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日本で開発した業務ソフトは本当に世界で通用しないのか?

2004-12-21 14:17:35 | ITビジネス
 日本で開発した業務ソフトはドメスティックな業務プロセスに対応したため、汎用性がなく海外では通用しないと、よく言われる。ミドルウエア的なソフトはともかく、業務パッケージは海外では売れないというのが通説だ。しかし、本当にそうだろうか。

 SAPやオラクルのERPパッケージはドメスティック・ルールの塊だ。国際会計基準や米国会計基準などの標準に対応した機能はほんの一部で、あとはドイツのA社が業務プロセスをサポートし、今度は米国のB社の業務プロセスをサポートし、とベタベタと欧米企業の業務のやり方に合わせて機能を追加してきた。だから、欧米ではノンカスタマイズで使えるようになった。

 ところが、日本企業向けには面倒くさいので、ERPベンダーやそれを担いだ企業は「ERPには欧米のベストプラクティスがつまっている」と“天文学的な大嘘”をついた。自身の業務プロセスに自信を失っていた日本企業の多くが、それをまともに信じてしまい、業務プロセスをパッケージに合わせるべきか、パッケージをカスタマイズすべきかで悩みぬいた。そして、どちらのチョイスでもROI的に見れば、ほとんどが失敗で、ERP不信が蔓延して今に至っている。

 それはともかく、ノンカスタマイズの人事パッケージで一世を風靡したワークスアプリケーションズも何のことはない、SAPやオラクルなどが欧米でやってきたことと同じことやっているだけだ。やり方が同じなら、海外展開の芽もあるのかもしれない。実際、ワークスAPは来年から中国市場を本格的に開拓するという。牧野社長は「日本企業の多様な業務プロセスに対応した結果、同じアジアの中国では適応率が驚くほど高い」と言っているらしいから、それなりの勝算をもって臨んでいるのだろう。

 ワークスAPの中国展開が成功するかどうかは分からないが、こうした試みは「日本の業務パッケージは海外で通用しない」という定説のアンチテーゼで面白い。各企業の業務プロセス、各国の商習慣への対応という“限りない例外処理”の積み重ねが、世界市場へ通じる。日本の他のITベンダーもぜひ挑戦すべきだろう。少なくとも、中国市場はまだがら空きだ。