オレンジ屋根のピエール

読書好きの覚書。(過去の日記は老後の楽しみ♪)

児童書「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」

2006-07-26 11:00:00 | インポート
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 作
原島 文世 訳  佐竹 美保 絵
早川書房(ハリネズミの本箱)

ジェスとフランクの姉弟は椅子を壊してしまったため、親からお小遣いをストップさせられてしまった。
お金がないと苦しい彼ら。その上フランクなんて、乱暴で怖いいじめっ子のバスターに10ペンス借金までしていたから窮地に追い込まれたも同然。

そこでひらめいたのが「仕返し有限会社」をふたりで始めることでした。
小屋の壁に張り紙をして、どんな仕返しでも引き受けるというもの。他に宝探しなんかも。

そして最初のお客としてやってきたのが、たまたま通りがかった例のバスターだった。その依頼は、バスターをやっつけたヴァーノン・ウィルキンズの歯を取って来いというもの。
バスターはヴァーノンにやられて歯を折られてしまったので、その仕返しをやれということだ。

あのバスターをやっつけたヴァーノンだ。年上で身体も大きいのに、どうやって歯を取ってくるというのだ・・・!?

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せっかく作った仕返し会社にやってくる客は変な依頼ばかり持ってくる。それも雪だるま式にやっかいごとが増えていくようだ。

しかしその依頼はすべて、ある人物を中心につながっていることがだんだんわかってきた。
それは川の近くのごみダメのような場所に住むかわったばあさん、ビディ・アイルモンガーだ。
大人は彼女をちょっと風変わりなばあさんぐらいにしか思っていない。しかしジェスたちが始めた仕返しをめぐって、しだいに彼女は魔女、それもかなりたちの悪いまじょであることがわかってきた。

そうして、子どもたちとビディとの闘いが始まる・・・。

*******************

ファンタジーには違いないが、おそらく外国の子どもたちってこんな日常を送っているのかな。日本の子どもたちも想像豊かだけど、こういう「仕返し有限会社」みたいなものなんてまず発想しないのでは。

すごく子供心を刺激するワクワクするようなお話です。
大人にはわからない子どもだけの世界。理解してもらえなくても、彼らの世界で一生懸命頑張って頭を使って、仲間と力をあわせて困難を乗り越えていく。
こういう大なり小なりの経験で、すてきな大人になっていくんでしょうね。
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「ファンタージェン~愚者の王」

2006-07-20 11:21:00 | インポート
ターニャ・キンケル 作

ミヒャエル・エンデとその著書「はてしない物語」に捧げられたシリーズの児童書第2弾。
著者はこれが日本での作品紹介が初めてとなる。

今回は意図的に、登場人物に女性を多く設定してある。もちろん主人公も女の子。それも人の子ではなく、ファンタージェンの住人である。だからこれまでのものとは少し雰囲気が違っているようだ。

時はちょうど、バスチアンがファンタージェンを虚無の危機から救うまでの時間と並行しているようで、ファンタージェン側から見た様々な出来事を追いかけている。
主人公レスは、機織り女の見習い娘。いずれは正式な機織り女としてファンタージェンの出来事や物語を絨毯に織りこむ一生を送らなければならなかったが、レスはもっと広い世界に出てみたいという願望が日増しに強くなっていた。
そんな中、ついに近くまでおそろしい虚無は広がってきていることを知ったレスは!?

はじめ自分のことだけしか考えなかった少女が、いろんな大人やファンタージェンの生きものと出会い、困難にも立ち向かい学び成長していく。「はてしない物語」の違った角度からの視点で読めてそれなりに楽しめた。
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「東京タワー~オカンとボクと、ときどきオトン」

2006-07-07 18:45:00 | インポート
リリー・フランキー 作

リリーさんって、ここ数年のバラエティ番組出演と、NHK教育でやってるアニメ「おでんくん」の作者ということで初めて知った人なんですが、見た感じって他人に先入観を与えてしまうものなんですね~。

この本を読んで、人は見かけじゃわからないというのを再認識した次第でした。

けっこう私と年代的に近いリリーさん。幼少時代から始まる物語の内容は、時代背景も「あ~、そうだった!」と懐かしい気持ちであふれました。
おまけに同じ九州出身ということもあり、同じような九州弁(熊本弁と福岡弁では少しは違うけどね)で、より親しみも倍増です。

高度成長期とはいえ、まだまだ貧乏な人々が多かった時代。我が実家もご多分に漏れず。両親はかなり節約していたように思います。でも、そんなお世辞にも恵まれた暮らしとは言えないけど、あまり貧しいという思いを実感しないままに、けっこう幸せに暮らしてきました。

それもそのはず。
親の世代は、子どもにひもじい思いをさせまいと、自分のものは欲しがらず、生活も最小限に切り詰めながら生活をしてきたし、家族みんなを養ってきたのですね。
そんな親の苦労も案外わかっていながら、わからないふりをして安穏と日々をおくる子世代。

そして大人になった今、やっとそんな親の苦労を思い知り、さあ親孝行と思ったときには親はなし・・・。
けっこう自分とリリーさんを重ね合わせてる読者がいるのではないでしょうか。

リリーさんのオカンはとてもステキな人。まわりの人たちに恵まれていたけど、それはオカンの人柄がそういういい人たちを呼び寄せていたのかもしれませんね。

最後はやはり思わず涙。
それは読み進めるうちに、このオカンが大好きになっていたから。
リリーさんも本当にステキなひとですね。
また、オトンも年を取ってからやっと自分の本音が言えるようになってよかったです。
寡黙な男は、理解されがたいですからね。
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