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ウェネトさまの館

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「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」(千葉市美術館)

2017年09月26日 06時24分10秒 | 展覧会・美術関連

ちと日が空いてしもうたが、前々回の日記の続きでございます。

船橋で木村佳代子展を観た後、千葉市美術館「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」を観ましたのじゃ。
http://www.ccma-net.jp/exhibition_01.html


春信の浮世絵は、華奢で可愛い美人さんの体の動きやら、繊細な線やら、お洒落な着物やら大好きゆえ、開催前から楽しみにしていたのでございます。

ボストン美術館の所蔵品約150点が、プロローグからエピローグまで、以下の7つの構成で展示されております。
参考出品として、千葉市美術館蔵の作品も9点。
気になった作品なども一部挙げておきまする(春信の作品は名前省略)

【Prologue 春信を育んだ時代と初期の作品】

春信の先行絵師たちと春信の初期の作品で、錦絵(多色摺木版画)以前の紅摺絵。

奥村政信《馬上の若衆と物見窓の女》
若衆とお馬さんの気飾りっぷり、わたくしも窓から覗きたい。

《「朝鮮人行烈」》
春信初期の紅摺絵なのも、朝鮮通信使の音楽隊の様子も興味深い。

【Chapter 1 絵暦交換会の流行と錦絵の誕生】

春信の錦絵は、武家や商家の趣味人を中心に絵暦の交換会が流行した事をきっかけに誕生したのですな。
オーダーメイドの初版と、後に商品として出された後版が並べて展示してある錦絵は、違いもはっきり分かりまする。

《夕立》
もの凄い風、吹っ飛びそうな華奢な美人さんの描写がツボでお気に入り。

《龍の飛び出す鉢を持つ女》《鳳凰に乗って空を飛ぶ女》は不思議ちゃん・・・と思うたら、見立絵じゃった。

【Chapter 2 絵を読む楽しみ】

作品の中に古典物語や故事の名場面が潜む「見立て絵」や「やつし絵」は、観る方にも教養が求められますのぅ。
ここでは丁寧なキャプションがあるゆえ、教養のないお供のEでも大丈夫(ばきっ)

《女三宮と猫》
リードをつけた猫を見返る女三宮が可憐で可愛さ炸裂。
これは柏木が恋心を抱くのも無理からぬことじゃ。
薄緑色の床、黄色の御簾、ピンク色の廊下など、色彩も可愛くてお気に入り。

【Chapter 3 江戸の恋人たち】

男性も皆、女性の如く華奢で中性的で優美でございます。

《雪の門前の男女(見立鉢木)》
お洒落カップル。

《「寄菊」夜菊を折り取る男女》
闇夜の中、見つめ合いながらこっそり菊を折り取る男性が女性よりも華奢。

【Chapter 4 日常を愛おしむ】

子供に愛情を注ぐ母親や、遊ぶ子供たちが微笑ましゅうござります。

《猫と鼠を抱く兄弟と娘》
幼い弟が抱える猫が、兄の懐の白ねずみを狙い、姉が見守るの図。
当時、大黒様のお使いである白ねずみを飼う事が流行ったそうな。

《五常「智」》
ふたりの少女も、少女の後ろから手を取って教える女性も、体の曲線や手などの細部まで美しくツボ。

【Chapter 5 江戸の今を描く】

当世の興味を直接刺激する、大衆向けの主題に変わってまいります。
「浮世美人寄花」は、当時の江戸に実在した人気の美人たちの揃物。

《鍵屋お仙と猫を抱く若衆》のお仙と、《「当世七福神」 恵比寿と本柳屋お藤》のお藤は、江戸の人気を二分した美人だそうな。

《風流江戸八景  両国橋夕照》
立っている細~い美人さんの着物がモダ~ン。

【Epilogue 春信を慕う】

春信の急逝後、春信を慕う絵師達は春信に倣う画風の錦絵を描いたのでございます。
なれど・・・やはり春信には敵いませぬのぅ。

鳥居清経《春信追善》
お仙とお藤が見ている柱絵の中には「春信画」と書いてありまする。

観応えありありな展覧会でありました。
保存状態が素晴らしく、鮮やかな色彩や、くっきりした空摺りやきめ出しなどにも目が釘付け。
構成も楽しく、キャプションも分かり易うござります。

会期は10月23日まで。
平日の昼間でまだ空いておりましたゆえ、ご興味ある方は混み出さぬうちにお早目に。

お写真撮影コーナー。


同時開催は「江戸美術の革命-春信の時代」
http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2017/0906_2/0906_2.html

春信の時代である1751年から1771年の20年間に絞り、円山応挙、曾我蕭白、伊藤若冲などの作品が。

最後の小さい展示室には、春信を敬愛した近現代の作家、フリッツ・カペラリ、橋口五葉、鏑木清方、小村雪岱や、現代の小川信治の作品が展示されております。

「鈴木春信」展からのこの流れも、興味深く良い展示でありました。
こちらの会期も10月23日まで。