川口はいいところよ・・  ようこそ新潟へ

新潟県中越地震震源地から今年で早や12年。そげ落ちた信濃川の河岸段丘の表土も自然の力で草木が戻りました。

地震その時(再掲7)

2007-01-31 21:09:47 | ワブログから引っ越しました
「ここに明るくなるまでいたほうがいいよね。」 結論がでた。



私は大声を張り上げた・・

「すみませーん、みなさん集まってくださーい。」

あちこちの車の中からゆっくりと人影がこちらに向かってきた。

胸が硬くなった・・・

何人くらいだろうか・・

私の周りに人垣が幾重にも出来た。

さぁ・

自分で自分の肩を押した。

「きこえますかぁ?!」



大勢の返事とうなずきが返ってきた。



「お急ぎのところ、大変ご迷惑を・・・」

侘びの言葉を苛立つ声が遮った・・

「いいから・・どうなっているんだ!」

「はい、今判っている事を説明します。」

「管制室とはまったく連絡が取れません。私は先ほどこの越後川口ICの近くから歩いてきました。17号へは出られません。通りかかった車に聞きましたら十日町方面、小千谷市方面どちらもいかれないようです。」

「結論から言います。」

「明るくなるまでここにいた方がいいです。」



どよめきがひとしきりあった。



「ここを出られないのか?」

「出られます。」

「出られても川口町からは出られません。」

「一般道はあちこちで段差や亀裂があります。」



何度かの押し問答のあと

「私はここにくる時その亀裂に落ちてしまいました。」

 とっさに腕をまくった・・

気にも留めなかったがアスファルトの亀裂で擦り傷が出来ていた。

血のにじんだ腕を見て苛立つ声がため息に変わった・・・

「暗いうちは危険です。明るくなるまで待ちましょう。」

「わかりました。そのほうがいいようですね。」



居合わせた人々の顔の険しさが引いていくのがわかった。






地震その時(再掲6)

2007-01-30 06:27:56 | ワブログから引っ越しました
「ねぇ、Sちゃんたち見なかった?」

「さっきいたよ。」

「そういえばインターに行ったよ。」

私は来た道を引き返した。



インターから人影がくるのが見える。

声を張り上げた。

「そこにいるのはSちゃん?Hさん?」

聞きなれた声が返ってきた。

「どうしてここにいるの?」

「心配で来ちゃった。」



今までの出来事を聞きあって、安心したのか



不覚にも初めて涙がこぼれた・・



「ねぇ、高速はどんな?」

「私たちだけだから、全然わかんないのよ。」

「携帯も通じなくて。中にも入れないし・・」

「公衆電話もだめみたい。」

・・・地震直後建物はしばらく非常灯が付いていたが今は真っ暗で何も見えなかった。外灯がきえた駐車場の空は星が輝き、空気は深々と冷えてきた。



「それで もう、どうしょうも無くて二人で料金所まで行こうかって事になったのよ。」

「でも、向こうも分からないって。」

「お客さんで怪我をした人いた?」

「お客さんは擦り傷の人はいたけど。」

「そう。救急箱だけは・・と持って出たの。」

「テナントさんが飲み物とすぐ食べられるもの出してくれたの。」

「一般道はICからは無理みたいだから。お客さんには誰か説明した?」

「ううん、多分誰もしてない。」



二人は、テナント職員と協力しながら地震直後、震える身体で薬品箱を持ち、ご年配の婦人たちを促しながら建物の外に出たのだった。



慌ただしく経過を聞いたあと、周りを見渡すとかなりの滞留車両がヘッドライトに照らされていた。

誰もがどうしていいのか判断がつかない・・




地震その時(再掲5)

