
あの日の宿の部屋からは、諏訪湖を眺めることができた。
諏訪湖は、新生代第三紀の終わり頃からの中央高地の隆起活動と糸魚川静岡構造線の断層運動によって、地殻が引き裂かれて生じた構造湖(断層湖)である。
冬期に諏訪湖の湖面が全面氷結し、氷の厚さが一定に達すると湖面の氷が昼夜の気温差に応じて膨張と収縮する為、昼間の気温上昇で氷がゆるみ、気温が下降する夜間に氷が成長するため「膨張」し湖面の面積では足りなくなるため、大音響とともに湖面上に氷の亀裂が走りせりあがる。
この自然現象を御神渡り(おみわたり)と呼ぶ。
御神渡りが現れた年の冬に無形民俗文化財に指定されている御渡り神事が八剱神社の神官により諏訪湖畔で執り行われる。
御渡り神事では、亀裂の入り方などを御渡帳などと照らし、その年の天候、農作物の豊作・凶作を占い、世相を予想する拝観式が行われる。
古式により「御渡注進状」を神前に捧げる注進式を行い、宮内庁と気象庁に結果の報告を恒例とする。
尚、御神渡りはその年の天候によって観測されないこともあるが注進式は行われ、観測されない状態を「明けの海(あけのうみ)」と呼ぶ。