意外に面白かった、というのが率直な感想。期待値が低かったことへの反動もあるだろうが、笑える箇所も多く、なかなか楽しませてくれた。ただ、好きか嫌いかと訊かれたら「あんまり好きじゃない」と答えるだろう。
ある画家の生涯を少年期・青年期・中年期の3部構成で描いた作品である。才能に満ちあふれていた少年期、試行錯誤しながら創作を続ける青年期、そして完全に迷走してしまっている中年期。要は「神童も、ハタチすぎれば、ただの人」という典型例であり、そこに自分を重ね合わせてしまう人も多いんじゃないだろうか。はい、僕もその一人です。まあ、神童とは思われてはいなかったけど。
主人公を演じる役者は年代によって異なる。その顔立ちが違いすぎるので、どうも同一人物には見えないのが難点。少年期を演じる子役は典型的な美少年タイプなのに、青年期は柳憂怜(柳ユーレイ)、そして中年期はビートたけしなのだ。まあ、これも「子どもの頃は可愛かったのに」ってことの典型例なのかもしれない。実際、可愛かった子役が大人になったら思いっきり貧相な顔立ちになっていた、なんてことは多々あるもんね。
少年期、それに青年期の前半では主人公は自分の感性に忠実な絵を描いているのだが、美術学校の仲間たちが前衛芸術もどきの破天荒な創作活動に挑む辺りから、徐々に自分を見失っていく。それに拍車をかけるのが、強欲で非情な画商(演じるのは大森南朋!)。彼のデタラメな助言に従って、主人公はどんどん道を外れていく。有名画家の絵をパクったり、やたらと絵の具をカンバスに飛び散らせてみたり、風呂に身を沈めて窒息寸前の状態で描こうとしたりなど、まるでバラエティ番組のようなノリだ。この辺りのテンポはさすがに見事で、笑わせてくれる。実際、客席のあちこちから笑い声が聞こえてきた(客の大半はお年寄)。
しかし、そのあと、とんでもない悲劇が起こる。一人娘が死んでしまうのである。そして、それさえも自分の芸術のために利用しようとする主人公の姿を見て、それまで健気に助手役を務めてきた妻もさすがに愛想を尽かし、去っていく。独りぼっちになった主人公は、火を放った小屋の中で絵を描きながら死のうと試みるものの、幸か不幸か助け出されてしまう。幼い頃から彼はいくつもの自殺や事故死に遭遇してきたわけだが、彼自身が死を望んでも死に神は迎えに来てくれなかったのだ。
物語はハッピーエンドっぽい雰囲気で終わる。しかし、後味は苦く、救われない気分になる。だって、娘が死んじゃってるんだよ? 物語の中の出来事ではあるが、生かしておいてほしかった、と切に思った。なんちゅうか、子どもが理不尽に死んじゃう話は嫌いなのだ。ものすごく不快な気分になっちまう。もっとも、口当たりの良い映画を作ろうなんて気持ちは、北野武にはハナっからなかったろうけどね。
ところで、この映画に関しては映画館で一度も予告編を見てなかったので、さっき公式サイトで見てみた。そしたらビックリ。なんとラストシーンまで使ってるのよ。これはダメでしょ。完全に映画のダイジェストになってるもん。つまり、ネタバラシしまくり。こんな予告編ばかりだったら、映画好きは予告編を上映している間ずっと目を閉じてなきゃならないじゃん。
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