東葛人的視点

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日本にもあったシュリンケージ問題、RFIDに光明か

2004-10-13 12:58:02 | ITビジネス
 以前、ICタグのことを書いたときに、日本にはシュリンケージの問題が少ないからICタグの普及は難しいと言った。しかし、これは私の不明だったようだ。日本にもシュリンケージ問題は多数存在し、ICタグなどREIDの実需がそこにあるのだ。

 シュリンケージとは、流通段階で商品量が縮小(シュリンケージ)することだ。早い話が客や従業員に盗まれることを指す。窃盗・万引きなどの表現はあまりに露骨なので、日本でも英語のままシュリンケージと婉曲的に言う。米国では、流通段階で2~3割が消えると公然と語られており、ウォルマートのRFIDの取り組みはシュリンケージの撲滅が最大の狙いと言われている。

 一方、日本ではシュリンケージ問題があまり表面化していない。せいぜい書籍、音楽CDの万引きが社会問題化した程度だ。ところが、実はシュリンケージ問題は至るところにあり、その解決を狙ったRFID導入が始まっているのだ。客や従業員を犯罪者扱いする言辞は、日本では特にご法度だ。加えて、コンビニなどのイメージから日本の流通システムはしっかりしているとの神話もある。だからシュリンケージ問題は表面化してこない。

 日本でシュリンケージ問題に悩む代表例は図書館だ。小さな公立図書館でも、年間1000億円を超える被害が発生しているという。これは全国の図書館共通の悩みだ。中古書市場が拡大した昨今は、ますます深刻になりつつある。だから、図書館にRFIDを導入する事例が急増したのだ。決して顧客満足度の向上、業務の合理化がメインの理由ではない。そのほかにも、回転寿司やドラッグストアなどシュリンケージ問題を抱えた業界、企業が多数存在する。

 こうした話は決して、明るく楽しいものではない。しかし、この現実を押さえず、夢ばかり語っていては、RFIDビジネスは立ち上がらない。日本にはウォルマートや国防総省のような“サプライチェーンの女王”がいない。だから、なおさら泥臭いビジネスが必要になるのだ。ちなみにサプライチェーンの女王とは、どういう意味か? それは読者の皆さんの想像にお任せする。