支流からの眺め

共産主義(8):保守的自由主義を求めて

 共産主義に対する思想として、保守的自由主義を提案したい。これは、「既存の体制を相互の自由を尊重しつつ調整し続ける」という考え方である。保守とは、先人の知恵を大切にし、理想や改革と称して制度を急に(ましてや暴力的に)変えないことである。この考えに従えば、自由を求めるとしても、お互いの自由(言い分)を尊重しつつ両者の自由度を少しずつ高めていくことになる。こうした社会の特徴は、安定と自由である。安定は信頼度の高い社会、安全な社会にもつながる。

 注意すべきは合理主義だろう。確かに合理性・効率性は重要で論理的にも説得力がある。しかし、社会や世界の均一化が進めば(Globalism)、支配も効率的となり専制的な管理社会になる危険がある。法治主義や権威主義(特に宗教がかった)にも注意が必要である。法治や権威を徹底すれば教条的な原理主義に陥り、常軌逸脱や強権発動が正当化される。規則は現実の抽象であるから、最大公約数的な所に留めるべきである。無駄に見える非効率や現実との微妙なずれ(遊び)を許すということだ。

 より困難なのは、自由・平等の扱いであろう。自由と平等を徹底すれば、個人が分断され逆に専制を招く。ある程度の不自由と不平等は残ることが前提である。また、その折り合いに関する合意形成は、達成困難だけでなく、達成した時から変化を始める。関係者には常に不満が残り、不断に動的に均衡を調整し続ける努力が要求される。その負担に耐えて初めて、自分の自由も守られる。これらのことを認識するしかない。相手の自由や平等を不当に抑圧することは、避けなくてはならない。

 保守的自由主義の教育や実地訓練の場としては、組織員の実感を持てる中小規模の集団が適当であろう。例えば、家族、親戚、学校、職場、職能、地域、宗教、政治、社会運動などの集団である。これらの集団内での多様な人間関係で自由と平等の折り合い(シガラミ)を実体験し、それを社会全体に適用していく。社会の特性は個々の構成員の資質とその伝承で決まる。伝承の手段として中小集団を大切にすべきだろう。日本人は三百の諸藩という小国行政の経験を持っている。

 共産主義の話題はこれで終える。執筆を通して、「共産主義は入口を理想で飾った危険思想」、「共産主義はテロ・暗殺も含む暴力を正当化する」、「深刻な貧困や格差は共産主義の火種」、「共産主義に沿った謀略は人心を掌握し世界を変え得る」、などを知った。そして、「共産主義を反面教師とすれば、望ましきは保守的自由主義」、「その実現には中小規模の集団での実体験が重要」などと感じた。とにかく、日本が、そして世界が、この先よりよい社会を形成していくことを祈りたい。(了)

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