これは危険な映画です。どう危険なのかというと、間違ってもデート用に選んじゃダメ、ってこと。何年も連れ添った夫婦とか長い付き合いの恋人同士ならともかく、これから本格的に交際が始まる、という時期の男女には百害あって一利なし! そう断言しときます。一緒にビデオ鑑賞するのも避けた方が無難よ。そこんとこ、くれぐれもお忘れなく。
じゃ、以下は完璧にネタバレありまくりの感想。映画をご覧になった方のみお読みください。
たとえば、付き合い始めたばかりの女性と一緒にこの映画を観て、終わった直後に「結局、何のお咎めもナシなんだ。うまいことやりやがって」と率直で正直な感想(だよね?)を洩らしたとする。女性は憤慨しまくりである。たとえ無表情を装ったとしても「コイツとは絶対に遊びで終わらせよう」と思っているはずだ。
そういう反応は簡単に予測できるから、ちょっと表現を和らげて「あんないい女(スカーレット・ヨハンソン)が目の前に現れたら、そりゃメロメロになるよね」などと偽りのない感想(だよね?)を言ったとしても、白い目で見られることは確実だ。たとえ無表情を装ったとしても「コイツ、いつか絶対に私を裏切るな」と思っているはずである。
長い年月を共にした男女なら、そういう心配は不要だろう。何を言おうが「あんた、昔からそーゆーふうだわ」と、星ヶ丘ボウルのCMに出てくる「姫」みたいな口調で吐き捨てるだけである。あ、今の例えは東海地方の方にしか分かりませんね。えっと、見たことがない方はこちらをどうぞ。「CMを見る」をクリックしてね。
そう、この映画(というより、この物語)の感想を述べることで、男たちは自らの価値観や恋愛観、人生観を露呈させてしまうのである。「鬼畜度」「人でなし具合」を晒すことになる、と言い換えてもいい。まったくもって危険極まりないのである。
だからといって、善人ぶって「あれじゃあ殺された彼女が可哀相」「奥さんも気の毒。いい人じゃん」などと偽善者丸出しの感想を言えば、薄っぺらな人間に見られるだけだ。いや、おそらく本心を隠していると思われるだろう。たとえ無表情を装ったとしても「この人、当たり障りのないこと言ってるなぁ。心の中じゃ逆のことを考えてるんじゃない?」と勘ぐっているはずである。
じゃあ、どういう感想を言えばいいのか。こういう時、映画好きは「従来のウディ・アレン作品と比べるとナンタラカンタラ」と、すぐにウンチクを披露したがる。もしくは「伏線の張り方があーだこーだ」「あのショットからパンして主人公をフレームインさせるカメラワークがどーのこーの」などと、偉そうに技術面を語りたがる。で、「すごぉい。よく知ってるわねぇ」なんて言われて有頂天になったりするのだが、実は「この人、実社会で役に立たない知識ばっかり持ってるのね」と思われているのである(だよね?)
というわけで、この映画の感想を交際相手に言うのなら、せいぜい「あの婆さんを殺したのはアカンて。色恋沙汰に他人を巻き込んじゃダメ」という程度に留めておくべし。もしくは「あんな展開になるとは思わんかった。すげーハラハラしちまった」と、素直に映画の出来について褒めておこう。それ以上はボロが出るから何も言うな! 間違っても主人公を庇ったりすんな! とにかく相手に先に感想を言わせて、適当に調子を合わせとけっ。あ、今の言い方、長井秀和みたいになっちまった。
ちなみに僕としては、実はスカーレット・ヨハンソンよりもエミリー・モーティマー(主人公の妻)の方が好みのタイプだったりする。ただ、それはあくまでルックス面に関してである。この映画の中での両者のどちらに心惹かれるかというと……おっと、下手なことを書くとボロが出るので、これにてオシマイ。撤収!
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