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宇宙時間 ソラノトキ

風樹晶・かざきしょう

勝手に趣味ブログ
のんびりしようよ

月影の門 18

2009-03-02 08:56:27 | 小説 月影の門
「う~ん、いいでしょう。しかし、まだ安全が確認されていませんので気をつけて下さい。一応、護衛もつけますが・・・」
 この施設に二人が来て一週間後、受付担当の人(ワカバさんと言うそうだ)護衛と言う形で車と運転手を出してくれることになった。
「では、行きましょうか」
 この声は、この間の運転手君だ。車は、ちゃんと窓ガラスが入ったものだった。別の車か直したのか・・・・別にいいけど。
 車の後部座席にマドカとミイコが乗り込むと、車は走り出した。
「そう言えば、お二方。携帯電話はお持ちですか?」
 助手席に座る男が振りかえった。この声も確かこの間の・・・・。聞いてみると、やっぱりそうだった。
 運転席にいるのがセイジ君、助手席にいるのがトキワ君だ。
「携帯電話、バックごと置いてきちゃったのよね。あの店に」
「そういえば、荷物置きっぱなしだよな」
 ミイコとマドカの台詞に
「店って、この間の・・・」
 前に座る二人が顔を見合わせる。
「そう。出来れば、アパートに行く前に寄ってもらいたいんだけど・・・・、無理?」
「ちょっと、待って下さい」
 トキワが無線で確認を取った。
「はい、・・・・了解しました」
 無線を終えたトキワに視線が集中する。
「OKです。ただ、あそこには、まだモルドが潜んでいる可能性がありますので、そうですね・・・・置いてきた荷物を取りに行くだけにして下さい。すぐに出発しますから。それから、住んでいたと言うアパートにも出来るだけ長居しないように、お願いします。必要なものは、生活に必要なもののほとんどは、本部にもおいてありますから」
 その言葉自体に、出来れば危険なところには行きたくない。という気持ちが思いっきり現れていた。
 ついでに言うと、運転手のセイジもトキワの言葉に思いっきり頷いている。
 それほど、恐ろしい存在なのだろうかモルドというのは?
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月影の門 17

2009-02-25 21:17:13 | 小説 月影の門
 とんとん
 ドアの音で、ふ と意識が戻った。
 ぼんやりとした頭で体を起こす。
「・・・はい」
 ボケた声で返事をして、ドアを開ける。と、そこにいたのは、マドカだった。
「あ、悪い。寝てたか?」
「ん、大丈夫。どうぞ」
 大きくドアを開く。
「これ、作ってくれた」
 マドカが持っていた包みをミイコに渡す。
「なにこれ?」
「それ、厨房の人が作ってくれた、おにぎり。お前、あんまり食べてないから、後で腹減るだろうからって。それとお茶」
「へぇ、わざわざ作ってくれたの? あとで、お礼言わなきゃね」
 ミイコが包みを開けながら、マットレスの上に座った。
「二つあるけど、マドカちゃんもたべる?」
「いい。俺、さっき食ったし」
「そう・・・・。ところで、一度部屋に戻れないかな」
 おにぎりにかぶりつきながら、ミイコがマドカに言う。
「戻るって?」
「だって、あと十日もすればって言ってたけど、それまで着の身着のままってのもなんだし。お店にバッグも置いてきちゃったし」
 現在、自分の部屋がどうなっているか見てみたいと言う好奇心もある。それに、もしかしたらトシが部屋に戻ってるかもしれない。
「ま、俺は別にかまね~けど。そんじゃ、さっきの人に聞いてみるか?」
 しょうがねえなぁ。と言う感じで、マドカがミイコの隣に寝転がる。
「うん。行くときは、あたしも一緒に行くから、よろしく」
 一緒に入れてくれたお茶を飲みながら、残りのおにぎりを口に放り込んだ。

