雑記-白堂別館-

雑記なう
無職止めました。
出来ることからやってみよう

第二十四節

2010-06-18 01:41:34 | Dear to me
雄二の家を出ていくらもしない所で、香奈穂は財布も一緒にかばんの中に入れたままなのを思い出した。

「あっ、ちょっと待って。忘れ物して来ちゃった」
「買う物のリストとか?」
「買う物は頭に入ってるから平気なんだけど、お財布が・・・」
「だったら大丈夫だよ。姉さんが朝に一旦こっちへ戻って来た時に、食材買うのに十分足りるくらいは預かってるから」

それでも全部出してもらうのは悪いと思って、雄二君の家に引き返そうとする私に「それなら」と雄二君の声が引き止めた。
「?」振り返って聞き返した私に
「おいしいケーキを頼むよ。俺も姉さんも期待してるし」
良い笑顔を見せた。

(なんて良い笑顔で、すごいフリだ)

「まっ、任せといて!」
一瞬の間があってから、香奈穂は若干声が裏返りつつもしっかりと雄二に返した。
雄二君の笑顔は今まで何回も見てきたつもりだったけど、今この笑顔を見るとお姉さんとの血の繋がりをひしひしと感じるな。