2007-01-29 18:28:53 | ワブログから引っ越しました
ICのゲートをくぐり月明かりを頼りに前方のエリアを目指した。

何本かのランプのうち段差の激しいところを避け躓きながら

度々余震で揺れるアスファルトを踏みしめた。

越後川口ICからのランプ(アクセス道路)をエリアに進んでいくと前方にヘッドライトが薄ぼんやりと多くの滞留車両を照らしていた。

その光のなかで絶え間なく影が行き来していた。



エリアの駐車場にようやくたどり着いた。

私は同僚の二人を探した。

「あ、Aさん、Sちゃんたち見ませんでしたか?」

「え、そのあたりにいるでしょう?」

「一生懸命物を出してたよ。」



・・・どこに行ったの?!・・・



エリアは滞留車両のヘッドライトと月明かりで騒然と人々が照らしだされていた。

暗闇になれた目で同僚の姿を探したがいない。

余震できしむ建物の中を恐る恐る見回すがそこにもいなかった。

駐車場中央には木製のテーブルと椅子がはこびだされ飲食物と救急箱が雑然とおいてあった。



地震から一時間ほど経って

すでに居合わせた人々は落ち着きを取り戻してきた。



滞留車両は4・50台。

車の中やテーブル近くに自分たちの状況をそれぞれが確認しあっていた。

その中の運転手らしき男性数人に

「どこにいましたか?」

「トンネルをぬけたあたりで何がなんだかわからなくなって、とりあえずSAにきました。」

「私たちはSAで休憩中でした」

聞く限り山本山トンネルの手前から・・の声は無かった。



同僚の姿はまだ探せないでいた。

・・・もしかして下り?・・・



門扉をくぐり下りへと向かった。



月明かりに照らされた下りSAへと続く細い道には亀裂が走っていた。

職員駐車場には数人が車の傍に不安な表情で所在なげにいた。



「大丈夫だった?」

「私たちはね。」

 ・・厨房の社員が火傷を負ったようだ・・



「川口橋は通れないみたい。山本もだめだって。

117は塩殿辺りが酷いってよ。17もだめらしいて聞いたけど・・」

「じゃあ帰られないね?」

「明るくなるまでここにいたほうがいいよ。」

誰もがどうしたらいいかわからないでいた。

余震は容赦なく絶え間なく私たちを襲った。

ゆれる度に建物からガシャガシャ何かがぶつかり合う轟音が響いた。






地震その時(再掲4)

2007-01-28 09:31:30 | ワブログから引っ越しました
「私はこれから越後川口ICに行くつもりです。そこまでは行かれますか?」

「あぁ、インターに何台かいましたよ。」

「ありがとうございます。高速は大丈夫かもしれませんのでインターに行ったほうがいいですよ。」



「分かりました。戻ってみます。」

車は私たちを後にした。



私は半身ずぶぬれで裸足なのに気づいた。

「よろしかったら、インターまで車に乗りませんか?」

「すみません、いいですか?」



ずぶぬれの私を後部座席に乗せ、車は動き出した。



3人を乗せた車はゆっくりと県道を越後川口ICへと向かった。

そこには満天の星空の下、滞留車両が数台取り残されていた。



「どこにもいけないんだ。いつになったら解除になるんだ?」

「管制室と連絡が取れないのでまったく判りません。」

「新潟へ行かないとなんだよ!」



川口町が孤立した?・・・



そこには不安定な空気が漂っていた。





料金所職員に一般道ではどこにも出ることが出来ない旨告げた。

「じゃ、私達どうにか道を探して向かってみます。気をつけてくださいね。」

「ありがとうございました。私はこのSAに勤務しているUと申します。

お名前は?」

「いやあ、名乗るほどではないです。」

「何処かでお会いしたら声を是非かけてくださいね。」

3人は別れた。



私は亀裂に落ちた拍子と裸足のため足先に擦り傷が出来ていた。

不思議といたみは無かった。

「すみませんが私に長靴を貸してくれませんか?」

「ちょっと、待ってね。」

快く事務所から持ってきてくれた。






地震体験(再掲3)

2007-01-26 19:08:16 | ワブログから引っ越しました
18時34分マグニチュード6.0.震度6強。

数軒先の家の窓ガラスがガラガラと崩れ落ちたのを確認した。

たてつづけに

18時36分マグニチュード5.1。震度5弱。



「じゃ、私行きますね。」

「すみません、よろしくお願いします。」



暗闇の中から中高生らしき声で

「こんな時車なんか乗ってんじゃねーよ!」

胸に突き刺さった・・



同僚の家を後にし。県道に出た。

「ねぇ、お父さん、私これから歩いていくわ。」

「危ないよ。だめだよ。」

「気をつけていくから。車を家に持ち帰ってもらえない?今度ゆれたら橋は渡れなくなりそうよ。」

「わかった。気をつけろよ。」

家族は別れた。



私は一人県道をひたすら登り続けた。

外灯が消え、真っ暗闇の中 私はエリアへとひたすら歩いた。

上り坂の中央には深い亀裂がはいっていた。

時折行き場を失った車のヘッドライトにそれが照らされていた。



県道の中央から左に進路を変えた時だった。

左足が空を蹴った。

・・・うわぁぁ・・道路の亀裂に落ち込んだ・・

あっ、足が着く。

慌ててショルダーバッグを探した。

胸まで埋まった底には地下水が勢いよく流れていた・・

少し離れた亀裂の底に横たわっていた。

携帯が使えなくなった。



「大丈夫ですか?」

暗闇の中から心配する声がした。

「よくわかりましたね。」

暗闇の中から若い男女が姿を現した。

「車のライトで落ちるところが見えました。」

「ありがとうございます。」

引き上げてもらった。

「どちらへ?」

「小千谷に行こうとしたのですが山本で橋が落ちたみたいでどうしょうか相談していたんです。」

「川口橋は通行できませんよ。」

一台車が通りかかった。

ゆっくりと坂を下ってきた一台の車は私達3人に気づき、ほっとしたように止まった。



「どちらに行くのですか?」

「17号に出ようかときたのですが。」

「川口橋は通れませんよ。」

「困ったなぁ・・今塩殿から来たのですが、その先は行かれないみたいです。」



・・・川口町西川口地区が孤立した・・・