オレンジ屋根のピエール

読書好きの覚書。(過去の日記は老後の楽しみ♪)

『下読み男子と投稿女子』

2017-07-19 23:19:24 | 本と雑誌

『下読み男子と投稿女子』 野村 美月 著 (KADOKAWA)

高校二年生の男の子、青はゲーム作家の叔父から頼まれて、中学2年生の時から出版社に投稿されるライトノベル(通称ラノベ)の1次下読みのアルバイトをクラスメートには内緒でやっている。
青は、どの物語を読んでも面白いと素直に感想が言えて、短時間にどれだけでも読めるというので、仕事に煮詰まっていた叔父のたっての頼みで引き受けた仕事ではあったが、投稿者が熱心に書いて送った原稿の、この世で初めての読者になれるという幸せに、毎回浸っていた。
しかし、この仕事はただ読むだけでは終わらない。
すぐれた作品を2次審査へ通すために、見込みのない作品は落とさなければならない。
それも大部分をだ。おまけに、ストーリーや登場人物など、細かく分析して評価シートというものを投稿者に向けて書かなければならない。

しかし、面白い話を一生懸命書いているのであろう投稿者に対して、どこが良くてどこが悪かったのかを、“頑張れ”とか“ありがとう”という気持ちで丁寧に評価している青。
それは、青の人間性そのもので、誰に対しても優しくて、いつも朗らかで、クラスメートたちからも好かれている。

そんな青が、いつものようにダンボール箱で送られてきた原稿の山を目にして、喜んで読もうとしたある日のこと。

いきなり大フォントでページを埋め尽くし、多重カギ括弧を使い、萌えキャラの女の子がシマシマパンツ~とか、ラノベの王道丸出しの表現で、でも荒削りな原稿の作者をつい見てしまった。

そこにあった投稿者の名前を見て青は驚いた。

同じクラスの女の子、それも誰も声をかけることが出来ないほどの美少女、氷ノ宮氷雪だったから。
とても彼女が書いたとは思えない!
でも一時審査は通過できないにしても、良いところはあるし、とても可能性を感じた作品だったから、どうしても本人に確かめてみたくなった青は、ついに禁断の手に出る。
それは、本人に下読みをしていることと、彼女の作品を読んだことを明かすことだった・・・。



とても面白い物語だった。
下読みという仕事もはじめて知ったし、小説をどうやって組み立てていったら良いのかなどのハウツーもわかった。
なにより、登場人物のキャラもそれぞれ楽しい。
どこにでもいそうな男子、でも誰にでも優しく穏やかな性格の持ち主。
そしてとびっきりの美女なのに、誰ともしゃべらないし、特に親しい友だちもいそうにないが、それも許されるくらいのクールビューティ。
まあ、ありがちな設定ではあるが、氷雪の生い立ちが彼女の性格を形成しているという伏線も納得できる。

伏線と言えば、彼女に小説のアドバイスをすることになる蒼だが、もうすでにプロ並みの読み込み具合で、評価や指導の仕方も、とてもクラスメートのそれとは思えないほどの説得力。

この本を読んで、投稿のスキルアップができちゃうよね。

最後はハッピーエンドの、ほろ甘な結末で、少女漫画っぽい。


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