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月影の門 16

2009-02-24 22:26:52 | 小説 月影の門
 月の光の中で別の存在に変化をしていくトシ。
 蒼く輝く外装に包まれ、触覚と白く透き通る翅が月の光に輝かせて。夕陽色に輝く瞳でこちらを見て、そして・・・・。
「ミイコ」
 突然、手で目元を覆ったミイコの顔をマドカが覗き込んだ。
「大丈夫か? 顔色悪いぞ」
「う~。大丈夫」
 じゃない、頭痛てー。これは、かなり強烈だ~。むりやり、ねじ込まれた感じ。何なのこれ。
「部屋、戻るか?」
 マドカの言葉にミイコが頷いた。
「じゃ、ちょっと待ってろ。これ、戻してくるから」
 マドカが二人分のお盆をカウンターに戻し、ミイコを抱えるように立ち上がらせる。
 ミイコとしては、しばらく休めば頭痛が引くのは分かっているが、出来れば静かなところでゆっくりと確認してみたかった。
「それじゃ、隣の部屋に居るから、何あったら知らせろよ」
 ミイコを寝かせ、毛布をかけたマドカがそう言ってドアを閉める。すぐに、隣の部屋のドアの音が聞こえた。
 それを聞いたミイコ、ふぅ と息を吐き、目を閉じて呼吸を整えると意識を集中する。
 さっき見た蒼いその姿をもう一度脳裏に映し出す。少しずつピントを合わせるようにその姿を呼び起こしていった。

 薄暗い廊下を泣きながら男の子が歩いている。
 あぁ、この子は・・・・。月の光の子だ。
 右手であふれる涙をぬぐう。
 その子が顔を上げて言った。
「左手が、動かないんだ」
 見ると、その左手というか左腕は、子供の腕とは思えないほど細く筋張り青緑に変色していた。手の指は細く爪は尖り、だが全く動く気配はなく、モノのように肩からぶら下がっていた。
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月影の門 15

2009-02-23 22:03:17 | 小説 月影の門
 当たり前のことだが、ここにいるもの達は、全員ヘルメットを脱いでいた(じゃなければ、食えないって)。
 食堂のカウンター近くに昨日受付をしてくれた男を見つけ近づくと、向こうもこちらに気づき手招きをしてくれた。
「お早うございます。お休みになれましたか?」
 穏やかそうな表情で、“どうぞ”と目の前の椅子を指差す。
「え、え、まあ・・・」
 あいまいな返事をするミイコに
「あと、十日もすれば住まいへ戻れると思いますので、それまで窮屈でしょうが我慢してください」
 言って自分の食事を中断し、二人分の食事を注文してくれた。
「あの、直で伺いますが、トシ・・・私達の連れは、見つかりそうでしょうか?」
 目の前に定食の乗ったお盆を置き、目の前に座る青年に問いかける。
「そうですね・・・。今のところ何とも言えません。昨夜も遅かったですし、捜索開始は今日からになるでしょう。ただ、お二人が見たと言うモルドの件もありますし。場合によっては、別働隊が保護している可能性もあります」
「別働隊・・・・て?」
「あぁ、我々の他にも部隊がいくつかありまして、元々はアトフという一つの組織だったのですが、以前モルドの大群に襲われて、本部が壊滅。かろうじて支部の生き残りがこうして細々と活動していると言う有様なんですよ。せめて、・・・・アーマーが残っていれば・・・」
 彼はため息をつき、次の瞬間また穏やかな顔になって
「あ、どうぞ、さめますよ。食べ終わったら、そこの返却口に戻してください。何かあったら報告します。では・・・」
 そう言って、二人に軽く会釈し席を立った。
「まあな、昨夜の今朝じゃ無理か・・・」
「そうね・・・」
 二人隣り合ったまま、無言でもそもそと朝食をとる。
 と、突如、ミイコの脳裏に昔見たトシの姿がフラッシュバックのようによみがえって来た。
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月影の門 14

