私がHO鉄道模型に手を染めた頃は「常識」だったレオスタット
直径は約5cmあり、存在感十分だ
70年近く人間をやっていると、例えば鉄道150年の内、三分の一以上は自分が物心ついて以降の事であるなど、自分自身の人生が歴史の一部だと感じることも多い訳ですが、今回はジャンク箱の中から鉄道模型の歴史の一端を眺めてみることにします。
冒頭のカボチャ状の部品はレオスタット(rheostat、語源は流れを変えるというギリシャ語らしい)という可変抵抗器で、私がHO鉄道模型を始めた1960年代では速度制御を行うパワーパック(これは和製英語のようですが)の回路構成は
①トランス、②セレン整流器、③レオスタット、④方向切り替えスイッチ
というのが標準的でした。
縦型モーター(左)とインサイドギア(右手前、車輪付き)+ウォームギア(右奥、縦のギア)
ウォームギアを取り付けたモーターをインサイドギアに2個のネジで固定する
車両側も昨今の軽快なコアレスモーター+密閉型ギアシステムとは違い、当時はモーターもギアもむき出しの動力ユニットで、ウオームギアの抵抗もあって特に起動が悪く、一方でモーターと直列の抵抗制御なので電流を食う起動時はなかなか走り出さず、一旦走り出すと一気に電流が減って脱兎のごとく暴走する・・・といった構造的な問題のある難儀なコントローラーだった訳です。
パワーデバイスの先駆けでもあったサイリスタ
一旦ゲートをオンすると「もうどうにもとまらない」使いにくい部品だった
70年代になるとパワートランジスタやサイリスタといったデバイスが我々の手の届く価格帯になったこともあって、こういったデバイスを使った性能の良いコントローラーが普及し始めました。
トランジスタ式は上記③のレオスタットをエミッタフォロアのパワートランジスタ(もちろんバイポーラです)に置き換えたシンプルな回路構成で、我が家では今でもこの方式が現役ですが、トランジスタの放熱にやや気を付ける必要がありました。
もう一つのサイリスタを使う方式は、脈流(降圧した交流を全波整流したもの)を位相制御するもので、パルス状の電圧が掛かることにより「スローが利く」というのが売りでしたが、元々が60Hz(関東地方は50Hz)なのでスローは利くには利くのですが、どうしてもガクガクした感じになって今一つであり、こうしてジャンク箱入りする羽目になっています。
鉄道模型の世界ではコアレスモーターや精密ギアシステムといった動力系の進歩に加えて、電気・制御デバイスも長足の進歩を遂げて、今時は上記①と②の様にトランス+整流器で直流など作らずとも小型で低価格なACアダプターの類がいくらでも入手できますし、③も安価な上にオンオフ制御で放熱の心配も小さいPWM(Pulse WIdth Modulation)の制御ユニットが簡単に入手できるようです。トランス・・・重っ!、レオスタットで速度制御って何よ?・・・という時代になりました。