若生りえ Jazz Songs & Diary

ジャズ歌手の若生りえがジャズスタンダードソングの歌詞やエピソードについて語る。
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「ニューオーリンズを忘れることは・・・」

2012年07月14日 | 私の好きな曲 ~ジャズ訳詞一覧~
みなさぁ~~~~~~~~~ん

こんばんはぁ~~~~~~~~~


暑い暑い一日でした。


さて、土曜日ということで、リラックスモードの方もいらっしゃるかと。

そこで、今日はジャズにまつわる映画のお話。

映画から生まれた有名なスタンダードはかなりたくさんありますよね?

それこそ、映画音楽なのか、ジャズなのか、というものも多いかもしれません。


映画のタイトルで通じてしまうものの例は、

「酒とバラの日々」、「ひまわり」、「慕情」、「シャレード」など。


そして、逆に映画の中で使われた一曲として有名なものは、

「ムーン・リバー(ティファニーで朝食を)」、「スマイル(モダンタイムス)」、

「The shadow of your smile(いそしぎ)」、

などが有名です。


そういった関わり方のジャズもあれば、

ビング・クロスビーやフランク・シナトラ、ドリス・デイなど、

俳優もやっていた歌手も多く、映画を通してジャズの普及に貢献した

歌手も多くいます。


その先駆者ともいえるのが、そう、ルイ・アームストロング。


ジャズの歴史に関してはいろいろな説がありますが、

どの説にも彼の名前は初期の頃に挙がっていますし、

ジャズ発祥の地は「ニューオーリンズ」だという説も有名です。


今日私がオススメする映画は、1947年の作品、

その名も「ニューオーリンズ」。


「ジャズ」を改めてウィキってみると、一行目には、


『西洋音楽とアフリカ音楽の組み合わせにより発展した音楽である。』


と記されています。



《映画のあらすじ&結末までバッチリ書いています。》


ジャズがまだ世間に浸透していない戦前のニューオーリンズが舞台で、

本人役でルイ・アームストロングが登場します。



賭博経営でニューオーリンズで成功していたジャズ好きオーナー「ニック」の店で

「サッチモ」は毎晩演奏して働いる。

そこへ上流階級出身の将来有望のオペラ歌手「ミラリー」がこの地に引っ越してきて、

家のメイドがつい口ずさんでいたジャズを聴き、響きや歌詞の内容に衝撃を受ける。

メイドのエンディが歌うジャズクラブに行き、店のオーナーの「ニック」に出会う。


それまで聴いたこともなかったテンションコード満載のジャズの響き、

そしてなによりも、演奏者自らがとても楽しそうに体を揺らしながら歌い、演奏し、

聴衆たちも一体になるジャズのスタイルに、

クラシックの世界しか知らなかった彼女はすっかり魅了されてしまう。


その上、ニックに恋したミラニーは、デビューが決まったオペラのリサイタルのアンコールで、

アクシデントでこの地を去ることになり、シカゴでやり直すニックと一緒になろうと決意し、

聴衆のブーイングを覚悟にジャズを歌い、オペラ歌手の人生を捨てようとしてしまう。


クラシック界での娘の成功を夢見る大富豪の彼女の母親は

「ジャズなんて聴いてはいけない」ということで、

ジャズクラブに行くことも、ましてや店のオーナーと恋に落ちるなんてことも大反対。


「娘には近づかないで。店にも出入りさせないで。将来有望の娘を連れて行かないで。」