2009-02-11 20:30:03 | 小説 月影の門
 マドカが慌てて立ち上がり、ミイコに手を振って消える。それを確認して、ミイコがドアを開けた。
「はい?」
 ドアの前に立つ男が、部屋を覗き込むようにして尋ねた。
「だれか、いたのですか? 話し声が聞こえたようですが・・・・」
「え、いいえ。私だけですが・・・・、なにか?」
「あの、声が聞こえたようでしたので」
「あら、それ、多分、私の声です。考え事する時、独り言を言う癖があるので。でなければ、ラジオの音でしょう」
 言って、部屋の奥に戻りラジオのスイッチを切った。
 まさか、マドカがいたとは言えない。いや、別にいてもいいんだろうけど、なんとなく。
「そうですか」
 まだ、その声には疑問が残るようだが、ミイコ以外、現在誰もいない。
「あの、何かあったんですか?」
 突然、呼びに来たからには、何かあるのではないかと思ったのだが
「いや、食事の時間なのですが、もしわれわれと一緒でよろしければと思いまして。それとも部屋の方がよろしいですか?」
 食事か、そう言えば、外が明るくなっている。いつの間にか、窓の外から朝日が差し込んできている。
「あ、伺います。・・・・マドカは」
「呼びますか?」
「そうですね。自分だけのけ者にされたら怒ると思いますし」
 言って、ミイコは、マドカを誘い迎えに来た男について食堂へ入った。

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月影の門 13

2009-02-10 21:40:15 | 小説 月影の門
 突然のマドカの台詞に、ミイコがきょとんとした目で隣の男を見る。
「ぱわれるわーど?」
「じゃなくって、パラレルワールド。おい、しっかりしろよ、現役大学生パラレルは平行、世界はワールド。で二つ合わせてパラレルワールド。」
 そう言えば、スキーでパラレルってあったな・・・・確か、スキー板を平行にして滑るってやつで・・・・・そうじゃなくって。
「パラレルワールド」
「そう」
「平行世界」
「うん」
「なんで?」
「何でって、ただそう思っただけだっての。たかが一瞬のうちに店があんなになったり、周りが瓦礫の山になってたり、それに今までに見たことあるか、あんなやつ。だとしたら、ここは、今まで俺らがいた世界じゃない、って思ったわけだ」
「見たこと    あるよ」
 そう言った、ミイコの言葉に今度はマドカが彼女を見返した。
「見た事 あるって、いつ?」
「小学生の頃、一度だけ」
「ただ、その事は、思い出したくないから」
 ミイコの言葉にカドカは、それ以上聞こうとはしなかった。と言うより、聞けるような雰囲気ではなかった。
 二人が並んで黙り込むこと数分後、ドアがノックされた。
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月影の門 12

2009-02-09 21:54:25 | 小説 月影の門
「おぅ、どうだ?」
 言って、マドカが部屋を見回す。
 彼は、不思議な力を持っている。瞬間移動・テレポテーション というヤツだ。自分の知っているところであれば、どこへでも飛べる。知らないところであっても、同行者が知っているところであれば一緒に飛ぶことも可能だ。
 知っているといっても、本で読んだところとか映画で見ただけのところというのは無理だが、自宅から知人の玄関先とか今回のような隣の部屋などなら、訳はない。
 それでも、ミイコは女の子(二十歳過ぎてはいるが)なので、気を使って合図をしてくれる。
 元のアパートのときからの習慣だ。
「どうって、別に・・・」
 うろうろ歩き回って、結局ミイコの隣、マットレスの上に腰を下ろした。他に座るところがない。ま、床の上でも座れるのだが、あまりきれいとは言えない様なので・・・・。
「大丈夫かな、トシくん」
「う~ん。場所さえ分かればな~。どうやら地理は、元と同じようだし。お前さんの力で何かわかんねーか?」
 ミイコの力、というか能力。彼女もいくつかの能力を持っていた。一つは、予知。と言っても、はっきりした意味を成さない映像や音、あるいはメッセージを事前に感知するもので、その時が来てそういう意味だったのかと気づく程度のもの。それから、弾く能力、これは、自分の身の回りに危険が迫った時、その危険と思われるものを弾き飛ばすという能力。そして、浮遊能力・レビテーションというやつ。これは、それほど高く飛べるわけではなく、飛び降りるときパラシュート代わりになるかな? という程度のもの。
 ほかにも、開発しようとすれば色々な能力が見つかるのだろうが、今のところ生活に役立つほどの能力ではないので、放ったままなのである。
「無理よ、わかるったっていつも受信専用だもん。それも、あまり意味のないものばかりだし」
 そう言ってから、昔見た映像を思い出した。
 月の光の中、別の存在に変化していったトシの姿。そして、子供の頃に知ってしまった自分の正体。
「う~ん、なんか嫌なこと思い出しちゃった。マドカちゃんが、変なこと言うから・・・・」
「俺のせいかい」
 ミイコの八つ当たりだ。分かってはいるが・・・・。マドカが相手だと、つい色々言ってしまう。
 家族とも違う、友人や恋人とも違う(マドカはすでに彼女がいる)ただのアパートのお隣さんなだけなのに・・・。
「もしかしてさ、ここ、パラレルワールドってやつじゃないか?」
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月影の門 11

