☆グラフは東京二十三区清掃一部事務組合「一般廃棄物処理基本計画(平成22年2月)」より作成
ごみ問題、清掃工場反対の取り組みをしている側から見ると、今さらながら、とはいえ、これぞ諸悪の根源ともおもえるのが、一般廃棄物処理基本計画、施設整備計画である。23区の「清掃工場の整備スケジュール」をみながら、このまま順次建替えを続けていっていいのか、何かやるべきことを見落としていないかなど、改めて考えてみた。しかし、ごみ量予測のとらえ方、焼却余力はどの程度が適正か、湾岸地域とその他地域の考え方、常に2~3工場建て替えとなる必然の能力温存、、、いろんなパターンでシミュレーションしてみようとはおもえど、なにをするのも虚しい作業、要するに、整備計画の問題点は、結局は、23区の「清掃工場、ある区もない区も、当分の間は共同処理体制とする」とした広域処理の矛盾、そして、それぞれの区がごみ問題にどう向き合うかの本質論に尽きるるので、、、、それでも、とりあえず考えられる問題や課題を書き出してみた~
■東京二十三区清掃一部事務組合
「一般廃棄物処理基本計画(平成22年2月)」
一組HPから↓↓ 詳細は:こちらから~
計画年間稼働日数(t/年)
計画年間稼働日数=暦日数-計画停止日数-年末年始停止日数-故障停止日数
(計画年間稼働日数=定期点検補修+中間点検日数)
計画年間稼働日数=365日-59日-4日-9日=293日
焼却余力は~
平成23年度は、大田と、練馬が建替えで操業停止中ではあるが、それでも焼却能力は合計で349万トンあった。清掃工場等の焼却実績は、おそらく約273万トン程度であろう。(まだ焼却量等の確定値や事業年報は公表されていない。)結果的に、76万トン(約28%)の焼却余力となるだろう。今年度は、杉並も建替えによる操業停止中となれど、それでも332万トンの焼却能力を維持している。女川の災害廃棄物の5万トン受入はあれど、焼却余力は20%は見込めるのではないか。大田第一の休止でなんとか余力過剰が抑制される~
焼却余力はどの程度が適正なのか
当面の整備スケジュールのなかで、余力幅が最も小さくなるのは、目黒、有明、千歳、江戸川の4工場の建替えが重なる、平成34年度~37年度の11~12%である。(次回の一廃計画改定時に具体化か)しかし、それでも年間30万トンの余力である。30万トンの余力ということは、日量1,000t炉がまるまる1年間遊んでいるということである。4工場止まっていても、、、である。
わざわざ、複数工場の建て替えを重ねることで、現存施設の能力維持、焼却能力の余力を温存しているかと勘ぐってもしまうが、しかし、冷静に考えると、現状で、稼働年数25年前後で建替えをしているので、23区合計で20清掃工場、建替えに要する操業停止期間が約5年となると、どんなにがんばっても、2~3工場の重なりは起きてくる。大所帯故の悪循環である。
単純に、他都市のように、ごみ減量で年間280万トン予測とし、年間350万トン能力あるので、余力を10%として、600t/日の工場2つ廃止しようという、単純な構造にならない。(大田600t/日は休止として除外しても総能力約350万トン/年)
実際は、23区の広域処理、順次の建替えによる停止、広域でのごみの搬入調整のたいへんな状況は予想されるので余裕があるほど調整もしやすいのだろう。が、しかし、年末年始のごみ量増加、季節によるごみ量の変動、そしてバンカ容量と、焼却余力の必要性はわかるが、今や、エネルギー政策も、かつてのような、湯水の如くの電力供給はできない時代。最大ピークに見合った受け皿づくりをする時代でもないし、それが住民サービスということでもない。ごみ減量と同様に、ごみ量のピークも、可能な限り排出を平準化できるような工夫も必要。
湾岸地域とその他地域の考え方は
そもそも平成15年当時に地域ブロック(2~6分割案)設定の考え方は検討されたが、それでもなお現状の23区の共同処理となったのだから、今さら、湾岸地域と、その他地域と分けて考えるのも合理的とも思えない。要するに、今後、処理能力を縮小できる可能性があるのは湾岸地域の施設ですという条件整備のようなものなのか。
23区の清掃負担の公平とは~
負担の公平化の方策(平成20年3月14日 区長会総会)
清掃工場のごみ処理量の平準化に向けて、搬入調整やごみ減量の取り組みを進めるが、一定の平準化が図られるまでの間、金銭による調整措置を一部、例外的、限定的に導入するものとする。
金銭による清掃負担の公平
