『さくらん』に続いて、またもや「イキのいい日本映画の男優たちを楽しむための映画」だった。こちらの顔ぶれは主役の北村一輝を筆頭に、岸谷五朗、松重豊、哀川翔、田口トモロヲ、塩谷瞬、加藤晴彦、遠藤憲一、荒川良々、真木蔵人など。好事家の方々には、たまらん顔ぶれじゃないでしょうか。
この中で特に素晴らしいのは、岸谷五朗である。もう、やりたい放題。同じ三池崇史監督による『新・仁義の墓場』では、そのあまりにも身勝手な凶暴さで観客を途方に暮れさせた岸谷五朗だが、今回は観る者すべてが快哉を送るのではないか。というか、もしも岸谷五朗出演作で過去に『テニスの王子様』しか観ていない人がいたら、「あの人、いつもスクリーンの中で好き勝手に遊んでるだけじゃない?」と思うのではないだろうか。それぐらいお茶目で自由奔放。リラックスしまくり。「こんなことばかりしていられるなら俺だって役者になりたい」と言い出す若者が増えるんじゃない? そういう人のために言っておくと、岸谷五朗はキチンとした演技ができるからこそ、ハチャメチャな役でもサマになるのよ。『タイヨウのうた』を観てみて。
で、『龍が如く 劇場版』の内容なんだけど、要するにヤクザ同士の抗争があって、それに政治家が絡んでいて、母を捜す少女と出所したばかりのヤクザと野良犬が騒動に巻き込まれて、その一方では間抜けな二人組が銀行を襲っていて、それを取り押さえようと待機する刑事たちがいて、はたまた急に強盗稼業に目覚めるギャルとそれに渋々ながら付き合う彼氏がいて……と、まあ、昔ながらの犯罪モノや人情モノの要素を手当たり次第に詰め込んだ感じ。説明不足の箇所もあるけど、そんなこたぁ気になりません。というか、気にしても無駄。だって、なんせ『DEAD OR ALIVE 犯罪者』や『殺し屋1』や『極道恐怖大劇場 牛頭』を作った三池崇史監督の映画なんだもん。ただし、それらの作品に比べれば、この『龍が如く 劇場版』はずいぶんマトモな出来映えである。僕としては、ウ○コが出てこなかっただけでも拍手喝采。ほら、昔の三池作品にはしょっちゅう出てたでしょ? そのたびに「勘弁してっ」と思ってたのよ。
北村一輝は男でも惚れ惚れするほどカッコいいし、脇役たちもそれぞれ味のある演技を見せてくれる。歌舞伎町という街の不穏な匂いも漂ってくる。そして、野郎たちが対決するシーンはワクワクするような高揚感に満ちている。「ストーリーは二の次で、とにかく視覚的に楽しめる」という点は、やはり『さくらん』と同じ。もしかしたら、こういうのが最近の日本映画の流れなのかも。って、そういうのがたまたま続いただけか。
ともあれ、「頭を空っぽにして楽しめる映画」を望んでいる人にはオススメ。仕事に追われて疲れている方はぜひ!
って書きましたが、とっくに公開は終わってます。DVD化をお楽しみに!
『龍が如く 劇場版』公式サイト→http://www.ryu-movie.com/
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