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プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 小松左京「ゴエモンのニッポン日記」

2020年06月18日 | ◇読んだ本の感想。
まあわりと設定が適当。
作家の小松左京のところに知り合いの宇宙人が尋ねてきて、居候する話。
宇宙人は純粋にニッポンを理解しようとするが、その純情な目で見てみると
ヌッポンズンのやっていることは非合理的で納得出来ない。

――というネタで24回連載。いや、よく考えたねえ。

都市への人口集中は「都市生物」(超巨大ブラックホール的生物)になるための
前段階ではないのか。
車が機械とは信じられない。乗物獣だろう。そうでなければあんなに危険で
何をするかわからない暴走機械の設計をするとは思えない。
日本一のスラム街は数寄屋橋交差点。なぜなら空気の汚れ方が日本一。

……こんな要約ではまったくキレがないが、作品ではさすが博学の小松左京といった
キレとユーモアがあって、そこが面白い。


でもなあ。SFというジャンルの限界も感じた。

この作品は「アサヒグラフ」で1966年に連載されたものらしい。
(だが本の最後に初出として1996年と書いてあって、「え、そんなに新しい作品?
小松左京の感覚が古かったのか?」と思ったが、解説では1966年とある。
1966年の風俗としてならわかる。これは誤植か?だとすればかっこ悪すぎる誤植。ハルキ文庫……。)

1966年というと、もう50年以上前。それがいまだに風刺として機能しているのも
驚きと言っていいのだろうが、当然ながら古いものもあるわけで……
各家庭にFAXが普及すれば、原稿を紙で送る必要もなくなるし、という述懐は、
そんな日が訪れるのは夢のまた夢……という口吻で書かれている。

今はFAXどころかメール、リモートでテレビ出演も出来る。

作品に描かれているより未来に来てしまった読者は、その作品を当時と
同じキレでは味わえないだろう。ノスタルジーというわけではないけど、
ある程度手加減して読むことになる。
それが……いわば賞味期限があるSFの限界だなあと。

しかし年月が経ったことで発酵して別に出て来る味わいもあり、
そもそも50年前の作品が完全に賞味期限が過ぎているのであれば、
kindle版とはいえ今に残っていることはないのだが、
新しさを追求したジャンルが終焉を迎えている気がして少し淋しい気分になる。


まあでも「図書館戦争」までSFに含めるというのなら、
そこそこ現代でもSFジャンルは生まれているんだろうし、
設定だけでSFと読んで間口を広げるならば、昨今のアニメはかなりSFが多いしね。

新しい世界を見せられるドカンとした現代SFがあるなら読んでみたい。







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