「一定の平準化が図られるまでの間、金銭による調整措置を一部、例外的、限定的に導入するものとする。」ということで、今年度は、千代田、新宿、文京、台東、荒川、渋谷、中野、世田谷、杉並、豊島、板橋、練馬、足立、江戸川が支払い側、その他の区は受け取る側の区となる。△表示は受け取る金額。自区内の清掃工場で、他区分のごみも焼却しているという計算になる。と、いうことで、標準化するには、江東区の清掃工場の能力をなんとか縮小するしかないというのが、流れではあるが~
清掃工場の稼働状況
計画年間稼働日数で「故障停止日数」を9日として計算しているが、実際には故障による停止はそんなものではない。平成22年度で、全工場で、故障による停止時間は「8,743時間(約364日)」である。その他に、水銀による焼却炉の停止などあれば、さらに、かなりの期間は停止する。それでも、現状は、余力が十分にあるので、「調整」ということで焼却炉を停止している。いわゆる、ごみ不足で、ごみ待ち状態の調整、操業協定などに基づくごみ搬入調整など。(水銀などのトラブルによる焼却炉停止は「故障」のカウントではなく「調整」の枠に入っている。)
ごみ焼却量の推移
平成20年度から、廃プラスチック類が焼却処理となったため、区収集の可燃ごみ量は増加傾向であったが、持込みごみの減少で、焼却量全体は、横ばいから微減傾向となっている。焼却量の約3割以上は事業系持込みごみである。粗大ごみ破砕処理施設では、産業廃棄物(紙くず、木くず、繊維くず)も受け入れている。
23区のごみ量の推移 「持込みごみ」をどう考えるか~
これほど事業者のごみを大量に自治体が処理している地域は他にあるのだろうか、大都市であるからこそ、処理施設の不足から自治体が処理しているともいえるが。平成22年度実績でみると、持込みごみの約97%は清掃工場に入っている。(現状では弁当がらなどが不燃ごみ扱いであるが、いずれ可燃ごみになる可能性もある。)
現状の稼働年数25年前後での建替えは妥当か~
環境省は、「廃棄物処理施設長寿命化計画作成の手引き(ごみ焼却施設編)」を作成し、長寿命化を推進している。清掃一組施設は、毎年、定期点検、中間点検と、100億円前後の補修費をかけてしっかりメンテナンスもしているので、よほどの不具合がなければ、さらに長持ちさせられるのではないか。そうすれば、建替え期間の重なり具合も、予備能力も縮小可能。
中間処理体制の長期展望を~
東京ごみ処理事情、清掃事業が各区に移管されて、
収集・運搬は各区、中間処理は当分の間共同処理体制、最終処分は東京都となった。しかし、その「当分の間、東京二十三区清掃一部事務組合による共同処理」の当分の間はいつまでをいうのだろう。ここらで、23区は、長期を見据えた構想もあれこれ検討する必要があるのではないか。
市民サイドからすれば~
どんなに施設が立派になれど、都市生活に必要な施設といえど、清掃工場はやはり地元住民には迷惑施設には違いない。長年の苦労の末、さらに、建替え建替えで未来永劫それが続くのでは納得もいかない。地域住民からすれば、自分の地域の清掃工場が真っ先に廃止になってほしい思うのは当然で、それが不可能となれば、より規模を縮小をしてほしいと願うのは当然の摂理。さもなくば、原子炉の、危険度ランキングではないが、清掃工場の危険度(迷惑度)もランキングして廃止すべきという話も聞く~
(さすがに、今は、面と向かって言われることはなくなったが、それでも、「どうせ、江東など、人の住んでいないところに建っているのだから、都会のまっただ中の清掃工場をやめて、ごみは江東で燃やせばいいと」と、言うおもいがひしひしと伝わることがある。ただの被害妄想なのか、ほんとうは自分もそう思っているのか、よくわからないが。)
行政サイドからすれば~
自区内処理の原則、経費負担の観点からも、自区内のごみ処理量に見合った処理施設は確保しておきたいと思うのは必然であろう。23区、それぞれの立ち位置でかなり考えは違うかもしれない。
23区も事業系ごみの減量施策に本腰を~
他都市では、家庭ごみの減量施策は当然として、事業系ごみの減量のための検討会など、かなり力を入れて施策を打ち出している。23区では、まだまだ具体的な減量施策が少ないと思うが~
清掃事業のあり方~
清掃事業、収集・運搬を民間委託、焼却工場も民営化、というのは、大阪市に限らずいろんな地域で広がりつつある。清掃工場のDBO手法、PFI手法もかなりの自治体で行われている。それがいいのか、わるいのか、いろんな見方ができるので、なんとも言えないが、いつまでも、直営というものでもないのかもしれない。23区として、清掃事業の方向性、長期展望などを考えていく必要もあるのではないか。
江東区の清掃工場
清掃工場の問題のとっかかりは、(現)新江東清掃工場の建設時の環境アセスメントであった。なにしろ巨大すぎて、600t/日×3基の1,800t/日である。当時の東京都清掃局は、可燃ごみの全量焼却が達成した暁には、新江東の1炉を真っ先に止めますといったものだが、そんなものはいつのまにか反故にされてしまった。
