ウェネトさまの館

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片山健の油彩画展(吉祥寺美術館)

2022年10月14日 20時30分03秒 | 展覧会・美術関連

数日前の話になりまするが、武蔵野市立吉祥寺美術館「片山健の油彩画展 濃密な記憶と懐かしい匂い」を観たのでございます。
https://www.musashino.or.jp/museum/1002006/1003349/1004111.html
(ロビーの展示風景のみ写真撮影可。作品単体の撮影は不可)


 
片山健、絵本を読んだ記憶があるくらいで、殆ど知らんかった。

本展は、絵本作家としてではなく、油彩画家としての片山健に焦点を当て、ロビーに展示の絵本原画25点も含め、98点の油彩画を展示。

フライヤーも2種類ございます。


 
まずは展示室からまいるぞよ。
構成は特にないゆえ、気になった作品の中から10点をリスト順に挙げておきまする。

《ざりがにとり》1979年 油彩、カンヴァス
電柱が林立する薄暗い風景の中、右手に真っ赤なザリガニを持ってキリッとした表情で立つ男児、背後に得体の知れない何か。ちと不安な気持ちになりまする。

《水蜜桃1》1985年 油彩、カンヴァス
植物が咲き乱れる鮮やかな庭と空が見える掃き出し窓。逆光の室内の隅っこで、無心に桃を食べる2人の子供とクワガタ。

《水蜜桃2》1985年 油彩、カンヴァス
掃き出し窓の手前のテーブルで、背伸びして桃を食べる兄と、桃に手が届かない弟が微笑ましい。
が、隅っこで桃を食べる犬が、口から血を流す人面犬めいて不気味じゃ。
植物がうねるような庭では、トラ猫が鳥を口に咥えておる。

《夜とユリ》1989年、1990年、1991年 油彩、カンヴァス
巨大な白ユリの下の女の子。ユリも夜空も大地もうねってゴッホチック。
女の子の足元のカボチャ(?)が、一瞬生首に見えてしもうた。

《ココロオドル日》1989年、1990年、1991年 油彩、カンヴァス
大きな黄色い滑り台の上に子供、空には風神雷神めいた子供が飛び、地面では黒犬とピンク犬が足を踏ん張って見合っている。何やら楽しくなりまする。

《夜の庭》1989年 油彩、カンヴァス
2種類のフライヤーの写真の上の作品。
集合住宅の庭、植物が茂る空間にちっちゃな女の子と、その倍ほども高さのある白ユリ。
女の子の背後の茂みに、セミめいた大きな虫が潜んでいてドキドキ。

《夜の庭》1993年 油彩、カンヴァス
2種類のフライヤーの写真の下の作品。
集合住宅のジャングルのような庭に2人の女の子。空や植物の表現や、集合住宅の各部屋の光景も楽しい。
が、女の子のひとりがスイカを包丁で真っぷたつに切った瞬間の、切り口の鮮やかな赤と女の子の表情がけっこう怖くてドキドキ。

《八月》2003年 油彩、カンヴァス
ひまわりの花から吊り下がる少女、倒れた少年の上に等身大のトンボ。何やら不穏な空気。

《船を浮かべる》2014年 油彩、カンヴァス
星空の下の海に、スーツ姿の巨大な男性が寝転がり、右手に客船を握っておる。
大人が登場する作品は数が少のうござります。

《鮫の影で眠る》1999年 油彩、カンヴァス
本やラジオを傍らに眠る女性の頭上に、歯をむき出した巨大な鮫。足元にはエイ。 

ロビーの絵本原画の展示風景は撮影可。


 
作品単体での撮影はダメじゃからの、絵本ごとに撮った写真を載せまする。

『コッコさんのかかし』(文:片山健)福音館書店/1996年 油彩、カンヴァス


 
『ぼくからみると』(文:高木仁三郎)のら書店/2014年 油彩、カンヴァス
生き物たちの視点から描かれているのが楽しい。


 
『どんぐりかいぎ』(文:こうやすすむ)福音館書店/1995年 油彩、カンヴァス
擬人化された木々。三日月の夜に目を光らせて飛ぶフクロウの作品(左上)ツボ。


 
『きつねにょうぼう』(再話:長谷川摂子)福音館書店/1997年 油彩、カンヴァス
きつねの嫁さまの切ないお話じゃ。うるうる


 
展示室入口の向かいの壁面は不可じゃが、絵本2作品の原画8点が展示されておりまする。

『わたしがおひさまだったら』(文:片山健)福音館書店/2004年 油彩、カンヴァス
原画4点。おひさまのような少女が可愛い。

『カンナのにわで』(文:片山令子)福音館書店/1993年 油彩、カンヴァス
原画3点。夏休みの小学校。白い大きな鶏がたいそうツボ。

初めて観た片山健のダイナミックな油彩の数々、個展のお題の「濃密な記憶と懐かしい匂い」そのものじゃった。
ゴッホなどの影響が興味深かったり、独特なユーモアにクスッと笑ったり、不気味さに不安感がヒタヒタ押し寄せたりして、たいそう観応えござりました。

ショップには、片山健の絵本や片山令子『惑星』などもあり、見本を手に取って見る事ができまする。
会期は11月13日まで。入館料300円。ご興味ある方はぜひ。

併設の2つの記念室も観ましたのじゃ。

萩原英雄記念室「紙上に広がる宇宙」は、木版画22点の展示。
https://www.musashino.or.jp/museum/1002009/1002011.html

浜口陽三記念室「やわらかな黒」は、カラーメゾチント20点の展示。
https://www.musashino.or.jp/museum/1002009/1002012.html
こちらも会期は11月13日まで。

★おまけ話
本日は、楽しみにしていた個展の初日や、とっくに始まっているグループ展に行くつもりじゃったが、お供のEがちと体調を崩して寝込んでしまい、どこにも行けんかった。無念~(涙)

★本の話
澤村伊智『怪談小説という名の小説怪談』
7つの短編集。物凄く怖いわけではないけどジワジワ不気味で、最後ドンデン返しがあったりも。
「笛を吹く家」「こうとげい」「うらみせんせい」あたりゾワゾワ来る来る~。