花』を意味し、これは
「愛しい女性」を花にたとえて歌っている、

という設定の歌です


CMなどでも良く耳にすることの多く、
もう、メロディーもおなじみですよね?


作曲は、スペインからアメリカに移民し、アメリカで活躍した
ジョセフ・M・ラカーレ(ホセ・M・ラカジェ)で、
当時は歌詞が付けられたものの、演奏のみが有名で、
ほとんど、歌は歌われなかったのだそうです


ある資料では、彼本人のスペイン語作詞になっていましたが、
どうやら、スペイン語のオリジナル歌詞を作ったのは、
作曲者ではなく、「ルイ・ロルダン」という人のようです


このほかにもフランス語に訳されたりもしたようですが、
この曲を歌うときは『原語のスペイン語の歌詞』、英語歌詞では
『アルバート・ギャムズ(ヴァージョン1の訳詞)』のものが、
一般的のようです


私が今回これを訳すに当たって、めったにお目にかからない、
レジナルド・コネリーの作詞(ヴァージョン2の訳詞)を
ノートに書き写して、コーラス部分を訳し始めよう
と思ったときに、「あれ?これ、歌詞が違う!!」と
気が付き、2ヴァージョンあることを知ったのです(笑)

なので、海外のサイトを探しても、ヴァージョン2はめったに
お目にかかりません。(探せませんでした


その楽譜には「レジナルド・コネリー」とは
ちゃんと書いていなかったのですが、
英詩は、この二人の作詞した「2つの歌詞」が存在する、という資料があり、
片方は、すでにアルバート・ギャムズの歌詞ということで
大変有名なので、この表記に恐らく間違いはないと思います


《スペイン語、英詩1、英詩2の微妙な違い》

さて、せっかくなので、3つの歌詞について
触れたいと思います

まず、この3つに共通しているのは、
『愛しい女性をヒナゲシの花(アマポーラ)に例えている』
というところです


ただし、描かれた女性像は、微妙に違っていて、
特に原語の「スペイン語歌詞」では、
なかなか振り向いてくれない
ちょっと「つれなく」されている男性像が浮かんできます


「あぁ!アマポーラ!嫌な顔をせず振り向いておくれ!」


と、かなり望みが薄そうな(笑)歌詞のイメージを受けました


続いて、英語のカラオケなどでも、おそらく
こちらが出てくると思われる「ヴァージョン1」の方ですが、
ヴァースが2つもあり、そこまでは、映画で言うと、
まるで「ナレーション」によって物語が導かれ、
コーラスに入ると、彼自身の言葉で「彼女への思い」
つまり『愛の告白』が表現されている、
というのでしょうか(笑)


先に出てきた「ヴァージョン2」に比べると、
こちらの方が、よりドラマティックな歌詞になっており、
人気が定着している理由の一つのようです


英語の作詞は「ヴァージョン2」の方が先のようですが、
これをより、内容を膨らませて描かれたのが、
「ヴァージョン1」ということになりそうです


なぜなら、いとしの女性の設定がどちらも両方
「メイド」という設定になっており、その控えめで
優しい態度に、旅先のちょっと心細かった男心に、
火をつけてしまったような(笑)
その描き方の違い、のような気がします


ただし、ハッピーエンドをにおわす「ヴァージョン1」より、
最終的には「夢」だけで終わってしまうような部分をにおわす
歌詞の「ヴァージョン2」は、先に作ったにもかかわらず
イマイチ人気が出なかったようです。


でも「ヴァージョン2」もなかなか悪くないと思いますし、
それは、こちらを作詞した「レジナルド・コネリー」という人は、
ジャズでは結構有名な人で『TRY A LITTLE TENDERNESS』や
『IF I HAD YOU』を作詞しています


《有名なポピュラー・ソングへ成長》

1924年という古い曲ですが、
ここまで有名なポピュラー・ソングに定着したのは、
やはり1939年の「ヴァージョン1」の英語歌詞が、
同年の「First Love」というディアナ・ダービン主演の映画に
使用され、その後、1941年には更に「ジミー・ドスィ楽団」が
ヘレン・オコネルとボブ・エヴァリーの歌で吹き込み、
ミリオンセラーの大ヒット


1984年には映画『Once upon a Time in America』という、
ロバート・デ・ニーロ主演の、「夕陽のガンマン」を撮った
セルジオ・レオーネ監督の映画で効果的に使われ、
思い出されるように歌手たちにも取り上げられ、
歌われるようになったのです


