第2回 脳神経研究の最新情報と私たちにできること--
講師 黒田洋一郎さん(東京都神経科学総合研究所)
化学物質問題市民研究会10周年記念講演会
(東京芸術劇場5F大会議室にて) . . .
今回は、いろんな実験データを大スクリーンを使って駆け足で(?)流してくれた。PCBに関しての実験データの有意性などにもふれた。(今回は、パワーポイントの資料付きであったので専門用語の書き間違えは避けられる。)
PCBに関連するところやまとめの部分のみ資料からピックアップする。 詳細は次号ピコ通信で報告される予定)
脳神経研究の最新情報と私たちにできること--
■私たちの体は環境から数多くの人工化学物質で複合汚染されている
・PCBやDDTは環境での安定性が高く、北極を含む地球全体に汚染が拡がっている。
・私たち日本人の体の中にもPCBをはじめ数多くの化学物質が蓄積しており、PCBは脳内でもかなりの量が検出されている。
日本人の一般男女の総PCB血中濃度は、平均650pg/g(単純換算濃度:1.6nM)
・母親から胎盤、母乳を通じて胎児、乳児にも汚染される。
■先進国のヒトの体にどれだけ人工化学物質があるのか?
320種の環境中の化学物質を調査した結果165種が検出された。
◇PCB異性体→209種中の97種が検出
◇PBDE異性体→40種中の25種が検出
疑われる健康障害
甲状腺ホルモン機能障害
脳神経発達への影響
■環境ホルモンなどの化学物質は胎児や乳児の脳内で遺伝子の働きを攪乱するので、神経(細胞)回路の形成・発達が傷害され行動が異常になる
CREST研究ではこの考え方をPCBなどを使って実験で確かめた
1.遺伝子の働き(遺伝子発現)の攪乱が起こるか
2.神経(細胞)回路形成・発達が傷害されるか
3.汚染された母親から生まれた子ラット、子ザルの行動が異常になるか
■神経回路形成に重要な遺伝子発現への影響を調べる実験(遺伝子レベル)
1.甲状腺ホルモンが調節している遺伝子の発現量を簡便、正確に調べる【群馬大 鯉渕典之グループ】
レポーター・ジーン・アッセイ(最新技術)
結果;低濃度のPCB、水酸化PCBによる攪乱が起こった
2.神経活動が調節している遺伝子の発現量を調べた【富山医科薬科大、津田正明グループ】
結果;DDT、ペルメトリンによる攪乱が起こった
■毒性のメカニズムによる分類(どんな化学物質が危ないのか)
1.にせホルモン型
2.チャンネル影響型
3.にせ神経伝達物質型
1.にせホルモン型化学物質(PCB、水酸化PCBなど)によるホルモン依存性遺伝子発現の攪乱と知能(IQ)低下、多動症
-脳での甲状腺ホルモンの重要性-
◆脳の発達に重要な甲状腺ホルモンとPCB、水酸化PCBの化学構造の類似
(環境ホルモン=にせホルモン)
ヨード(Ⅰ)と塩素(Cl)は同じハロゲン元素
構造式はこちら~
2.チャンネル影響型化学物質(DDT、ペルメトリン、DESなど)による神経活動依存性遺伝子発現の攪乱と記憶など後天的獲得行動の異常
◆殺虫剤などによる記憶・学習にかかわる遺伝子発現の抑制の重要性
・言語機能をはじめとする学習などあらゆる後天的行動の獲得を傷害する可能性
・親の育児、教育のしかたが普通でも、子どもの脳がそのような化学物質で汚染されていると、それを受け付けられない。神経活動を神経回路パターンとして脳の中に固定する。行動の獲得・発達過程がうまくいかない。
・母親の体内蓄積だけでなく、子どもの身の回りでの化学物質汚染も避けるべき