とお金を渡しながらいいます。

ニックも、彼女のオペラ歌手としての将来を考え、

お金を付き返し、一緒になることをあきらめる。


別れた後、初リサイタルでジャズを歌い、クラシック界を追放されたミラニーはヨーロッパで、

ニックはシカゴで、それぞれ新しい土地で相手を忘れるかのように、

ジャズとクラシックの普及に熱を入れる。


やがて月日は流れ、それぞれの世界で大活躍と大成功をおさめ、

いまや世界のオペラ歌手となったミラニーもアメリカに戻ってくる。


ニックが賭博をやめ、どん底からジャズ普及のためにしてきた仕事ぶりを、

ミラニーの母親も認め「娘の活躍を、アメリカでの復活を観に来てほしい」

とリサイタルのチケットをおいてゆく。


迷いつつも最後の方へ聴きに行くと、彼女が彼の存在に気がつく。


嬉しくなり、リサイタルのアンコールで以前は追放されたきっかけになったジャズ、

この映画のテーマソング「ニューオーリンズを忘れることは」を歌い、

母親の計らいで、クラシック以外の演奏が認められなかった素晴らしいホールで、

彼のジャズバンドたちがいきいきと彼女の伴奏をし、大成功。


つまりそれは、クラシックとジャズという音楽の壁、

ミラニーとニックの恋の壁、白人と黒人の人種の壁、

それぞれの壁は壊れた、ということを象徴しているのです。


めでたし、めでたし。



《あのビリー・ホリデイも出演!みどころ満載!》



その、将来有望のオペラ歌手「ミラリー」の家で、彼女が始めてジャズに触れる重要な場面。

そのメイド「エンディ」として働くのが、なんと「ビリィ・ホリデイ」その本人。


ミラリーはそのメイド役のビリー・ホリデイが館で歌うことを禁止されていた

ジャズをうっかり口ずさんでいた歌を聴き、始めてジャズに触れ、


「ジャズが聴きたい!ジャズクラブに連れて行ってほしい!」と懇願します。


「オペラ歌手のお嬢様をジャズクラブになんて連れて行ったら奥様にしかられます!」


というものの、どうしても聴きたいときかずに、ひらひらのお洋服から

ジャズクラブにふさわしい服装に着替え、メイドが歌う店へと出かける、という場面。


そのジャズクラブで毎晩演奏しているという設定のミュージシャンたちも、

実は本物の有名なジャズメン。


サッチモが、歌いながらメンバー紹介に流れる場面も、

まるで本場のしかも、サッチモたちがいた時代にタイムスリップして

聴いているような雰囲気で楽しめます


その豪華メンバーは以下、ウィキより。


「クラシック・ジャズの名手たちの事実上の紳士録となっている。

歌いながら紹介されている人物は、トロンボーン奏者のキッド・オリー、

ドラマーのズティ・シングルトン(Zutty Singleton)、

クラリネット奏者のバーニー・ビガード、ギタリストのバド・スコット(Bud Scott)、

ベーシストのジョージ・“レッド”・カレンダー、

ピアニストのチャーリー・ビール(Charlie Beal)、

同じくピアニストのミード・“ルクス”・ルイス(Meade "Lux" Lewis)である。

コルネット奏者のマット・キャリー(Mutt Carey)と

バンドリーダーであるウディ・ハーマンも、この映画の中で演奏している。」


彼女をあきらめニューオーリンズを去り、

拠点をシカゴに移し、ジャズの普及に奮闘し貢献するニック。


彼の働きもあり、ジャズはシカゴや世界に広まり、

ウディ・ハーマン(本物)も売れっ子で出演以来が殺到!!