《ハバネラのリズム》

さてここで、あえて私が「ヴァージョン1」の訳詞で
『ハバネラ』という言葉をいれましたが、
この『アマポーラ』という曲を聴くと、有名なクラシックの
ビゼーのオペラ「カルメン」の『ハバネラ(恋は野の鳥)』のリズム、
4分の2拍子で『タン、タ、タン、タン』のリズムと、
良く同じなのが分かります

この「ハバネラ」というのは、もともと、
ハイチからキューバにもたらされた「舞踏のリズム」で、更に、
キューバから船乗りによって「スペイン」に伝わり、
フラメンコと混ざり合い「アルゼンチン・タンゴ」のルーツにもなった、
情熱的なリズムなのです


そしてスペインの作曲家イラディエルの「ハバネラ」を、
ビゼーがオペラ「カルメン」で「ハバネラ」のなかに
使用した、といわれています
歌詞を和訳していると、よく「ダンス」や「リズム」
といった言葉が頻繁に出てきます。


昔の人と「踊りとリズム」の関係の深さを
感じずにはいられません


つまり、どんなに生活が辛く、貧しくても、
みんなが集まれば音楽に合わせてダンスをし、
今よりも娯楽がない中で、みんなで楽しめ、そして、
みんなの心を癒していたのが「音楽」、そして
「ダンス」だったのだろうだなぁ、と思います


《誰を聞く?》

日本でもCMに頻繁に使われるこの曲。
最近では「金鳥」の蚊取り線香のCMで、
ジャズ・ヴァイオリニストの寺井尚子さんが、
蚊をよけながら困った様子でアマポーラを弾き、
蚊取り線香を付け、蚊がいなくなると、途端に
あののびのびとした、いつもの寺井さんの弾き方で
演奏する・・・、というのにも効果的に使われていました


又、吉永小百合さんのJR東日本「大人の休日倶楽部~座禅編~」、
日産の車(「プレザージュ」「ローレル」)のCMでも使われ、
特に、ギリシャ人の世界的に有名な歌手「ナナ・ムスクーリ」さん、
の歌もヒットしました


後は、スタンダードとして、ドリス・デイの歌も有名です
みなさんもよくご存知の小野リサさんも歌っていらっしゃいます


さぁ!!それでは!!


今回も2ヴァージョンでお届けしますよ


「アマポーラ」です


どうぞっ



AMAPOLA  ~ Ver,1 ~
英詩作詞Ver.1/ Albert Games
1939年 アルバート・ギャムズ

(VERSE 1)

A boy found a dream upon a distant shore

A maid with a way of whis’pering “Si Senor”

Each night while guitars would softly play

The tune seemed to dance ‘round the words that he’d say

(VERSE 2)

The boy left his love upon a distant shore

And sailed from the one his arms were longing for

He vowed he’d return one sunny day

Once more to repeat what his heart had to say

(CHORUS)

Amapola, my pretty little poppy

You’re like that lovely flow’r so sweet and heavenly

Since I found you, my heart is wrapped around you

And loving you, it seems to beat a rhapsody


Amapola, the pretty little poppy

Must copy its endearing charm from you

Amapola, Amapola

How I long to hear you say “I love you”


アマポーラ ~ヴァージョン・1~
【日本語和訳歌詞】

(ヴァース1)

その青年がずっと夢に描いていたような

素敵な女性と出会ってしまったのは

遠く離れた異国の海の町

そこで出会った一人のメイドの娘はいつも

控えめで、優しく、ささやくような声で

『かしこまりました、旦那さま』

と、言っていた・・・

滞在している間

毎晩、そっと優しく語り掛けてくるような

ギターの音色を聴いていたその調べは

彼の「彼女への伝えたい気持ち」を

まるで代弁するかのように

あたりを音符が舞っているかのように見えた

(ヴァース・2)

その青年は、恋してしまったその娘を残し

遠く離れた異国の海の町を後にした

ずっと、愛しい人を抱きしめたい!

と思っていたその両腕で舵を取り

皮肉にも、その愛しい人から

どんどん離れる方へと進んでいった・・・

でも、彼はとうとう決心した!!

陽の光り輝くその日に

彼は、彼女のもとへと引き返した

そして、今度こそ

このあふれる思いを何と伝えたらいいかと

その言葉を何度もくり返して

彼女のもとへと向かった・・・

(コーラス)

アマポーラ!

僕のかわいいヒナゲシの花よ!

