日本の中央銀行制度を確立したのは、1881年大蔵卿に就任した松方正義だが、
それでは日本の中央銀行である日本銀行のモデルとなった中央銀行はどこかご存じであろうか。
ECB・・・いや、まだ出来てない。FRB・・・こちらの設立も1913年と日銀よりあと。
それならば歴史あるイングランド銀行か・・・それも違う。
実は「ベルギー」の中央銀行なのである。
松方正義は1876年に一時パリを中心に滞在しており、その際にフランス蔵相レオン・セーから、
日本が発券を独占する中央銀行をもつべきこと、さらにそのモデルとしては
歴史あるイングランド銀行などではなく、比較的設立が新しいベルギー国立銀行が良いのではないかといった助言を得おり、
このためベルギー国立銀行をモデルにして日本銀行は作られたのである。
(念のため、現在はECBの設立により中央銀行としての機能はECBに移管されている)
そのベルギーの国債格付けを、16日にムーディーズは従来の「Aa1」から「Aa3」に
2段階引き下げるとともに、見通しを「ネガティブ」にした。
ベルギーは先日、1年半ぶりにやっと暫定政権でなく正式の政権がスタートしたというのに
ムーディーズはこのときとばかりに格下げしてきたようである。
一応、理由はデクシアの救済に起因する想定外の負債を懸念材料としたそうであるが、とってつけた感じがなくもない。
これでまた経常黒字国のベルギーの国債の動向が心配になる。
ベルギーの格下げが今後のユーロ圏の国々の格下げのスタートとも見なされる懸念もある。
ところで統一通貨のユーロ圏という特殊事情下にあるから、ベルギーのような経常黒字国でも長期金利は上がるのか。
それは違う。長期金利は規制金利でもなければ、経済理論に即して動くようなものではない。
それは市場参加者により決められているものなのである。
長期金利を政府も中央銀行も動かせないことは、今回の欧州の動向を見ておわかりかと思う。
ECBが国債買入を躊躇しているのが問題と言うかもしれないが、中央銀行は国の救済機関ではない。
そもそも救済機関となること(国債の直接引き受け)は禁じられている。
なぜ禁じられているのか、それはいまさら言うまでもない。過去の歴史が教訓となっている。
いったん市場参加者により国債への信用が失われれば、予測不可能なリスクプレミアムがオンされる。
だからこそ、日本国債の急落を招かないようにするためには、
ベルギーと同様の経常黒字国の日本でも財政再建に向けた努力が必要なのである。
増税の前にやらなければならないことがあるというなら、早くやってほしい。
消費増税も歳出削減も何もかも先送りしておきながら、
年間50兆円近くの新規の借金を続けている国の国債が
このまま何事もなく、何年も国内だけで消化し続けられることのほうが考えづらい。