◆神経伝達物質など脳内生理化学物質の多様性
・遺伝子発現の調節だけでない
・にせ神経伝達物質など他の情報化学物質系への影響(免疫系とも一部共通)
・MPTPという人工化学物質がパーキンソン病を起こした(除草剤パラコートと類似)
・神経細胞の生存、老化にも化学物質は関係。若年性認知症の問題
3.にせ神経伝達物質型化学物質
グルホシネート(遺伝子組み換え作物用・除草剤)は雌ラットに易興奮性、殺戮にいたる異常な攻撃性を生じる
■脳(ことに発達)は人工化学物質に弱い
・脳そのものが化学物質からできており、ことに情報の伝達が化学物質によって行われている複雑精緻な“化学機械”。
・ことに脳の発達に数万の遺伝子が順序正しく発現される必要があり、数多くの脳内生理化学物質によって微妙に調節されている。
・したがって人工化学物質によって攪乱されやすい脳関門が未発達で化学物質が脳内に入りやすい。
・神経細胞が入れ替わらないので、障害が何年、何十年後に顕在化する可能性(ガンなどと同じく潜伏期がある)。若年性認知症の問題
最後に“私たちにできること”として締めくくられた~
1.体内に入れない
2.体内汚染状況を知る
3.体外に排出する
4.地域環境を良くする、国の政策~、国際的なつながり~
●今回は質問時間も1時間あり、多様な質問や意見が出された。
-今回も100席以上の大会議室が満席であった-
●二回のお話をお聞きして思ったことは…
まだまだ分からないことだらけの脳内…
データや論文発表で証明云々より…
やはりいいとは思えないものはNO~
ということ
血中や脳内までにも、これほどまでに化学物質が入り込んでいても~
それでもまだまだ新しい化学物質が作り出される。黒田先生もおっしゃっていたが、モグラたたきのごとく…。たとえ製造や使用が禁止になってもすぐに次々代替え物質が出てくる。何事についてもいえるが、日本の政策に予防原則の原理が働かないことにはいつまでたっても状況は改善されない。
いかに体内の汚染状況を調べてみても、平均値より低いから大丈夫ということではないという。高いよりは低い方がいいだろうが…。個々の状況はそれぞれ違って、いくら低くてもそれが顕在化するリスクはあるということ…。
体内の肝臓などの臓器と違って、脳の神経細胞は入れ替わらないので(ず~~と生き残っているので)リスクがあるということのようだ。
講師 黒田洋一郎さん(東京都神経科学総合研究所)
化学物質問題市民研究会10周年記念講演会
(東京芸術劇場5F大会議室にて) . . .
今回は、いろんな実験データを大スクリーンを使って駆け足で(?)流してくれた。PCBに関しての実験データの有意性などにもふれた。(今回は、パワーポイントの資料付きであったので専門用語の書き間違えは避けられる。)
PCBに関連するところやまとめの部分のみ資料からピックアップする。 詳細は次号ピコ通信で報告される予定)
脳神経研究の最新情報と私たちにできること--
■私たちの体は環境から数多くの人工化学物質で複合汚染されている
・PCBやDDTは環境での安定性が高く、北極を含む地球全体に汚染が拡がっている。
・私たち日本人の体の中にもPCBをはじめ数多くの化学物質が蓄積しており、PCBは脳内でもかなりの量が検出されている。
日本人の一般男女の総PCB血中濃度は、平均650pg/g(単純換算濃度:1.6nM)
・母親から胎盤、母乳を通じて胎児、乳児にも汚染される。
■先進国のヒトの体にどれだけ人工化学物質があるのか?