ニックの意地悪な商売敵さえも、

「なぁ、オレの店にもウディが出演させてくれよ!」と懇願しているところに、

ウディ本人が登場しますが、ニックは目配せをして名乗らせません。


状況を察知したウディとニックは、その意地悪な商売敵を目の前に一芝居します。


ニック「君がオーディション希望者かね?じゃあ、今ここで吹いてみなさい。」

ウディ「あ、はい、わかりました。ちょっと・・か、かなり緊張してしますが・・・。」


と、わざとぎこちない手つきで楽器を組み立て、その手つきとは裏腹に素晴らしく吹きますが、

ウディを「もうかる対象」としてしかみていない商売敵は、

彼の演奏の良さがわからず、オーディションと称して目の前で吹いているのが、

まさに出演交渉をしているウディ本人そのものなのだということに気がつきません。


商売敵「おいおい。そんなオーディションなんてどうでもいいから、

    早くウディに出演してくれるように頼んでくれよ。」


ニック「わかった。彼に相談しておこう。」


商売敵が出て行った後、二人は大笑い。



《映画を象徴する歌「ニューオーリンズを忘れることは」》


色々と見所は満載ですが、ここで取り上げられているテーマ音楽が印象的です。


「Do you know what it means to miss New Orleans?」


「ニューオーリンズを忘れることは・・・」という邦題でおなじみ。


『ニューオーリンズも、ましてやその地で出会ったあなたのことはなおのこと、今でも恋しい。』


と歌います。


はじめてミラニーがビリー・ホリデイ演じるメイドの歌にききほれるシーンでも

使われており、映画の中で、はじめから終わりまで何度も重要なシーンで出てくる歌。


しかし、メイド役のビリー・ホリデイが、主人の留守中に、

こっそりとグランドピアノを弾きながら口ずさむそのシーン。


やはりビリー・ホリデイは魅力的な歌を歌っていました。

味があって、あぁ、ジャズってこうやって人の心に添って発展したものなんだな。

と、日々ジャズを歌わせて頂く身としては本当に「ジャズの本質」を教えられたようなワンシーン。


「これはどんな歌なの?」

「この歌はジャズのブルースよ。」

「ブルース?ブルー(憂鬱)な歌なの?」

「ブルーなときも、恋しているときも、ブルースを歌うのよ。

 私は今サッチモに恋しているから歌っているの。」


という「ブルース」についてビリィ・ホリデイの口から語られます。


今後、この歌も訳して歌いたいとおもいました。



さぁ!!週末・休日の夜に、こんなラブ・ストーリーはいかが?




















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4 コメント

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天気予報のBGM (どいま)
2012-07-14 20:20:01
こんばんわ

今日のコメントもいいですね。

しかし・・・この前話した例の曲見つけました。

最近なんでも便利ですね。

あの当時みんなが聞いていたBGMです。
懐かしさが鮮明な音でよみがえり感激です。

一度聞いてください。

http://www.youtube.com/watch?v=ukRZvaj15Yg&feature=related

今日はこのくらいでやめといたろww
(池野めだか風ww)

おやすみ
返信する
Unknown (ミント)
2012-07-14 21:20:05
りえさん、こんばんは。
今日も有意義な週末を
過ごされているのではないでしょうか。
今日のブログもまた、楽しく読ませて
いただきました。
りえさんの持つ歌の力・・
何だかわかるような気がいたします。
深いですね。
返信する
うらめしい雨ですが・・・・ (somebody)
2012-07-14 21:22:05
こんばんは~♪

今夜も呑んでいます。(笑)
ちょっと、お酒が入りながらのコメントで
失礼いたします。

日本中がスッポリと雨雲に覆われたようで、
今週はこちらも天気が悪く、そして寒いです。
甚大な被害をもたらした
うらめしい雨なのですが・・・・。

呑みながら・・・・、
今、私の部屋に流れている曲は・・・・、

先日りえさん直々に、
ご推薦いただいた・・・・・・、
「雨の日のジャズ」なのです。(笑)

ありがとうございました・・・。
999円で売っていたので、買ってしまいました。

Songs for a Raneyday・・・・、
素敵なアルバムです。

とても軽くて、何回聞いても疲れない歌声です。
もちろん、雨の日だけじゃなく、
晴れの日も、曇りの日も、雪の日も・・・、
じゃんじゃん聞けるアルバムです。

レンタル店に行っても、ジャズのCDは、
ベストアルバムの系統のものが多いのです。
私みたいなジャズ初心者には、
それなりに価値はあるのですが、
ベストアルバムって、名曲ばかり集めているので、濃い口になりがち・・・です。

そして、色の濃い歌手が・・・、
次々と出てきます。(笑)

パッとリセットできる
そんな軽いSue Raney・・・・、
素敵な歌声に包まれて、
おいしいお酒を呑ませていただいています。

ありがとうございました。

価値ある999円でした。


りえさんの先日の記事にコメント・・・。

画家ってJazzに近いのかもしれません。
同じ素材を見て描いても、
出来上がった絵は皆んな違うし、
素材と違う色を使って、
描いていくみたいですから・・・・。

サッチモ・・・ルイ・アームストロング。
ビング・クロスビーとデュエットしている
レコードを偶然持っていますが、
素敵なアーティストです。
返信する
「ニューオリンズ」を観て (田上 實)
2013-06-20 13:42:48
こんにちは!
突然の闖入をお許しください。

素性は傘寿のボケ老人です。

最近、やたらと1930年代、1950年代が懐かしく、
振り返りふりかえりしています。

ひょんなことから、DVD「ニューオリンズ」を入手、鑑賞し
この映画についての知識を得るべくネット上をさすらい
ました。

貴サイトにいたり、その的確な解説に映画への感動が
倍加しました。ありがとうございます。

一つお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?

中でリチャード・ヘイグマン?が弾いていたピアノ曲、
確かに記憶にはあるのですが、どなたが作ったなんと
いう曲なのかが思い出せません。

できましたらお教えくださると心がすっきりと晴れると
思い、お願いに上がった次第です。

この後、バックナンバーをたどり、楽しまさせて
いただきます。

失礼いたします。
返信する

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