今年で稼働14年目、稼働25年を迎えるのは、平成35年である。有明、千歳、江戸川の建替え時期と重なる。おそらく、新江東は現状の施設を操業させながら、隣接地に建設工事が並行可能なのではないだろうか。前回もそうであったので。都有地で、そういう意味では、清掃工場としては条件のいい場所である。さもなくば、1,800t/日が5年間も停止すると、いかに余力のある23区でも、調整がたいへんなことになる。迷惑負担の公平を長年訴えてきた江東区としては、区も議会も当然の如く、「清掃工場のごみ処理量の平準化」を強く求めるであろうが、どの程度の規模縮小になるのかはわからないが。しかし、その頃には、あんがい、PFI手法や、そっくり、清掃工場等は民間会社が管理・運営していたりして~。東京の清掃事業の歴史、夢の島、条件のいい都有地、等々考えれば、新江東の規模は温存して、有明を廃止にするのもいいかもしれない。多少の規模縮小より、施設をひとつ廃止する法が財政的には効率がいいだろう。なにしろ、建設当時は、周辺にはなにもなかったものの、あっという間にマンションやビルが乱立、清掃工場のとなりに大学までできてしまった。しかし、有明は、地域熱供給事業をしているので廃止は無理なのかもしれない、、、、等々、かってにあれこれ考えて、、
とりとめのないひとりごとで、
考え出すと切りはないが、うまくまとまらない。とりあえず~
追加、
高度経済成長期、バブル景気の頃のあのごみ量、、
※グラフは「東京都清掃事業百年史」、「清掃事業年報(東京23区)」などから作成
注:「東京都清掃事業百年史」の元データには、人口やごみ量の統計手法について、その時々でかなり細かな注釈付である。(省略) 1人当たりのごみ量のでこぼこもそういった事情によるものも多い。1人当たりのごみ量はおおむねごみ総量に比例している。
※この「23区のごみ量」は家庭系ごみ+事業系持込みごみの合計である。
23区の人口、大震災、放射能の影響で人口減少するかと思ったが、
地域差はあれど、全体ではまだまだ人口は増加傾向である~
素人考えで、消費税増税で、消費の停滞、そしてライフスタイルの変化、各区の減量施策等々、ごみ減少はまだまだ続くと期待している。
参考
■廃棄物処理施設長寿命化計画作成の手引き(ごみ焼却施設編)
平成22年3月環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課
■ごみ焼却施設における廃止時の供用年数と施設数
5.廃棄物処理施設の供用年数
一般廃棄物処理施設のうちごみ焼却施設は、焼却が開始された初期においてはごみを処理することだけが目的の簡易な施設であった。しかしながら、今日のごみ焼却施設は、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を前提としつつ、循環型社会の形成を推進することに転換が図られてきており、公害防止、自動化、熱回収等に係る技術の集積が進み、維持管理に高度な知識・経験を要するとともに建設に当たっては多額の費用を必要とすることとなった。
その供用年数をみると、図 I-2 に示すように、ごみ焼却施設では、供用年数が概ね20~25 年程度で廃止を迎えている施設が多く、多額の資金を投じて建設されたことを考慮すると必ずしも供用年数が十分長いとはいえない。(下線渡辺)
関連(本ブログ)
■23区 清掃工場別の処理単価(平成22年度決算)(2012年03月15日)
■23区 清掃工場等作業年報(平成22年度) 処理量、稼働状況、故障など(2011年10月18日)
■23区 清掃工場等作業年報(平成22年度) CO2排出量/電力等/薬剤使用量(2011年10月18日)
■23区の平成22年度より可燃ごみ処理に負担金制度の導入とは~(2008年06月27日)
■東京二十三区清掃一部事務組合の情報の公開度、中間処理は当分の間共同処理体制とした23課題とは~(2011年12月22日)
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また、近年の熱回収率の向上や全量買取制度により、売電伴う運営費用の低減に追い風も吹いているところです。
ごみと人口推移の関係は密接な関係となりますが、こと23区となれば一概に減少傾向とは言い切れません。
しかし、余裕があれば減らす努力も働かないの現実ですし…
結局は、管理する側の『決め』の問題ではないでしょうか?
われわれ一般人は、明らかにおかしいかどうかのチェックしかできませんね。