2009-02-08 21:39:44 | 小説 月影の門
 車がフェンスを越えて、大きな建物の前で止まる。
「こちらです」
 そう言った男に続いて建物に入る二人。
 その中で、事情徴収?らしきことが行われ、二人が住んでいた住所を言ったところ、つい最近モルドの襲撃を受けたため、避難勧告が出ているという。さらに、避難勧告が解除されない限り戻ることは出来ないため、しばらくここに滞在するようにと部屋を与えられた。
「あの、私達の連れは・・・?」
 事情徴収した担当らしき男にミイコが声を掛ける。
「現在、捜索中です。ただ、万が一ということも覚悟してください」
 冗談ではない。
「大丈夫だろう。あいつ、足が速いし。何かあっても逃げ切れるんじゃねーか」
 そういってくれるのは、マドカちゃん。でも、あんなのに襲われたら・・・・。
 不安は、どんどん大きくなる。そこへ
「ここも、絶対安全とはいえません。出来るだけ、この建物から出ないで下さい。何かあれば、また連絡します」
 不安をあおる言葉を残し、部屋へ案内してくれた男が廊下を戻っていった。
 一応、男女ということで、別々の部屋を用意してくれたようだ。いつまでも廊下に突っ立っている訳にもいかないので、それぞれ部屋に入ってみた。
 部屋の大きさは、4畳半位。あまり広くはないが、家具などがほとんどないのでそれほど狭いようには感じない。
 あるのは、マットレスと毛布。小さなテーブルと小物入れ(小物置き?)とラジオ。
 未だに情報のないトシのことは気になるが、とりあえず、朝までやることはないし、マットレスの上に毛布をかぶって横になった。
 しばらくは目が冴えて眠れなかったが、いつの間にか寝入ってしまい、ふと目が覚めてラジオに手を伸ばしてボリュームを絞って、聞くともなく聞いていると、どんどんどん と壁を叩く音が聞こえた。
 合図に どん と一回叩き返す。
 ゆん  と空気が揺れて、カドカがミイコの部屋に姿を現した。

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月影の門 10

2009-02-07 22:06:51 | 小説 月影の門
 硬い皮に包まれた緑色の巨体。様々色の長い爪、鞭のようにしなる触手。
 車は一度バックし、フルパワーでソレに突進した。触手がうねり、窓ガラスに直撃する。
 びしり 
 窓ガラスに白くひびが入る。それでも止まらずに直進する車にソレの方が避けた。
 しばらく走り、スピードを落とすと運転席の男が窓ガラスを叩き割り、視界を確保した。
「もう、出て来ねえよな」
「そう願うしか、ねーだろうが。お前が無茶すっから・・・」
「しゃーねーだろうが、あの場合」
 運転席と助手席での会話を交わす二人の男。黒い防護スーツにフルフェイスのヘルメットのため二人の表情は見えないが、声からすると若そうだ。
「あ、大丈夫でした?」
 後部座席に座る二人の存在を思い出したように、助手席の男が振り向く。
「あ、はい。大丈夫です」
「ちょっと、びっくりしましたけど、あはは」
 言った後、こっそりため息をつく二人だった。
 それにしても、心臓に悪いわよ。ミイコがそう思うのも仕方ないだろう。

