プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ ディクスン・カー「皇帝のかぎ煙草入れ」

2024年04月05日 | ◇読んだ本の感想。
これは面白かったですね。

海外ミステリっていうと、翻訳のこともあり、通常けっこう長いのよ。
文庫本400ページがデフォルトなイメージ。
でもこれは300ページ。読むのが楽だったー。

そして話もサクサク進む。少なくとも序盤は。
小説としてはちょっと雑な気もするけれども、とにかくあっさりと話を始めてくれるのは
ありがたかった。序盤でひっぱられても飽きるもの。

そしてエサ撒きが派手。ミステリは、容疑者がたくさんいるスタイルと
容疑者がまったく見当たらないスタイルとがあるけれども、
これは容疑者がたくさんいるスタイル。しかもこれでもか!というくらい
手がかりをみせびらかす。
出てくる人出てくる人みんな怪しくて、5人目くらいから笑っちゃったよ。

そして犯人はだいたいごまかされてしまったのですっきりした。
そうくるとは思わなかった。そこか!そういう方法か!という驚き。
なるほどねえ。当時としてはかなり斬新な方法だったんじゃないかな。
カーのイメージではない気がする。

登場人物のキャラクターが善人になったり悪人になったり、目まぐるしく変わるところも
飽きずに読めた。タイトルから重厚なミステリを予想していたので、
読むのに少々めんどくささを感じていたが、比較的軽めです。ありがたい。

ちなみに皇帝のかぎ煙草入れの皇帝はナポレオンのこと。
「皇帝のかぎ煙草入れ」
「ナポレオンのかぎ煙草入れ」
……わたしの「皇帝」のイメージは一にローマ皇帝、二にドイツ皇帝、ナポレオンは
ナポレオンであり、皇帝という意識に欠ける。
まあでもイギリス人の直近の「皇帝」といったらナポレオンなのかな。
イギリス人にとってのナポレオンはどういった立場なのか不明だが。

と思ったら、カーってアメリカ人!?あらー。イギリス人だと思っていた。
今回の主人公がフランスに住んでいるイギリス人であることに引きずられただろうか。

わりと登場人物が実は実は実は、とくるくる変わる印象。
と思ったら、変わらない人は変わらなかったりして、これは奇術的な小説だと感じたな。
目くらましが得意。

ただ恋愛要素はいらなかったなー。
あの人の外見や年齢感は不明だけど、年齢も釣り合わない気がするし、
実際にあったら不正の匂いが漂うのではないだろうか。実際にあることではないけど。
ちょっとすっきりしなかった。

とはいえ、よく出来たミステリ。久々に読んだ。ただ100パーセント「ミステリ小説として」
フェアかというと、微妙なところではあるかもなー。



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