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支流からの眺め

共産主義(3):ソ連とコミンテルン

 関連する前2つのBlogをまとめる。共産主義とは、生産財私有の否定、労働者階級による権力掌握、資本家と共謀する国家の消失を経て、格差のない協同社会の実現を目指す思想である。しかし、共産主義は独自の世界観や人間観を持ち、その独善性と暴力性から独裁的な恐怖政治を生み出す。それにも拘らず人が引き付けられるのは、掲げる美し過ぎる理想の魅惑とカルトに似た閉鎖集団としての特性からだろう・・。本稿では、20世紀に始まった共産主義運動であるソ連とコミンテルン活動の経過を追ってみる。

 ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)とは、1922年にレーニンが設立しスターリンが発展させた巨大な帝国である(最大15の共和国を擁した)。世界大恐慌時には計画経済体制で急速な工業化と経済成長を遂げ、第二次世界大戦に勝利して東欧を支配し、軍事力科学力で世界に覇を唱えた。しかし、米国との軍拡競争や生産性の低下から経済が行き詰まり、冷戦に敗退して1991年に崩壊した。崩壊後に公開された内部文書から、対外工作や独裁的な恐怖政治のあり様が明らかとなった。

 コミンテルンとは、同じくレーニンが1919年に創設した国際共産主義運動の指導組織である(1943年に解散)。共産党独裁政権の設立は不如意であったが、ルーズベルト政権に食い込み米国を参戦させた工作はとてつもない大成功だろう。世界大戦の結果、ソ連は東欧の支配権を得て日本にも復讐を果たした。しかも戦後は、本性を出したソ連は米国の敵となり(東西冷戦)、米国が日本の「侵略」から守ってやった中国は共産化した。ソ連と共産党のために犠牲となった米国の若き兵こそ、いい面の皮である。

 指導者レーニンの主張は、「戦争は市場獲得のために資本家が始める。平和のためには、資本家や国家を無にし、労働者階級による独裁が必要である。その改革は暴力をもって徹底的に行う。」というものだろう。公開されているコミンテルンの活動要綱には、現状の否定と破壊、大衆を扇動する言論活動、国家の中枢部への潜入と誘導(内部穿孔)などが記されている。また、その目的達成のためには非合法な活動(工作)を厭わず、内部規律の維持のため秘密警察や粛清を正当化している。

 確かに「格差や戦争のない平和な世界」は理想である。しかし、そのために暴力による徹底的な否定と破壊(資本主義を否定し、資本家を殲滅し、議会制を否定し、異論者を粛清し、宗教や伝統を否定し、国家を崩壊させる)が必要なのか。現状打破は可としても、革命後の世界は一部の選良労働者による専制皇帝以上の非情な恐怖政治である。それで理想の達成が可能なのか、少し考えれば分かりそうなものである。どうしてこの詐欺まがいの思想に世界が熱狂したのだろうか。

 当時の欧州は第一次世界大戦後で、未曽有の悲惨な戦争に厭戦気分が満ちていた。加えて、それなりに世情を安定させていた帝国が崩壊し、その後に民族主義が台頭して各地で小国が乱立し平和も遠のいていた。そこに伝わる風聞では、ソ連では戦争の惨禍や貧富の差は解決し、労働者の約束の地が実現していた(ように見えた)。混乱して方向を見失っている人々に、「万国の労働者よ、団結せよ。国を捨て団結して平和を守ろう」の掛け声には強い説得力があったのだろう。(続く)

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