君はまるで愛らしく咲く花

その優しく可愛らしいふるまいは

天国にいるかのよう

君と出会ってからというもの

滞在している間に

僕の心は、すっかり

君のとりこになってしまったんだ

そして君への思いは愛情へと変わり

心臓が「ハバネラ」の熱いリズムのように

激しく鼓動するんだ


アマポーラ!

この美しく咲くヒナゲシの花たちは

誰からも愛される、君のその魅力を真似たのさ

アマポーラ!

僕の心に咲く、一輪のヒナゲシよ!

いったいどれだけの時間が過ぎれば

『あなたを愛している』という

君からの言葉を聞けるのだろう!!



AMAPOLA ~ Ver,2 ~
英詩作詞Ver.2/ Reginald Connelly =(Reg Connelly)
1937年 レジナルド・コネリー (レッグ・コネリー)

(VERSE)

I dream of a pretty brownhair’d maid in Spain

Who fans all the sparks of mem’ry but in vain

I wish I could be with her again

In that sunny land where they sing love’s refrain

(CHORUS)

Amapola, my lovely Amapola

You are the sweetest of all girls in sunny Spain

And with you dear beneath the sky of blue dear

Across the rumbling ocean we can both remain

Amapola, my lovely Amapola

I’m trying to forget you but in vain

Amapola, Amapola,

You’re the sweetest little girl in sunny Spain


アマポーラ ~ヴァージョン・2~

【日本語和訳歌詞】

(ヴァース)

僕は「太陽の国スペイン」で出会った

あのブラウンの髪の可愛らしいメイドの娘のことを

夢見心地で思い出しているんだ

あのスペインでの「思い出の種」に

火をつけてあおるのはいったい誰だい?

そんなことをしたって

ただの空しい夢にすぎないのに・・・

でも、やっぱり僕は、もう一度彼女に会いたい!!

太陽がさんさんと降りそそぐあの国では

愛の歌が、たえず流れているのさ・・・

(コーラス)

アマポーラ!

僕のかわいいヒナゲシの花!

君は「太陽の国スペイン」の

どの女の子よりも光り輝く

僕の太陽!!

そんなかわいい君と一緒にいると

天にものぼった気分で

空よりも高いところから青空を眺めているようさ

そのまま二人で

波がとどろく大海原を

自由に飛び越えることだってできる・・・


アマポーラ!

僕のかわいいヒナゲシの花!

何度も君のことを忘れようとしたけど

でも、どうしたって出来ないのさ・・・

アマポーラ!

あぁ!僕のかわいいヒナゲシの花よ!

君は「太陽の国スペイン」の

どの女の子よりも光り輝く

僕の太陽なんだ!


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4 コメント

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ステキな曲ですね (owl330)
2010-04-25 20:17:41
私もCMで聞いて寺井尚子さんのCDを何枚か買ったのですが、アマポーラは入っていなかったので(汗)改めてYOUTUBEで視聴♪訳詞を見ながら曲を聴くと久しぶりに甘くせつない気持ちになりました。それにしても訳詞するのに当時の状況やら経緯やらきちんと調べられるんですね。プロの仕事は凄い!と感心しています。これからも素敵な詩をお願いします。
返信する
初めまして (星宮菫)
2010-08-12 16:11:04
「アマポーラ」の歌詞を探していて、お邪魔しました。
スペイン語の歌詞だと望み薄ですかぁ~。
ジャンルが違いますが、私はアルフレード・クラウスが歌う「アマポーラ」が好きなんです。彼に
"Amapola, lindísima amapola,
Será siempre mi alma tuya sola."
と、歌われては、抗えません(笑)
返信する
ライブでうたってください。 (とんかつ)
2010-08-12 21:45:11
みなさんのコメント読んでたら
りえさんのアマポーラ
ぜひ聞きたくなりました。
先月の浅草でのライブも良かったですが
先日の銀座スウィングシティでは
たっぷり歌が聴けたんで
非常にいい時間でした。
ぜひアマポーラも聴きたいです。
返信する
Unknown (悪じじい)
2010-09-06 14:19:57
アマポーラバージョン2素敵ですね。私の場合はマラガで滞在したミハスホテルの方でした。彼女の仕事が終わるのを待ってブーゲンビリアが咲き乱れる白い石畳の小路を散歩してバールでシーフードとワインを呑み交わしたものでした。来週30年ぶりにスペインに出かけます。でも彼女には会いません。私は彼女のルックスも含めて美しい思い出はそのまま残したいので・・・りえさんはどう思います?(年を重ねても楽しみなのは、帰りに寄るバロセロナのサグラダファミリア位です。)ライブ楽しみに待っています。
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