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月影の門 9

2009-02-06 09:18:08 | 小説 月影の門
「かなり、危険です。奴等は、人間を好んで襲います。そして、襲った者になり代わるのです。奴等に生半可な攻撃は、ききません。あの皮に弾き返されてしまうのです」
「ね、トシ君が・・・」
 ミイコが、マドカの袖を引っ張る。
 ミイコの様子に、
「他に誰かいるのですか?」
「あの、男の子・・・と言っても、あたしと同い年なんですけど、・・・・え、と」
「ついさっき、はぐれてしまって。俺たちは、あの緑の・・・モルドですか、あれを見たので慌ててここに逃げ込んだのですが」
 マドカがミイコの言葉を引き継ぐ。
「NO.35」
 男が入口近くにいた一人を呼んだ。
「その、彼の特徴は?」
「え、青いシャツにジーンズ。身長は、この人よりすこし低いくらい。それから・・・」
「確か、ブレスレットつけてたよな、左の手首に・・・青っぽいの」
「分りました。それから、はぐれたというのは、どこですか?」
「この近くです。さっき、モルドを見たのと同じところ・・・」
 マドカが言い終わるか終わらないかのうちに男が指示を出す。
「すぐに行って、保護しろ。それから、君達も早く」
 男について、外にあった車に乗り込む。
「・・・はい、こちらで二名保護しました。他に一名いるとのこと、現在保護に向かっています。   はい、了解しました」
 前の座席に座った男がどこかに報告をしている。
 そ、それにしても、瓦礫の中を走る車と言うのは、揺れる。あの人は、この舌をかみそうな情況でよくしゃべれるな。
 意味もなく感心しているところで、車がガクン とつんのめる様に止まった。

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月影の門 8

2009-02-05 20:44:07 | 小説 月影の門
 足音が近づき、がたん と、ドアが押し開けられる。
 そこに現われたのは、黒い防護服に身を包んだ機関銃のようなものを抱えた集団だった。
「お前達、・・・MOULDHIANか?」
 戸口から入って来た数人が、こちらに銃を向ける。
「しっかり、つかまってろよ」
 マドカが小声で呟く。それに、ミイコが小さく頷いた。
 と、建物の外で声が聞こえ、また一人戸口から入ってくるものがいた。
「おいこら、そんな乱暴な事をするんじゃない。怖がるだろうが」
 その男が入ってくると、集団が一斉に銃をおろす。
「失礼した。現在、この区域でモウルディアンの出現が確認されていたもので、連中も気が立っているんです」
 頭を下げる男に、マドカが反応した。
「モウルディアン って、もしかして、緑色のでかいやつ・・・」
 そう、さっき、店の外でみた2メートル以上はあろうかとおもわれる巨大な人影。しかし、人ではないのは、明らかだった。
「それを見たのですか。どこで?」
 男の声が大きくなる。
「え・・・、さっき、そっちで」
 と、マドカがドアのほうを指差す。
 お互いに顔を見合わせる影法師の集団。
「NO.50以下五名、すぐ調査に向かえ。逃がすな。それから、君達、一緒に来てもらえますか? モルドが出現したとなるとここは、危険です」
 危険という男の言葉に、ミイコが反応した。
「あの、危険 なんですか? その、モルドというのは」
 自分は、モルドを見てはいないが、それが危険な存在だとしたら・・・・。

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月影の門 7

2009-02-03 21:23:37 | 小説 月影の門
 マドカは、身の危険を感じて、ミイコを連れて店の中に逃げ込んだつもり、だった。それなのに、ドアを閉めて気がつくと、全く違う・・・いや、場所は、同じところだろう。しかし、年月がたち廃墟に近い店・・・であった場所、とでも言えば良いだろうか。
 埃の積もったテーブル、ひび割れたガラス窓、床には食器類が散乱し、カウンターの仕切りも外れて床に落ちていた。
 さっきまであんなに賑やかだった店内も、ミイコとマドカ以外誰もいない。
 額の違和感は、いつの間にか消えていた。
 ミイコが立ち上がって、ぱんぱん と、服のほこりを払う。
 月の光のお陰で、電気のついていない店内でも結構明るかった。
 割れた食器を除けながら、割れたガラスから外を見る。
「いったい、ここ、どうなってるの?」
「爆弾でも落ちたのか? それとも、竜巻でも通り過ぎたとか・・・」
 マドカがそう言ったのも、無理はない。窓から見えたのは、瓦礫の世界だったのだ。
 2人で顔を見合わせていると
「おい、誰かいるのか?」
 数人の瓦礫を踏む音と共に声が聞こえた。
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月影の門 6

