最初の5分くらいで見るの止めようと思っていて、しかし色の黒い男の子が
どんな役か気になって、結局最後まで見た。
最後まで楽しませてくれたんだけど……
途中で止めないで良かったとは思ったんだけど……
映画として評価できるかというと、そうでもない。
話が粗い。疑問が多いと乗れないんですよね。話に。
最初がお神楽のシーンで、それは斬新で上手く説明出来る、あとで使える手段
だったけど、主人公より先に別な子どもに最初にスポットが当たっちゃうのかーとか。
最初に親子の会話があって、パパママとおっこをちゃんと見せてからなら
お神楽を舞う子どもたちを映すのもいいけど、順番が逆ではないかと思った。
しかもその流れからすぐの交通事故でしょう。ちょっとハードすぎるわ。
この辺で止めようと思っていたところ、空中に消えていく少年が。
この少年が何なのか、という興味だけで録画を流し続けた。ながら見。
両親をそういう状態で亡くし、祖母に引き取られたはいいけど
唐突に旅館の後継ぎという役割を与えられ、それだけならまだしも、
広告紙に紹介されて、その存在がパプリックになってしまう。
逃げ場がないね。
本人が前向きに選んだ結果だという風に描いているけど、
絶対に無理しているようにしか見えないし、そもそも両親が死んだことを
深層心理下では納得出来ていない。そんな状態では絶対歪む。心が壊れる。
……と、決めつけるのも良くないと思うんだけど、あの状況でやっていけるのは、
スーパースペシャルガールだけだと思うんだよな。ナウシカ並みの。
ナウシカくらい特別な女の子だったら、あれくらい強くいられるかもしれない。
でも千尋のような普通の女の子に、カオナシを受け入れさせるのは
絶対に無理がある。と思うのでわたしは「千と千尋の神隠し」が納得できない。
「千と千尋の神隠し」の話になってしまったが、それと同じ意味で
この作品も納得できない。
レベルをいうなら、両親が交通事故で死んだ、という設定じゃなくて、
たとえば片方の親は死んでしまったにしても、残った片方は生き残って、
でも実は海外勤務の人で、おばあちゃんに預けなければならないとかさ。
遠く離れてはいるけど、親としてちゃんとサポートしてくれる温かい目の持ち主とかさ。
そのくらいならがんばれると思うんだ。淋しいけど、でもがんばれる。
でもおっこの状況で旅館の後継ぎという流れは……それは実際のところ強制だ。
逃げ場がないなかで選ばなければならない道。
そういう話に無理を感じた。
おっこが一人でマンションを閉めて出て行くところも。
そんな境遇の女の子が両親の死後、数日間たった一人で暮らしたってことでしょ?
父方のおじいちゃんおばあちゃんは?おじさんおばさんは?
母方の祖母以外天涯孤独の身の上ですか?
であれば、おばあちゃんはさすがにお葬式をしましたよね?
普通はその際に一緒におっこを連れて帰るだろうし……
小学生を一人で寝起きさせて平気でいるとは思えない。
なんであんな描き方をしたのだろう。
春野屋の規模も疑問。
ひなびた温泉旅館かと思いきや、絵的には割烹旅館的な設えの豪華さを感じる。
そうするとどう考えても人手が足りないだろう……。
客室は5部屋。けっこう広々とした間取りで、廊下や温泉、共用部分で
相当な平米になるはず。でも雇っているのは仲居1人と板前1人なんて……。
板前さんだって、客人数が少ないとはいえ、仕入れ、仕込み、まかない、洗い物、
すべてやるのなら厨房だけで手いっぱいだろう。
残りの掃除を仲居さんと女将さんだけでやるって?仲居さんの休みの日は
女将一人だけでやるの?あの広大な庭の草取りも?
万が一5部屋10人客が入ったら、料理運びと布団の上げ下ろしだけでも
2人でまかなえるとは思わない。ましてや1人が風邪をひいたら機能不全ですよ。
せめて仲居さんは3人だよね。今時週休2日なんだから、それでもぎりぎりだよ。
というようなことを考えると、宿をもっと民宿的にするか、仲居さんを増やすか、
どちらかが必要だったと思われるのだが、実に非現実的な設定になっている。
こういう部分にはリアリティを感じさせてほしい。
テレビ放送時はだいぶカットされたのかなー。話の繋がりに疑問に思う点があった。
鈴鬼が来るまで、客としては普通の客1組、あかね親子1組だけだし。
あかね親子を「変な客ばっかり連れて来る」に入れるのは疑問を感じるし。
水領さんが出て来たのはその後なんだよね。何とも出現が唐突で、
わけのわからない人だった。
全体的に大人たちみんな、おっこに心情を打ち明けすぎなんや!
特に最後のおっさんはなんやねん!自分が起こした(とはいわないが)交通事故の、結果的には殺してしまった人の話を、なぜ年端もいかぬ子どもにするのか!
周りにいるのは恐ろしい大人たちってことでよろしいか?
それに対して子どもたちはいいけどね。子どもたちっていっても、
映画ではおそらく尺の長さが足りなくて他の子はあまり描けなくて、主にピンフリ。
ピンフリはいいですね!小学生にして既にリーダーシップをとっているのが
不自然といえば不自然だが。これはまあスーパーガールとして描いてると
受け入れてもいい。
こんなにスーパーガールなら、クラスで浮いてるという設定にしなくても
良かった気がするけど。単におっこのライバルで。
ピンフリの図書室は良かったですね!「千と千尋の神隠し」を髣髴とさせるわけだが。
ピンフリが引用したヘロドトスに感銘を受けた。「習わしは万物の王」。
へー、ヘロドトスがそんなことを言っていたんですか。
この話、アニメのレギュラーシーズンでは24回×15分、原作は全20巻+番外編多数、
マンガも7巻というけっこうなボリュームのある作品らしい。
映画はこれらを切り取って成立させたようなので、ちょっと無理があるといえば
あるのかなー。本来は映画で描かれたもの以外にもたっぷり広がる話のようです。
楽しめたが、気になるところもまた多し、という結局いつもの感想に回帰する。
重箱の隅をつつくような部分を無視出来ればいいのでしょうね。
鈴鬼を含めた幽霊ズが好きだった。わたしの小さい頃にこういう存在がいたら、
と思った。でも最後はいなくなっちゃうんだよね。
ここがなあ……。小学生の子どもを主人公にして、なんと過酷な宿命をと思った。