以下 10年以上前に存在していたHPに掲載されていた情報のコピペです。
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丹田(たんでん)呼吸の話
丹というのは不老長寿の薬のことである。その丹を作る場所を丹田と呼び、
へそ下三寸にあるとされる。丹を作るのには道具も材料も人手も要らない。
丹田呼吸を実践すれば、自ずから丹田にできてくるのである。
古来、多くの人が丹田呼吸を実践して病気を治してきた。
日本の養生法は、ほとんどが丹田呼吸に関係している。
妙心寺の管長をされた山田無文老師も、若いとき結核に冒されて医者から見放されたが、
丹田呼吸法で病をしりぞけたのだった。
丹田呼吸とは
丹田呼吸とは、横隔膜を押し下げながら腹筋を収縮させて、下腹部の丹田につよい力をかける呼吸法である。
慣れてくると、横隔膜は十センチ以上も押し下げることができるという。
横隔膜を押し下げた圧力が腹の底まで達するので、丹田まで空気が入るわけではないが入ったように感じる。
呼吸を大別すると、胸でする胸呼吸、
横隔膜をつかう腹式呼吸、横隔膜と腹筋群とを使う丹田呼吸がある。
さらに丹田呼吸は、息を吸う時と吐く時の二つに分けることができる。
吸う時に下腹部に力がかかるのは当然としても、吐くときに強い腹圧がかかるのはおかしいと思うかも知れないが、
吐くときの方が強い圧力をかけることができる。
これは横隔膜と腹筋と胸縮筋群が協力して収縮するからだという。
だから、息を吐きながらの丹田呼吸がいちばん効果がある。
腹の底から笑うことがたいへん健康によいのは、吐きながらの丹田呼吸であることも一つの理由なのである。
なお、呼吸を止めていても腹圧はかけることが出来るが、息を止めて力むのはよくない。
胸にも力がかかって心臓を圧迫し、血圧が上がって脳出血につながることがあるからという。
丹田呼吸の原理
丹田呼吸をすると、その強い圧力で腹部にある内臓の静脈血が心臓のほうへ押しあげられる。
そして、そこへ新たな動脈血が流れ込む。このことが繰り返されるので、内臓の働きが活発になる。
また、横隔膜を下げると、胸の体積が大きくなり心臓が動きやすくなる。
心臓が血液を吸い上げるためにも胸部の圧力は低いほうがよい。
こうして、丹田呼吸は第二の心臓の役目も果たすのである。
さらに、腹腔(ふっこう)の中には重要な自律神経の叢(そう。かたまり)がある。
その代表が太陽神経叢(たいようしんけいそう)で、横隔膜のすこし下の腹部大動脈の周辺にある。
丹田呼吸すると太陽神経叢に刺激をあたえ、自律神経の働きが活発になり内臓の働きを調えてくれる。
自律神経の中枢は間脳にあるが、間脳は怒りや恐れ、
おどろきなどの情動によって左右されやすい位置にある。
間脳の自律神経が感情の影響でみだれていても、
太陽神経叢がしっかり働いていると自律神経を調整することができる。
要するに丹田呼吸は精神安定剤としても機能するのである。
丹田呼吸の効果
私は毎日、数時間の坐禅をしているが、内臓の調子がととのい、身体が軽くなり、
寒いときでもポカポカとしてきて頭もさえてくる。接心で一週間すわり通せるのは丹田呼吸のお陰である。
いい考えが浮かぶことも多いので、いつも手帳を用意している。
難しい問題で迷っている時、姿勢を正して丹田呼吸をしていると、
もつれているように見える糸がほどけてきて最善の道が見つかるものである。
したくない仕事をする時とか、仕事がたまって何から手を着けていいか分からない時など、
丹田呼吸で腹をすえてから取りかかると、心の抵抗がなくなりすんなりと着手することができる。
仕事は手を着けるまでが面倒なのだ。
夜、幽霊の出そうな所に行かなければならない、などという時に丹田に力をこめていると不思議と怖くないものである。
それは恐怖心が出てこないからで、命のやり取りをした昔の剣客が腹の鍛錬を重視したのは当然のことだと思う。
恐怖心に取り付かれてしまうと、正しい判断ができなくなるし、第一に身体が動かなくなってしまう。
動中の工夫
丹田呼吸の方法はいろいろあるが、私のやり方はいたって簡単で、鼻あるいは口でもよいが、
口笛を吹くように息を吐きながら、下腹に気を押し込めるようにして力を加えていくだけの事である。
吐きつくせば自然と息は入ってくる。二分ぐらいは息が残るので、それは無理に吐きつくさない。
呼吸は吐く息を主とするが、慣れてくれば吐くときも吸うときも力が抜けなくなる。
丹田呼吸は、歩いていても、寝ていても、運転していても、料理を作っていても、
どんな時でも実行できる。ひまを盗んでは妄想をかいて自分を苦しめているよりも、
時間があったら丹田呼吸を実行していただきたい。心のお荷物を下ろして爽快な気分になる。