2009-02-02 21:18:03 | 小説 月影の門
「でも、あれ、外ってこんな暗かったっけ?」
 マドカの台詞にミイコが辺りを見回す。
 確かにおかしい。普段は、近所の看板や街灯のあかりがあるはずなのだ。それなのに、見事な真っ暗闇。墨を流したような、とは、こういう事をいうのであろう。
「ね、あれ」
 ミイコがマドカをつつく。
 その指し示したほうを見ると、ぼんやりとした月明かりの中に見える人影。
「あれ、トシ君じゃない?」
「本当だ。何やってんだ、あいつは」
 トシ以外にもいくつかの人影が見え、次の瞬間、マドカがミイコを抱えるようにドアの影へ転がり込んだ。
「ななな・・・、何なのあれ。それに、ここ何処よ」
 床の上にへたり込んだまま、辺りを見回すミイコに
「俺が知るか」
 マドカがぶっきら棒に答えた。
 実際、答えようがないのだ。マドカ自身、何が自分の身に起こったのか理解できないでいるのだから。
 まさしく“ここはどこ、わたしはだれ”という状態なのだ。

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月影の門 5

2009-02-01 12:13:23 | 小説 月影の門
 その日は、満月だった。
 大成功のライブ終了後、打ち上げでミーシャに集まる面々。そこには、招待客としてミイコやマドカもいた。
 店は、勿論貸切。
 狭い店内いっぱい押し合いへし合い状態の打ち上げとなった。
「おい、坊。これ持っていってくれ」
 カウンターの向こう、店長から料理を盛った皿が出される。それをトシが受け取り、テーブルへ運ぶ。
 結局のところ、店長と店員一人では人手が足りずトシを含め、ミイコやマドカまでが手伝う破目になってしまったのである。
「おまえらは・・・」
 トシが怒るが、出来上がった連中は、お構いなし。
 まあまあ と、怒るトシを宥めながらも厨房を手伝うミイコやマドカ。
「あ、やべ。ソーダがねーや。ちょっと、そこのコンビニへ行って来る。しばらく、頼むな」
 店長が上着を羽織り、店を飛び出していった。
 店員の春木さんは、店内でお客さん相手にてんてこ舞い。厨房には、ミイコ・トシ・マドカの三人だけ。
「あ~あ、アンちゃん。ドア、開けっ放しで・・・」
 トシが、ドアを閉めた時、東の窓から月の光が差し込んできた。
 と、なぜだか、店内の音が遠くなったように思えて、厨房の三人が顔を見合わせた。
 店内は、相変わらず騒ぎが続いている。
 月の光がトシを照らす。と、ミイコは、額に違和感を感じ、
「トシくん、ちょっと、ドアあけて」
 慌てたようなミイコの声にトシがドアノブに飛びつき、勢い余って厨房から飛び出してしまった。
「うわっ」
 ドアの外から聞こえたトシの声に、ミイコとマドカがドアの外を覗くと・・・・・。
「あれ、いない?」
 ミイコとマドカが顔を見合わせた。

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月影の門 4

2009-01-31 21:04:57 | 小説 月影の門
「それじゃ、ライブ頑張ってね。あたしも、まどかちゃんと見に行くから」
 そう言って、ミイコは帰っていった。
 まどかちゃん と言うのは、同じアパートに住む 篠塚円 という名のれっきとした成人男性である。ただ、きれいな顔のため、子どもの頃、女の子の服を着せられるなどしたとの事で、ちゃん付けで呼ばれる事がコンプレックスになっているのだそうだ。
 それを知っていながら、年上の男性を まどかちゃん と呼ぶミイコも結構、いい性格かもしれない。

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