320種の環境中の化学物質を調査した結果165種が検出された。
◇PCB異性体→209種中の97種が検出
◇PBDE異性体→40種中の25種が検出
疑われる健康障害
甲状腺ホルモン機能障害
脳神経発達への影響
■環境ホルモンなどの化学物質は胎児や乳児の脳内で遺伝子の働きを攪乱するので、神経(細胞)回路の形成・発達が傷害され行動が異常になる
CREST研究ではこの考え方をPCBなどを使って実験で確かめた
1.遺伝子の働き(遺伝子発現)の攪乱が起こるか
2.神経(細胞)回路形成・発達が傷害されるか
3.汚染された母親から生まれた子ラット、子ザルの行動が異常になるか
■神経回路形成に重要な遺伝子発現への影響を調べる実験(遺伝子レベル)
1.甲状腺ホルモンが調節している遺伝子の発現量を簡便、正確に調べる【群馬大 鯉渕典之グループ】
レポーター・ジーン・アッセイ(最新技術)
結果;低濃度のPCB、水酸化PCBによる攪乱が起こった
2.神経活動が調節している遺伝子の発現量を調べた【富山医科薬科大、津田正明グループ】
結果;DDT、ペルメトリンによる攪乱が起こった
■毒性のメカニズムによる分類(どんな化学物質が危ないのか)
1.にせホルモン型
2.チャンネル影響型
3.にせ神経伝達物質型
1.にせホルモン型化学物質(PCB、水酸化PCBなど)によるホルモン依存性遺伝子発現の攪乱と知能(IQ)低下、多動症
-脳での甲状腺ホルモンの重要性-
◆脳の発達に重要な甲状腺ホルモンとPCB、水酸化PCBの化学構造の類似
(環境ホルモン=にせホルモン)
ヨード(Ⅰ)と塩素(Cl)は同じハロゲン元素
構造式はこちら~
2.チャンネル影響型化学物質(DDT、ペルメトリン、DESなど)による神経活動依存性遺伝子発現の攪乱と記憶など後天的獲得行動の異常
◆殺虫剤などによる記憶・学習にかかわる遺伝子発現の抑制の重要性
・言語機能をはじめとする学習などあらゆる後天的行動の獲得を傷害する可能性
・親の育児、教育のしかたが普通でも、子どもの脳がそのような化学物質で汚染されていると、それを受け付けられない。神経活動を神経回路パターンとして脳の中に固定する。行動の獲得・発達過程がうまくいかない。
・母親の体内蓄積だけでなく、子どもの身の回りでの化学物質汚染も避けるべき
◆神経伝達物質など脳内生理化学物質の多様性
・遺伝子発現の調節だけでない
・にせ神経伝達物質など他の情報化学物質系への影響(免疫系とも一部共通)
・MPTPという人工化学物質がパーキンソン病を起こした(除草剤パラコートと類似)
・神経細胞の生存、老化にも化学物質は関係。若年性認知症の問題
3.にせ神経伝達物質型化学物質
グルホシネート(遺伝子組み換え作物用・除草剤)は雌ラットに易興奮性、殺戮にいたる異常な攻撃性を生じる
■脳(ことに発達)は人工化学物質に弱い
・脳そのものが化学物質からできており、ことに情報の伝達が化学物質によって行われている複雑精緻な“化学機械”。
・ことに脳の発達に数万の遺伝子が順序正しく発現される必要があり、数多くの脳内生理化学物質によって微妙に調節されている。
・したがって人工化学物質によって攪乱されやすい脳関門が未発達で化学物質が脳内に入りやすい。
・神経細胞が入れ替わらないので、障害が何年、何十年後に顕在化する可能性(ガンなどと同じく潜伏期がある)。若年性認知症の問題
最後に“私たちにできること”として締めくくられた~
1.体内に入れない
2.体内汚染状況を知る
3.体外に排出する
4.地域環境を良くする、国の政策~、国際的なつながり~
●今回は質問時間も1時間あり、多様な質問や意見が出された。
-今回も100席以上の大会議室が満席であった-
●二回のお話をお聞きして思ったことは…
まだまだ分からないことだらけの脳内…
データや論文発表で証明云々より…
やはりいいとは思えないものはNO~
ということ
血中や脳内までにも、これほどまでに化学物質が入り込んでいても~
それでもまだまだ新しい化学物質が作り出される。黒田先生もおっしゃっていたが、モグラたたきのごとく…。たとえ製造や使用が禁止になってもすぐに次々代替え物質が出てくる。何事についてもいえるが、日本の政策に予防原則の原理が働かないことにはいつまでたっても状況は改善されない。
いかに体内の汚染状況を調べてみても、平均値より低いから大丈夫ということではないという。高いよりは低い方がいいだろうが…。個々の状況はそれぞれ違って、いくら低くてもそれが顕在化するリスクはあるということ…。
体内の肝臓などの臓器と違って、脳の神経細胞は入れ替わらないので(ず~~と生き残っているので)リスクがあるということのようだ。